私の知る勢力図…不知火・棺の国・大聖堂・地獄君主〜そして未来の絶望

 西園寺より孫一さんが頼む前提で協力を惜しまないと言う約束を取り付け、獅子川と今後について話し合う。


 獅子川は定満家の情報と資金をフルに使い必死に不知火を組織化していた。

 彼女はアイドルを引退し、暇をしているからと思ったが結構忙しいらしい…


「はぁ…千代のせいで寝不足か祟るよ…」


 ムカつく皮肉の1つや2つは我慢してやる事にした。


「で、まず不知火だけど、大きく分けて千代の実家の定満、それと白座君の親戚の西園寺。その下に分家がいくつかあるけど、とりあえずその二家とはあくまで対等、相互関係の繋がりを持つ事にした。」


 獅子川の話だと、私の実家の定満、そして孫一さんの親戚筋の西園寺は、不知火…いや孫一君が表に立つなら不知火の下に付くと言う。

 

 しかし獅子川は断った。


「互いにバックに大家が繋がっていると思わせる、それによって時間を稼げる。西園寺の跡目争いはともかく、定満は肥大傾向にある。このまま行けばある程度は問題無い。逆に一強になると、良しとしない勢力の合併が加速し、強大な塊となって潰しに来る。まるで戦国時代だね。我々は仮想の今川、武田、北条の様に協力関係を作り周辺に圧をかける…実際は1つの組織だけどね…しかしそれも例えば仮想敵国である軍事国家の上杉やら、規模の大きい西国に対抗する為にだ、戦国時代に例えるならね…しかし…軍事国家…ねぇ…」


 獅子川は渋い顔をする。断絶されたらしいが獅子川家は元々【川】と呼ばれる家々の分家だったらしい。

 今は家族や親族共々一般人としては暮らしているが、獅子川本家は第二次世界大戦の敗戦の責任を取り潰れた。


 その【川】の頭領は有栖川家…だが分家の来栖川の傀儡になりつつあると言う。

 そして【川】の話題になると必ず出る名前…それが来栖川家を継いだ‘‘来栖川棺’’と言う化け物だ。

 来栖川は元々異能と呼ばれる不可思議な力を持つものに注目し、来栖川家に呼び込んだ。

 棺は来栖川家の権力者達を洗脳と暗殺で乗っ取り、その力を持って、戦争が尽きないこの世界に傭兵業として参入した。

 

 棺は世界を回り、殺し続け、そして勝ち続けた。

 傭兵の勝ちとは戦果をあげ、生き残り続ける事。

 現在は軍事大国のアメリカやロシア、中国を除けば、それに次ぐ兵器とコネクションを持ち、傭兵の数は一国の兵数に匹敵するそうだ。


「蹂躙の棺、そして不死の棺…だけどね、棺には弱点がある。それは名家、異能、傭兵、その力を棺一人のカリスマで支えている事だ。そして…奴は異能者ではなくただの人だ」


 獅子川に言わせると弱点は多い…噂程度だが孫一さんに何か因縁があるという事、それと破壊という不明瞭な存在への憎しみ…この2つに異様な執着がある事だそうだ。

 その執着は棺の姉の遺言と何か関係があるらしいが…


 そして獅子川が来栖川棺に蒔いた毒種…一粒目は【白座孫一は死んだ】と言う噂だ。

 揺さぶる…そしてそれは実を結ぶ。

 死んだと言う噂の後、まるで狂った様にあらゆる方面に戦いを仕掛けていた棺の国だが…


 何を思ったか、孫一さんが何故か棺の隠れ家までフラッと行き電話をかけた。

 私達は危険過ぎる行動に急ぎ孫一さんを回収したが…

 その件以降、棺は存在を消し戦争中の組織への牽制や諜報をやめ停戦宣言、そして我々への諜報が激しさを増した。


 諜報戦になると獅子川の土俵だ。現在は獅子川の思惑通り硬直状態にあるが…どうなっていくのか?




 そして、棺の国が我々に牙を向き始めた頃…


 海外の組織で棺の国とは違う意味で規模の巨大な組織が動き始めた…宗教の中で最も規模の大きな十字を象徴とした団体…それを隠れ蓑にした、ある意味宗教じみたものを目的とする組織、その名は【大聖堂カテドライト】またの名を【光】だ。


 


 棺が何故、破壊という眉唾なものを信じるのか?

