第10話 十日目

今日ほど生きて朝を迎えられたと感じた日はない。

昨日はほとんど眠れなかった、全身がギシギシと音を立てているかのようだ。万全とは言い難い体調だが、槍を杖にして立ち上がった。


「よし大丈夫だ。」

口に出して確かめる。


救助されるという希望がないこの場所では、自分の力だけで生還するほかないのだ。

今残されている食料は、わずかに残った干し肉と水筒に半分ほどの水だけだ。

水の大切さは痛いほど感じている、この水は大事に飲むようにしよう。


早速、行動をはじめる。

生き残るためには一刻も早くこの木の牢獄から脱出する必要がある。



……



この林の中のウォーキングだが、良いことが一つだけあった、荒地を歩くよりかなり涼しいということだ。

それだけだ、あとは同じような景色で時折ある獣の声が聞こえたり、視線を感じる事があり気が狂いそうだ。

帰る方向や場所が明確な時はこんな気持ちになる事はなかった。

同じ場所でも、心持ち次第で天国にも地獄にも感じられるのだ。


随分歩いた気がするがまったく見覚えのある場所にはたどり着けない。あの池はどこへいってしまったのだろうか。



……



今日はここまでだろう、日が暮れると全く状況がわからなくなる。日が沈まないうちに夜を耐える準備をしておいた方が良さそうだ。

昨日のように木にもたれて眠るのはこりごりだ、体力を回復するためにも休む事のできる家を作ろう。


ちょうど良い感覚で生えている二本の木に

木を集めて植物のツルを使って編んだ骨組みを立てかけて簡単な差掛け小屋を作った。

屋根と地面には葉っぱや木の皮を使って密閉度を上げた。

小屋の中に寝てみるが、これほど快適だとは。

風も防げるので少し暖かいし、精神的に家があるといのは心強い!


何とか火が起こせれば、もっと良いのだが。

ライターを携帯していなかったのが悔やまれる。

もう食料も水も無くなってしまった。

非常に喉が渇いている、とにかく水が飲みたい。


帰宅できないのであれば、水を手に入れないと長くは持ちそうにない。生き延びるために明日は水を手に入れることを最優先に行動しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る