無人島サバイバル六日目(中)

ぱしゃり、ぱしゃり。


足元の悪い森の中を進んでいく。先程の大雨で水分を含んだ地面が、綺麗になった靴を飲み込んで茶色く染め上げる。

洗って乾かして、新品同然になって喜んでいた所なのにな。


じっとりと濡れた森は静かなもので、生き物は雨をしのいで未だに隠れているのか、出てくるものは居ないようだ。

蚊のような小さな虫までも、見当たらない。


「ふぅっ……ふぅっ……」


体力と集中力を削り取られていく。ぬかるんだ土と、ヌルヌルと滑る緑色の木の根っこ。

一歩一歩慎重に足を運んでいく。


その先に何があるとも分からないが、火のない所に煙は立たないだろう、何かがあるはずだ。



ずるり。


ちょうど岩場に差し掛かった時、足を滑らせた。後ろに向けて倒れそうになり、慌てて手を近くの木の枝に伸ばす!


「うおぉ!」


ずっ、と中指と人差し指が枝に触れるが、そこまでだ。身体を保持する事が出来ずに、そのまま後ろに倒れこんだ。


がっ、どちゃっ!


「〜〜〜〜」


幸いにも、岩に身体をぶつける事は無かったが盛大に転んでしまった。地面に仰向けに大の字である。


ゆっくりと起き上がり、怪我が無いかチェックする。肉体的な痛みは無いが、精神的にがっくりきた。


そう、上から下まで泥んこだ。野球部より酷い。靴も、服も、洗ったばかりだぞ!


あぁクソったれ。


良い事があると悪い事がある、縄のように交互に来るなんていうけれど、このクソ無人島じゃ、良い事が1あったら悪い事が9はあるな。


自分の不注意を棚に上げて、島に責任を押し付け、再び歩き始めたのだった。



……



あんな事があったので、それからは更に慎重に歩き、その後は無事に歩く事が出来た。

そして森の終わりまで来たが、草むらに隠れながら様子を見ている。何を慎重に伺っているのか、それは人影だ。


砂浜でキャンプファイアーを囲みながら、何やら話をしている人間達。ここから見た感じでは、わりと若い印象だ、20代前半か?それが5人いる。茶髪の男女と、黒髪の男が三人、全て日本人だろう。


装備は……茶髪の男がナイフを所持している。後の人間は丸腰だ。体格はそれなり、全員が健康的に見える。


海パンで、炭酸飲料なんかを飲んで楽しそうだ。ここからでは話の内容までは聞こえないが、肩を組んで何か笑いあっている。随分と嬉しそうだが、物資が潤沢にあるというのだろうか。


それにしても、バカなのか。この環境で、この騒ぎ。それとも、無人島と思っていたが俺の認識が間違っていたと言うのだろうか。


あぁ、頭がおかしくなりそうだ。コイツらがこんな近くでパーティをしている間に、俺は泥水をすすって喜んでいたのか。

十中八九キャンプから見えた煙はこれだろうが。さて、どうすべきか……。



①ずかずかと出て行って、やぁこんにちは。

②このまま様子を見る。

③立ち去る。

④襲撃する。

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