第60話人を思ふ 心はかりに あらねども
題知らず
ふかやぶ
人を思ふ 心はかりに あらねども 雲居にのみも なきわたるかな
(恋歌二585)
あの人を恋慕う気持ちは、決して仮初めのものなどではないので、雁が(地上から遠く離れた)大空でのみ、鳴き渡るように、私もあの恋しい人から遠く離れて、泣き続けているのです。
「雁」と「仮初め」を掛け、「雲居」を「恋い慕う人から遠く離れて」にして、「雁がが大空を鳴き渡る」を、「自分が恋の苦しさで泣き続ける」に掛けている。
なかなか、技巧的な歌である。
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