第11話 十一日目

ゴゴゴゴゴ…

グラグラグラ…


「地震か。」


いつぞやと同じくらいの大きさの地震だ。

地震で慌てる余裕がないくらい体調は最悪だ。空腹もそうだがとにかく喉が渇いている。


差掛け小屋から出て周りを確かめる。

「大丈夫、まだ動ける」

動けなくなれば終わりだ、言い聞かせるように呟いて活動を始める。


ピチョン…


耳をすますと水音が聞こえる、昨日も聞こえていたのだろうか?

それとも喉が乾きすぎて幻聴が聞こえ始めたのか。

兎に角、音の方へ歩いて行くべきだろう。


水音に誘われてまっすぐ歩いて行くと、目の前に壁が現れた。

崖になっているようだが、昨日もこんな地形だっただろうか。記憶が曖昧だ。


水音の正体は、この壁面を伝う水の雫だったようだ。まるで十分な量とは言えない。壁を触っても手が濡れる程度の量だ。


「水…飲み放題とはいかないかぁ」

がっくり肩を落とした、壁を舐めても舌が削れるだけで満足に水は摂取できないだろう。


仕方がないので少しでも水を得る工夫を考える。壁に植物の葉を立てかけた、葉を伝って水が滴ってくるのでその下に空の水筒を設置する。

時間はかかるが、しばらくすると水筒の中に集められた雫で水が確保できるはずだ!


その間に付近を探索してみる、何か食べられるものはないか?


不自然に木が集められていて、燃えた跡がある、灰と炭。つまり焚き火の跡だ。

誰かがここで火を起こしたようだ。

人間がこの近くにいるのだろうか、それは良い知らせか悪い知らせなのか…。


「これは使えるんじゃないか?」


焚き火の近くはまだ熱を持っている、熾火がある。急いで近くのなるべく乾いた木や枯葉を集める、釣りに使うために持ってきたタコ糸を火口に使って火を起こす。


ふぅーふぅー


(ついてくれ!)

手で囲んで風で消えてしまわないようにしつつ息を吹きかけて酸素を送る。


……ついた!


慎重に木をくべて、火を大きくした。

これで火が確保できた!

思わず小躍りしそうなくらい嬉しい。


焚き火を拠点に近くを探して見ると、たくさんの芋虫を見つけた。空腹だがこれを食べるのは気が乗らない。


(一応焼いてみるか)


灰の下にしばらく埋めて火を通す、掘り起こして見ると外は茶色でパリパリしている。案外食べられそうな見た目ではある。


「ええい」

芋虫を口に運ぶ。

ぶちゅっとした食感はあまり好きにはなれないが、甘くてちょっと美味しかった、意外だ。

全部焼いておこう。


水筒に集めた水も飲んだ、これほど美味い飲み物は今までなかった。渇きが癒えた。

芋虫で貴重な栄養補給もできた。


いつまでもこの場所にとどまっていても仕方ないだろう、いつでも火が使えるように種火を持って出発した。



……



散々歩き回ったが、今日も林を脱出することはできなかった。

火が暮れそうなので、今日も作った差掛け小屋に入って考える。

2回目だけあって昨日よりも上手に建築できただろうか。

そして昨日と決定的に違うのは焚き火があることだ、暖かいし、暗闇に炎の明かりは想像以上に気持ちを楽にしてくれる。

日中集めた水も芋虫も、もう無くなってしまった


明日こそ林を脱出して、家に帰ろう。

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