無人島サバイバル七日目(前半)
ばさばさばさばさっ!
「うんっ!?」
ぎゃあぎゃあと頭上を超えていく声。
けたたましく響き渡る音で目が覚める。周辺の鳥達が一斉に飛び立ったようだ。
頭を持ち上げて辺りを伺うが、太陽はまだまどろんでいて、世界はしっとりとした青に彩られている。
まだ活動するには早い時間だが。鳥さん達は早朝から元気にご出勤なのか。いやしかし、昨日も一昨日もこんな通勤ラッシュは見ていない。
つまり、いつもと違う何かが起こっている。
「もしくは今から何かが起こるのか」
杖代わりの流木を右手でしっかりと握りしめて、そんな事を呟いた。杖は移動の補助にもなるし、非常時の武器代わりにもなる。それに何かを握っていると、精神的に安心するんだ、一石三鳥である。
じわりと手のひらに汗を掻く、ちょっと緊張しているようだ。
ゴゴゴゴゴ……
遠くから、地面が唸る音、そして。
……グラグラグラグラッ!
次の瞬間、大きな揺れに見舞われた。姿勢を低くしながら、倒れぬようバランスを取る。
がさがさがさがさ、ばさっ!
大きく木々の枝が音を立ててしなり、草を編んで作った屋根が倒れて、焚き火の中に突っ込んだ。
「熱っ!うぉっ……おいおいっ!」
灰がぶわっと広がる。白い煙の中に、赤い火の粉がぶちまけられている。
屋根が燃えてしまわないように焚き火から遠ざけたいが揺れのせいで、立ち上がる事も出来ない。赤子のように這いずって動く。
どどどどどどぉん!!
遠くの方で大きな物音、そちらに顔を向けるが、何も見えない。何がどうなっているのか確認できないが、いつもより規模の大きな地震である事は確かだ。
わずか3m程の距離を四つ足で、考えられないほどゆっくり踏破して、焚き火に辿り着く。さあ焚き火に炙られているシェルターのパーツを助け出そう、と思った時には揺れは終わりを迎えていた。
くらくら……
ふぅっと胸の中でため息を一つ。
屋根を元の位置に戻した。ちょっとおこげがついたが、機能的には何も問題はないだろう。
立ち上がって周辺を確認する。
視界に映る限りでは特に何も問題はなさそうだが、物音と揺れの大きさからして、いつもの地震とは比べ物にならない規模だ。
そう、かなり大きな地震だった。ならばと頭をよぎったのは、津波の心配だ。早ければ30分と持たずに襲来するかもしれない。
避難すべきだが、どこへ行けば良い。高台はどこだ。島ごとぞぶりと呑まれてしまう可能性すらある。つい浮かぶ暗い考えを払いのけて、行動を開始することにした。
ペットボトルに水を詰めて、それだけを手に持つ。とにかく高い場所へ、岩場を登って、少しでも高所を目指して歩き始めた。
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