第15話 十五日目
今日も絶好調だ、予定していた段取り通り釣りに出かける事にする。
水を汲めるよう、空のペットボトル。釣具。火起こし用にライター。水筒といくらかの干し肉をリュックに入れて出発する。
おっと、釣れた魚を調理できるよう、包丁と塩をいくらか持って行こう。
と、玄関先に子犬がいた。
「おっ今日も来たのか。」
くんくん…
足元をくるくる回りながら匂いを嗅いでいる。リュックの中の干し肉がお目当てだろう。
「お昼までついて来たらお弁当を分けてやるよ。」
頭を撫でながら、そう言って出発した。
言ってる事が伝わったのか、後ろをてくてくついて来くるようだ。
……
林の入り口まで歩いて来たところであることを思いついた。
「名前がないと不便だよな。」
そのまま少し考える。
しゃがんで目線を合わせる、なんて可愛い顔だ。
「お前、クロでいいか。」
本人は何のことだかわかっていない様子で、あくびをしている。
一人で納得して、俺はクロと一緒に沢に向かって歩き始めた。
……
「大漁大漁!」
やっぱりこの沢は釣れる!
林で迷って死にかけたのも、このポイントを見つけるためだと思えば良かったのかも知れない。
近くでクロが一人で遊んでいる。ころころ転がっている姿をみる。
(平和だなぁ…。)
なんてこちらの世界に来て初めて思ったかも知れないな。
沢で水を汲んだあと、釣った魚の内臓だけ抜いて下ごしらえをする。
河原で焚き火を起こして、釣った魚を塩焼きにした。何匹かは残しておいて家で干物にする。俺の頭の中は保存食といえば乾燥なのだ。
(そろそろかなぁー)
じっくり焼いた魚の背にかぶりつく。
「うまぁーい!」
塩があるとこんなに違うとは。以前食べた時も最高に美味いと思ったが、今日のはそれを超えた!
干し肉も、軽く炙って食べる。
「おぉ!これもいける!」
干し肉はイマイチだと思っていたが、軽く炙ると全然違う!温度の問題なのだろうか。
舌鼓を打っていると、物欲しげな目が向けられている事に気がついた。
というかクロは膝まで登って来ている。
「わかってるって、ほらっ」
干し肉と魚の頭を分けてやる。
もくもくもく
凄い勢いで食べている、どうやら気に入ってくれたようだ。
食後はクロとひとしきり遊んだ、もうずっと一緒にいる友人のように仲良しだ。
片付けをして撤収の準備をしていると、いつのまにか居なくなっていたが、またすぐに出会えるだろう。
帰りながら薪を拾っていく。
食料(魚)、水、燃料(薪)を得て、今日は良い収穫だった。
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