第5話

 あの日、山道を下って集落まで戻ってきたわたしたちは、それぞれの家に帰った。もうすっかり日が沈んで、あたりは真っ暗になっている。きっと怒られると思い、おそるおそる玄関のドアを開けた。

「ただいま」

 わたしの声を聞いた両親がすぐに飛んできて、どこへ行っていたのか、何をしていたのかと詰問が始まった。火に油を注ぐようで気が進まなかったけれど、さすがに妹がいなくなったことを、正直に伝えないわけにはいかなかった。わたしは覚悟を決めた。

「あのね」うつむいたまま、わたしは言った。「青葉がいなくなったの」

 大騒ぎになるかと思ったのに、案外、両親は静かだった。というより、きょとんとしている様子だった。聞こえなかったのかと思ってもう一度言った。

「青葉がいなくなっちゃった。わたしと一緒にいたはずなのに、気づいたらいなくなってて」

 両親は顔を見合わせ、首をかしげた。やがて、母が不安そうに言った。

「それ……だれのこと?」

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