第4話
帰り道。俺は大学構内を歩いていた。
「ヘイ! そこの男子学生!」
自転車に乗っている男に話しかけられた。俺は学生ではないからとスルーした。すると男は俺の前に出てきた。俺が避けると男は横を並走し始めた。
……何だコイツ。
並走中ずっと「ヘイ! ヘイ!」と言っている。ダルい絡み方だったので無視をしていると迷惑自転車男は離れていった。その動向を目で追うと、俺の前方を大きく回り俺の方へ向かってきた。
「ハイタッチだ!」
――バチン
俺は何となくハイタッチした。
鈍い音。歩行と走行、二つの勢いが交差するままに手は衝突し手に痺れが走り……
――ガッシャァァン! 自転車が通り過た俺の後方。事故が起きた。
「オーマイガー! ブレーキが壊れちまったぜー」
――本当に、なんなんだ? こいつ。
振り返ると男はピンピンしていた。生け垣に突っ込んで無事らしい。
「……? もしかしてこのオレのイケメンフェイスに惚れちゃった?」
俺がぼうっと見ていたからか男は戯けた事を言った。
――確かにイケメンですが、ねぇ……
にしても初対面からこれとは。この男、相当肝が据わっている? ……というより空気を読む気が無いのだろうか?
「お前、ノリがいいな」
まあ、ハイタッチにはノッたな――握手をしよう。男は言った。
「オレは北上クリス。日本人にしては面白い名前だろ? お前、名前は?」
こいつ、掲示板の上のアクリル板の張り紙の奴か――握手をした。
「名前の面白さは俺も負けて無いぞ。俺の名前は加々見雪兎。ゆきうさぎって書いてゆきとだ。これ以上面白い名前はないだろ」
クリスは大袈裟に笑った。
「フハハハ! 確かにうさぎって名前の割には童貞臭いな」
「うるせ~」
「ハハハ! さて、オレはこれからバイトをお前に頼みたいんだけど……そうだなぁ、今から暇?」
「――あの声掛けバイトの勧誘か。ウザったかったですけど勧誘になるんですか?」
クリスはしれっとしていた。
「ならんよ。ウザったくして足を止めるのは気の弱い奴か変な奴だろ? オレは使いやすい奴か使える奴が欲しかったんだ」
クリスは独断で偏見な論理を並べながら、そう言い切る。
「なるほど……」
と、一応は俺も納得した。
「お前は話せる奴か?」
クリスはニヤッとそう言う。
「さあ? 話してみれば分かりますかね」
という俺の言葉にクリスは笑った。会話がどこか心地良くて俺も笑った。
「じゃあ決まりだ。雪兎、ついて来い」
歪んだ自転車を押すクリスの後ろをついて歩き始めた。
――占いも俺の運命の一部……ふぅん。だったら、面白い。
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