第27話:ソーヤー司教
バレンシア王国暦243年10月17日:ソーヤー司教領・神殿
「まだ小僧共は見つからないのか!
もう何日子供を痛めつけられていないと思っているのだ!」
「しかしながらソーヤー司教、新しい子供を集めるのは難しいです。
教皇様から、しばらくは孤児院に新しい子供を入れないように、これまで養ってきた子供だけ楽しむようにと知らせが届いています」
「教都から遠く離れたこの地で何をしようと分かるものか!
あの兄妹を逃げしたのはお前達がクズだからだ!
処分されたくなければ、サッサと代わりの子供を連れて来い!
今日中に連れてこなければ、紅毛人に売っぱらうぞ!」
「ヒィイイイイイ、直ぐに、直ぐに領内の子供をさらってまいります!」
「馬鹿者!
大神殿の中に教皇の媚を売る者がいたらどうする心算だ!
隣の貿易都市からさらってこい!
貿易都市なら王国の領地、教会の責任にはならん。
それに、あそこなら紅毛人か紅毛人に媚を売る商人が攫った事にできわ!」
「はい、分かりました、今直ぐに攫ってまいります!」
密かに教会の神殿に忍び込み、マッケンジーとジュリエット兄妹を苦しめた背教徒を確認したが、聞いていた通りの腐れ外道だった。
予定通り殺すしかないが、聞き捨てならない話があった。
貿易都市に出入りしている紅毛人はもちろん、この国の商人まで子供を誘拐しているのか?
もし本当に紅毛人や貿易都市の商人が子供を誘拐しているのなら、そいつらも同時に皆殺しにしなければいけない。
子供を誘拐して虐待の限りを尽くしていたソーヤー司教一味が殺されたと聞いたら、同じような事をしている紅毛人と交易都市商人が警戒する。
何度もここまで来られるのなら数日空けて殺すことができるが、アリバイ工作に俺に化けたサクラの分身体を残している。
その分身体が、王家王国の使者と話をしている間にソーヤー司教一味を殺して戻る予定だったのだ。
俺に顔がバレないように、サクラを身体に纏い、顔の部分を王国の不良騎士に似せているのだ。
誰がやったか分からないのではなく、俺が捕らえて眠らせている王国騎士やローソンズクランの残党の仕業だと思わせるのだ。
そうすれば、また王国と教会の争いが始まるかもしれない。
直ぐに始まらなくてもいい。
王国と教会が手を結ばないように、小さな争いを頻発させるのだ。
大きな戦争にならないように、細心の注意を払いながら争わせるのだ。
アリバイ工作はまた考えればいい。
今直ぐ何とかしないと、ソーヤー司教の手先が子供を攫ってしまう。
子供達が身体や心に取り返しのつかない傷を受ける前に助ける。
誘拐事件が起こる前にぶち殺してしまわなければいけない。
俺とサクラは不良騎士とローソンズクランの残党に化けて急いだ。
「我こそは王国騎士クルシー家の三男ワイアットだ!
国王陛下が再三罰を与えているのに、未だに子供を攫い虐待する腐れ外道め!
騎士として人として見過ごす訳にはいかん!
国王陛下に逆らうメタトロン教の背教徒、成敗してくれる!
「我らはホセ・ローソンの家臣、主の無念を晴らすためにお前を殺す!」
「我は神の敬虔な騎士ゼイヴィア!
神の教えを捻じ曲げて己の我欲を満たす言い訳にしている腐れ司教!
聖堂騎士の名誉にかけて、その首刎ね飛ばしてくれる!」
サクラの分身体が王国騎士やホセの配下、あるいは聖堂騎士に変化してソーヤー司教領の大神殿に攻め込んだ。
この国唯一の公式貿易口である、貿易都市に領地を接しているメタトロン教の司教領はかなり広大だ。
領地が広大なだけでなく、貿易都市や周辺の貴族領からも巡礼する者がいるので、神殿も大神殿と呼ばれるくらい大きく繫栄もしていた。
その豊かな財源を利用して、孤児を集め我欲を満たす道具にしていたのだ。
そんな連中を野放しにしておくわけにはいかない。
だからサクラに始末してもらう。
王家と教会を争わせるために、姿形をそっくりに変化させた分身体で大神殿を襲撃させる。
「ソーヤー司教を討ち取ったぞ!」
「子供を犯し、殺していたのを教皇が黙認していたぞ!」
「教皇自身が子供を犯し殺していたぞ」
「教皇だけでなく、枢機卿達も子供を犯し殺しているぞ!」
「これが証拠の手紙に数々と、孤児院で犯し殺された子供達の名簿だ!」
サクラの分身体達が、悪逆非道に係わりのない信徒に真実を広めている。
もうこれで隠蔽するのは不可能だろう。
さて、どうする教会、そして王国。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます