第32話 二十六日目

その夜に、田中さんの待つ家に到着した。


楓くんの顔を見た田中さんの喜びようと言ったらなかった。


俺たちは、お互いの無事を喜び合い、疲れを忘れて色んな話をしたのだった。



……



二十七日目



「本当に行くのか?」


行くというか、帰るのだ、我が家に。昨日のうちに決めた事だ、家がどうなっているかも気になる。


「はい、今回の件で一安心しましたし。少し、この世界で生きていく自信も付きましたから」


「そうか、いつでも遊びに来なぁ」


「お兄さン、本当にありがとう!」


そう言って、別れを惜しんでくれている。彼らとは、今回の一件もあり本当の家族のような絆ができたように思う。


「今度来るときは、家の本を持って来てあげるよ」


「やったア!」


そんな話をしていると、田中さんから声がかけられた。


「これを持って行きな」


リュックに水筒と金属カップ、メタルマッチとナイフだ。楓くんを助けに行った時の装備をそのまま譲ってくれるらしい。


「ありがとうございます!」


自分のリュックは無くしてしまったので、ありがたい。


「じゃあな、またこいよ」


はいっ、という返事と共に出発すると、彼らは見えなくなるまで、手を振ってくれた。

ところで、どうやらクロは一緒に来るらしい、トコトコついて来た。



……



我が家に到着する。


ここに帰ってくるのは、ずいぶん久しぶりの気がする。出発した時のままの家の姿に、安堵した。


今日は家の布団で眠れるなぁ、なんて考えていると、当たり前かのようにクロも家の中に入って来る。


「そうだよな、お前も家族だもんな」


頭を撫でてやると、尻尾を振って応えた。


「でも足は拭こう」


家が足跡だらけになるのは御免だ。

足を拭いてやると、ちょっと嫌がって逃げた。



……



その夜、布団に入ると、クロが上に乗ってきた。一緒に寝ようということかもしれない。

ちょっとずらして、一緒に眠る事にした。


さあ、今日も終わりだ。

明日はどうしよう?何て考えていると眠くなってきた。クロはもう寝息を立てている。


しかし、この時はまだ思いもしなかったんだ。明日があんな事に、なるなんて。


そう



明日から突然サバイバル生活が始まるとは!


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