無人島サバイバル一日目(後半)
寝床の確保の為、夕暮れ時の森に入る。
今日はそんなに本格的なシェルターを作る予定は無い。雨も降る気配は無いし、整地して寝るのに邪魔な石や虫なんかが居ないか確認するくらいだ。
本格的に拠点を作る場合、水場などが近い方が良い。それに立派なシェルターを作らないのは体力を温存する意味もある。
一日行動したのに食料はおろか、水すら口にしていない。喉はカラカラで、実に空腹であるからだ。
砂浜からほど近い、木の根元で休む事に決めた。さあっと吹く夕暮れの風は、火照った身体を気持ちよく冷ましてくれる。
……
お日様が本日の業務を終了して、代わりに大きな月が輝き出した。
仰向けに寝転がって眠る。
綺麗な月だなぁ、などとぼーっとそれを眺めていると、色々な考えが頭を巡って来た。
このまま明日も明後日も、水が手に入らなかったら?
そう、渇きのまま……。
ネガティブな想像が、頭の中をぐるぐる往復していく。
だめだ、切り替えよう。
だとしたら、ではなく、今をどうして生きるかだ。俺は生き残る、その為には何だってやるさ。
そんな事を考えながら、ゆっくりと目を閉じた。
ザザーン……ザザーン……
「んー……」
なんとなく目がさめる。
満月の日は精神が興奮するなんて、話も聞いた事があるが、そういうのもあるのかな。
月明かりで、辺りは薄っすら青い色に染められている。
やけに波音が耳に残るので、何気なく海の方を見ると驚いた、海が近い!
満潮だろうか、先程までいた砂浜の大部分が、海に飲み込まれている。
驚いた、海ってあんまり見ないからなぁ。そんなものなのか、それもいまいちわからない、びっくりだ。
さすがにここまでは水は来ないよな、そう信じて再び目を閉じた。
……
うゎーん、うゎーん
耳の側で変な音が聞こえる。嫌な予感しかしない、じろりと目を開けると、蚊のような虫がくるくると目の前を飛んでいた。
1、2、3……割とたくさんいる。
手に止まっているものを、ぱんと打って殺し、周りにいるものはブンブンと手で払い退けた。
潰れたそれを見ると、良く似ているが蚊ではないようだ。別に昆虫博士になりたい訳では無いので、その種類など何でも良いが。
「はぁー」
疲れているのに眠れない、これはちょっとストレスだ。俺はため息と共に、もう一度瞼を閉じた。
うゎーん……うゎーん……
「……」
喉の渇きに空腹、輪をかけるように虫の襲撃。無人島生活一日目は、バカンスとは程遠い辛いスタートとなったのだった。
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