第64話よひよひに ぬぎてわがぬる かり衣

題知らず

紀友則


よひよひに ぬぎてわがぬる かり衣 かけて思はぬ 時のまもなし

                        (恋歌二593)


※「衣桁(いげた)にかけて」と「心にかけて」を掛けている。

※狩衣:本来は狩りの時の衣。平時にも略服として着用した。


毎晩、私は狩衣を脱いでは衣桁(いげた)にかけて眠るのですが、それと同じで

あの人のことを、心にかけて思わない時などないのです。


今夜も逢瀬の相手がいない。

空しく狩衣を衣桁(いげた)にかけるけれど、心だけは、あの人にかけてある、忘れることなど一瞬もない、と歌う。

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