第16話 十六日目

うっすら頭が痛い、気がする。風邪だろうか。それとも気のせいか。

そんなことを考えながら干物になるよう、魚を開いてベランダに吊るしておいた。


毎日タンパク質ばかりで、ビタミンが足りないのかもしれない。

今日は田中さんに教えて貰った林で食べられる植物を探しに行ってみよう。



……



教わった事はいくつかあるが、まず始めに言われたのが「キノコを採るのは、やめとけ。」だ。

キノコスープが作れないのは残念だが、毒キノコで死ぬのはごめんだ。


「おっ」

早速食べられるものを見つける事が出来た。

木の上になっている、凸凹がある紫色の果実だ。そんなに小さな木でもないが、熟すと木から落ちてくるようだ。一つ目のイノシシが食べていたのを見たのでシシの実と呼んでいるとのことだ。


一つ食べてみる。紫色の皮だが、中身は薄い赤色だ。手触りは桃に似ている、大きさは少し小さい、味は…


甘酸っぱくて美味しい!桃に比べると酸味が強い。しかし、結構好きな味だ。

煮詰めてジャムにしてもいいかもしれない、帰ったら作ってみよう!


他には、ほうれん草のような野菜も見つけた。これはそのまま食べると鬼のように苦いけれど、茹でると美味しく食べられるらしい。

シカのような生き物が食べていたのでシカの葉と呼んでいるそうだ。

採れるだけ取っておく。



……



(この辺りだったよなぁ)


どうしても腑に落ちない事がある。

それは、以前水を汲んでいた池が見つからないという事だ。

新たに沢を見つけているので、水の心配はないのだが、気になる。

なぜ池が見つからないのか、おおよそこの辺りだという場所には何回か来ているのだが、影も形もない。池の水が天変地異で干上がったとしても池の跡さえないのはおかしい。


(まぁ、良いんだけど…)

気を取り直して山菜採りを続けよう。


「●□▲★…!」


その時遠くから、話し声なのか叫び声なのか、わからないような声が聞こえてきた。日本語ではないのか?聞き取る事が出来なかった。


そちらを見る。


遠すぎて、しかも後ろ姿なのでよくわからないが、黒い服を着ているようだ。

二人並んでいるので話をしているのだろう。


田中さん以外にも人間がいたのか!

声をかけながら近づいてみる。


「おぉーい!」


呼びかけに彼らが振り返る。


その直後、ゾワっとしたものを感じた。

服を着ていると思ったが、それは勘違いだった首から下が真っ黒な体毛覆われているのだ。

しかも振り向いたそいつらは、顔や皮膚が緑色だ、人間ではなかったのだ!


(やばいっ!)


直感でそう感じた俺は、素早く方向転換して逃げた!


ガサガサガサガサッ

草木を掻き分けながら走った。

息が続く限り走ったが限界だ、立ち止まる。


「はぁーはぁー」


距離が遠かったのが幸いしたのか、向こうには俺の姿が見つかっていなかったのか。

理由はわからないが、追いかけて来ている様子はない。


(うかつだった、気をつけないと。)

ここは異世界だ。

人型のナニか、がいてもおかしくは無い。


追跡者がいないか注意しつつ、家路を急いだ。

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