無人島サバイバル四日目(後半)
かさりかさりと、藪を掻き分け歩く。
来る時より気持ちが落ち着いたのか、さっきまで見落としていたが、枝葉が鋭利な切り口で切断されている跡をいくつか見つけた。
刃物を持った人間か、それとも何か別の生き物か。とにかく何者かが、歩くのに邪魔だと枝を打ち払った跡なのだろう。
いまだに他の大型の生き物に出会っていないのは、幸運なのか、それとも不運なのか。
金網と火種を持ったまま、不安定な足元をふらふらと歩いて水場へ向かった。
……
水場の近くまで辿り着いた俺が、次に行うのは火起こしとキャンプの設営だ。
貝殻のスコップで地面を少し掘って、土が見える状態にして、焚き火のエリアを作る。山火事で死ぬのは御免なので、不意に着火しそうなものは辺りから全て取り除いた。
そして、じめじめと湿った地面から離すように、大きな薪を並べる。その上に小枝や焚き付けを組むことで、地面の水分によって焚き火が邪魔される事が無くなるからだ。
この世界に来てから何度も経験したおかげで、火種があるならば火起こしの成功率は高い。
十分な火力の焚き火を手に入れる事が出来た。これは命の火だ、決して絶やしてはならない。
寝床には雨風をしのげるよう、草と小枝を編んで四角いタープを作った。これを岩に立てかけてさしかけ小屋にする。
これにはかなりの時間がかかったが、シェルターは万一雨が降った場合、火を守る事にも繋がる。
体力の消耗も大きいが、メリットの方を重く考え作成した。
……
一段落して、シェルターに腰を下ろして、火を眺める。ぱちぱち心地良い音が、聞こえてくる。
もう日も暮れた、今日の作業はこれまでだろう。
さて落ち着いたところで食事だ。
今日の夕飯は、昼に引き続いて例の芋虫を食べよう。薪を集めるついでに、四匹を見つける事が出来たのだ。
フレッシュな状態で食べると、口中で爆発するのが分かっているので、火で炙って食べやすくする事にした。
そう、幸いにも金網も火も手に入ったんだ、バーベキューでいこう。
こんがりと焼き色がついたモノを口に運ぶ。
「……うん、うん、おっ?」
個体が良かったのか、焼いたのが良かったのか、これは美味い。
美味いぞ?
皮がパリッとして、中はジューシーだ。食感は申し分ない!それに生食で不味かった腐った木の味、匂いが気にならなくなっている。
見た目に似合わない、ほんのりと甘いクリーミィな味わいに驚いたのだった。
……
人間の生活において、火は偉大だ。
灯のない昨日までは夜の闇がとにかく恐ろしかった。風の音、虫の声、全てに何か原初的な恐怖を感じていたのだ。
しかし、今日は焚き火の明かりと温かさがあり、闇の恐ろしさは鳴りを潜めた。
ぱちぱちと音を立てるそれを見ているだけで、ゆっくりと心が癒されていくようにすら感じる。
もし無人島に一つだけ物を持ち込めるならば、火を起こすための道具だろうか。
いやまてよ、ナイフがあればもっと良いかもしれないな。飲む点滴も欲しい、また飲みたい。
あぁ牛丼食いたい……米……醤油。
結論は出た。
人の欲望は果てしない。
無人島に一つ持っていくならセ○ンイレ○ン(コンビニ)だ。
時点で、イギリスの冒険家だな。彼がいたらそろそろ脱出パートに入っているだろう。
そんな事を考えながら、その日は過ぎ去っていったのだった。
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