第10話おとにのみ きくの白露 よるはおきて

素性法師

※平安中期の歌人。36歌仙。


おとにのみ きくの白露 よるはおきて ひるは思ひに あへず消ぬべし

                        (恋歌一 470)


他人の噂だけが聞こえて来て、あなたの本当の思いなど知ることもない私は、夜は起きて(辛くて眠ることも出来ず)、昼はわき上がる思いにこらえきれずに、この世から消えてしまいそうなのです。


※きくの白露:「きく」は掛詞で「聞く」と「菊」を掛ける。「白露」は白菊の上の露(当時の菊は白菊のみ)。白露が昼の光に耐えきれずに消えてしまうを掛ける。


当時、身分の高い女性は、家族と侍女以外には、顔を見せなかった。そのため、美女である場合、情報源は、ほぼ侍女からだった。

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