偽装
始まりは小学3年生の夏休み前だった。
双子である汐梨と香梨は周囲から見間違えられる程顔がよく似ていた。
当時までは2人は凄く仲が良くて、何をするにも何処に行くにもずっと一緒だった。
しかしある日を境に急に関係が崩れていった。
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今日は、香梨が学校を休んだ。香梨と半日離れるのは何ヶ月ぶりだろう。
いつも二人で通っているこの通学路が今日はどことなく、暗く見えてしまう。
明日は二人で来れたらいいなと考えながら、学校へと向かう。
学校に近づいてくるにつれて、汐梨と同じようにランドセルを背負った子供達が増えてきた。
それを見て早く同じクラスの友達達に会いたいと思い、学校へと走っていった。
ようやく学校に着いて上靴に履き替えて、教室に入る。
毎日同じように友達に挨拶しようとしてふと、いつもと何か雰囲気が違う気がした。
それでも気のせいだろうと思うことにして、友達の元へと向かう。
「おはよう。今日香梨休みなんだ。」
手を振りながら友達にそう言った。
しかし友達は睨むだけで返事をしてくれなかった。
どうしてなのか分からず、友達にその何故無視するのか聞いてみる。
「ねぇ、何で無視するの?私何かした?」
そう聞くと、友達は呆れたように
「昨日遊んだ時、私たちに何かしたの忘れたの?信じられない。」
と言った。
汐梨は心当たりが無かった。
それも汐梨は昨日学校が終わったら真っ直ぐ帰宅して、家で宿題を終わらせてからずっとテレビを見ていたからだ。
確か昨日この子達と遊んでいたのは香梨だ。
なんだ、香梨と勘違いしてただけかと安心して
「私は昨日遊んでないよ。遊んでいたのはきっと香梨だよ。」
と言うと、さっきよりも怒りが増したように
「何言ってるの?そんな訳ない。私は昨日汐梨と遊んでいた。あんな事をしておいてよく言えるね。」
そう言った。
汐梨は誤解が解けて仲直り出来ると思っていたのにまさかこんな事を言われるとは予想外だ。
昨日の事をもう一度思い出してみる。
しかし、何回思い出しても結果は変わらない。考えても考えても絶対に私じゃない。
もう一度
「私じゃないよ!香梨なんだって!香梨が何をしたか知らないけど、私じゃないよ。」
と信じて貰いたくて必死に弁明しようとした。
でも友達は
「まだそんな事言うんだね。謝ったら許してあげようと思っていたのに。もう汐梨なんか知らない。」
そう言って違う友達の所に行ってしまった。
汐梨は自分がしてない事にどうして怒られているか理解が出来なかった。
自分はしてないし、多分香梨がしたのだけれどそれを信じて貰えなかったのが1番悲しかった。
その日1日、汐梨はずっと1人だった。
友達は別の友達と一緒に過ごしており、時折こちらを睨んでは、笑いながら何かを話していた。
家に帰ったら香梨に話して、ちゃんと明日香梨に誤解を解いて貰おう。
今日あった事は誤解していて仕方ないから水に流してあげることにしよう。
大丈夫、誤解しているだけなのだから。大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、放課後になるのを待った。
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