迷宮サバイバル一日目(後半)
松明の灯りが手に入った事で、探索するスピードが飛躍的に向上した。
暗がりに目を凝らして、じわりと歩を進める必要が無くなったのだ。
炎の灯りを頼りにテンポ良く歩いていると、丁字路になった分岐点にやってきた。
右か左か……どうしようか。
後で進んだ道がわかるように、ナイフで壁面に目印を刻みつける。
まずは左に進んでみよう。
いくべき道をスッと決めて歩き始めた。
これは決断力がついて来たのか、ヤケになってきたのか。
しばらく進んでいると、開きそうな扉を発見した。今まで見た木製の扉と違い、今度は金属で出来ているしっかりした扉だ。
見慣れない光景に一瞬躊躇する。
しかし手がかりの無い今、これも開けるべきだろう。
がっしりした重い扉に、ぐっと手をかける。
ギィィ
重く開く扉。
扉の中には壁があった。
「はっ?」
思わず口をついて出てしまったが、壁に扉だけ付けてどうするつもりだったんだ。
設計者は居るのか?居たら教えてほしい。
ぺたぺたと触ってみるが、なんのこともないただの壁だった。
気をとりなおして、先に進む事にした。
……
通路の外壁だが、レンガやコンクリートなど使われている建材が混ざっているようだ。
それに比較的新しいものと古いものが混ざっているように思う。
建築については全く詳しくは無いが、どんどん建て増して出来た構造物なのかもしれない。
とにかく、一貫性がない。
そんな印象だ。
しかし、そんな事ばかり分析していても仕方がない。生きて此処を脱出しなければ。
そんな事を考えているうちに、古ぼけた木製の扉を発見した。ノブに手をかけてみるが、鍵がかかっているようだ。
「蹴破ってみるか」
少し離れて、前蹴りで思いっきり体重をかけて蹴り込んだ!
ドンッと大仰な音を立てる扉。
しかし、壊れる事はなかった。
もう一度、更に力を込めて蹴り込む、ドンッと言う音と共に木製の扉が歪んだ気がした。
その後も何度か挑戦してみるが、凹んだりはするものの、ドアが壊れて開くような気配はない。
「はぁー……はぁー」
映画のシーンはウソだったのか、それとも俺の力が足りないのか。こんな古ぼけた扉でも、しっかりとその役割を果たしているのだった。
だめだ、こじ開けられる道具でもあれば良いが、素手では扉を壊す事は出来ないだろう。
そんな結論に達して、再び通路を進む事に決めたのだった。
……
「はぁー」
疲労が溜まって来ているのが、自分でもわかる。延々と古ぼけた茶色や、くすんだ灰色の壁に囲まれて歩いているのだ。
この建物は、どれだけの規模があるのか。
どこへ向かえば良いのかも分からず、ふらりふらりと歩き続けているためだ。
あれから開く扉は見つけていない。無限に続くような廊下を進んでいるだけだ。いや、進んでいるのかも怪しい、同じところを回っているのではないだろうか。そんな気分だ。
「なんだこれ」
松明を二本ほど使い潰した時に、その扉を見つけた。しっかりした素材で整然とそこにあった。
外観は随分綺麗だ、まるでマンションのドアのようで……。
「やっぱり、人間が作った建物だよなぁ」
俺のように家ごと。マンションごと、この世界にやってきた可能性がある。そうであれば繋がっている他の建築物はどうなっている。此処には人が住んでいるのか、それとも他の何かがいるのか。
もやもやと考える事が、頭を駆け巡る。
しかし、虎穴に入らずんばだ。
ドアノブにゆっくり手をかける。
かちゃりと言う音が、鍵がかかっていない事を告げた。入ってみよう。
中に進んでいく、室内は真っ暗で何も見えないが……。
玄関の先はフローリングのような床。
本当に人間の住処なのか?
その時、ふっと松明の灯りが消える。
(ん?なんで?きえた?)
なんだっけ?なにをかんがえていたんだったかな。おれは、はやく、なにをはやくだっけ。
頭の中がふわふわしたと思ったら、急に目の前が真っ暗になった。
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