 それはこの団体の教義にあるらしい。


『全ての神器が奏でる時 光が全てを照らし人を救う 光が現れる時 必ず破壊の神が否定する そして後に 破壊を従えし地獄君主が現れる 救いの光を否定する絶望 地獄君主を消失すべし』


 一見、破壊との闘いが目的の棺と目的が一致しそうな大聖堂だが、棺の国とは水面下での争いを続けている。

 その理由は…今はまだ分からない。

 ただ、棺の国が牽制をやめると、いよいよとばかりに日本へと進出を始めた…

 

 不知火と棺の国、そして大聖堂…この組織間の闘争は、結果的に10年にも及ぶ事は想像していなかった。


 獅子川は言う…我々の子供の世代が育つまでにこの闘いを終わらせる。否、終わらせなければならないと。


――――――――――――――――――――――――


 そして闘争を続けた十年間を嘲笑うかの様にやって来た。

 それは破壊の頂点と、洗脳の頂点をひきつれてやって来た。

 獅子川が対応する…他の幹部では衝突しかねないからだ。


『お館…デシタっけ?孫一さんはどこデスか…グゾの件で…』


『しかし…アポ無しで来られても困るんだか…』


『そういうドゴロガ…アイヅガに…ヂョ〜じ…ノラセルんだ…オゾイん…だよ…けっぎょぐぅアイガがぁよ…』


『す、すまん。少しだけ…待ってもらえないか?』


 睨んでいる訳では無いが…赤黒い双眸が獅子川を見つめると彼女は怯んだ…この3人にはトラウマのある女だ、彼女では荷が重い…

 同じ道場で一回り下の…少年だった頃から知っている男の子…いや、いまや化け物。

 

『根多君主、無茶苦茶いわなんしゅ、不知火じゃコレがげんかグフッ!?♥ギギギイイイイ♥』


 シャー…ポタポタ…


 洗脳の頂点、アマテラスの首を片手で締め上げ絶頂させる暴君の姿…あの少年が…

 目の前で行われる洗脳の頂点の脳破壊…その横で破壊の頂点はブギーボードの様なすぐ消せるボードを持って必死にこっちに見せてくる。


【ヒロをしげきするな おちつかせてくれ】


 と無理難題のカンペを出す。しかし私とてこの様な狼藉を許すわけいかない。


「ヒロ…分かっているのか?孫一さんの御前に立つという事がどれほどの…ㇷ!?クッ!?」


 アマテラスを持ち上げながら私を眼で刺してきた…異能でもない…孫一君の持つ神威でもない…未だに解明されていない力…ただ…見られているとトラウマが…心が…


『千代さんは、黙っていて…ぐれなぃが?』


 言の葉にディレイがかかる…何をしているのかのか知らないが…心が不安定に…トラウマが…


【マゴ君も皆と一緒にこの白いのかけあおうね】


『やめっ!やめろ!ぞれはやベボオオオエエエ…』


『待てっ!分かった!通す!お館様は奥にいるんだ!獅子川の名に置いて通す!もう行ってくれ!』


 私は頭を抑え吐きながら絶望していると獅子川が耐えきれず言った。

 トラウマを刺激する…絶望を知る者には再度、絶望を…絶望を知らぬ者には絶望を与える…


『だ、誰がぁ…止めてぇ…マゴ君が…』


 高身長、軍服姿の幹部が私に近付く…


『無理だよ、千代に破壊は止められないだろ?私はアマテラスを止められない…そして獅子川もご覧の有様だ…何せマシロが絶望を崇拝しているからな…ならば我らも信じよう…我らが主を…』


 部屋の向こう…我らが主…最強の永井、外道の佐伯、無明の岡田…そして死王・白座孫一がいる…


 ドアの向こうに行く化け物達…会話が聞こえて来る…





『なに!?ジェシカがさらわれただと!?間違えた(笑)アイカがさらわれただと!?』


シーーーーーーーーーーーーーーーーン


『永井のおっさんやめろって!ヒロ刺激するなっての!』


『まぁヒロ…好きなように生きて、好きなように死ぬ 誰のためでもなく それが、俺らのやり方だったな』


『ざっギガらファイナルファイティングやらアーマードロボやらゲームの名言ばかりナメてんのがぁ!?いいガラマージャンやめろやっ!』


『あ、岡田、それ、ロン!ハネマンよろ』


 じゃララララララ


『うおおおおおお!?俺のハネマンが雀卓に吸い込まれる!?岡田!テメーボタン押しただろ!?』


『今、岡田は押した、間違いない。外道と言われた俺でもコレはしない。バレバレだから』


『違うよ、彼らが来たからよく分からない力で吸い込まれた。間違いない。』


『根多君主…やはり無明は恐ろしい…今、間違いなくマージャン卓の再采配ボタンを押したのに無明の岡田は記憶から消してます…やはりコイツは私では勝てないのか…』


『やがましいクズどもがぁ!良いからナンとかしろやぁ!マージャンしてる場合かってんだよ!』


『ここが! この戦場が、俺の魂の場所だ!』


『だからアーマードロボの名言やめろやっ!』


 孫一さんは…私に内緒でマージャンをやっていた…

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