弐 父と母の血・弟の命と妻の宿命 西園寺穂澄の章

孫一/ほら、やっぱり…千代は書けないんだよ、戦記物…→最近の小学生はヤバい

 不知火の記録を利用し、あわよくばWEB小説コンテストで傷跡を残そうとする千代。

 だが、そこには問題があった。

 コンテストはR15である。そしてちゃんとした企業が開いている。

 個人ブログや匿名掲示板ではない。

 ライバルはプロと言っても過言ではない猛者達だ。

 いや、そういう問題ではない。


 千代こと、ペンネームがマン何とか…は官能小説界隈が主戦場である。

 更に言えば自己陶酔の強い、独りよがりなニッチな官能であり、濃厚なファンしかいない。

 自己陶酔の強い妄想官能小説家が、商業的なコンテストに記録やリアリティを主とする戦記物を書く…千代、馬鹿なのか?


 そして何より…これから6章分ぐらい…子供が高校生になるまで書くつもりらしいが…千代は実際、現場に居はしたが、何もしてない。


 してないは言い過ぎた、その場で全力で殴り合いとか、何かよく苦しんだりはしていた。

 それでも西園寺の伯母さんとは俺が普通に話し合い…いや、永井が余計な事をしなければ普通に挨拶に行っただけと言える。

 特に西園寺の叔母さんは一年近く千代が意味不明な手紙を送り、会ったら会ったで感情的に騒ぐだけ騒ぎ、獅子川が煽りまくるから叔母さんが相当イライラして、これからは話し合いの時は孫一連れてこいと怒鳴る始末。しかも俺が謝った。

 つまり千代は要らなかったようだ。


 ちなみに不知火運営計画は、棺が来るまで千代が適当に、そして骨格は殆ど全部獅子川が作り、その後、軌道に乗せたのがこれから出てくる来栖川家の棺だ。

 棺は不知火の運営や戦略方針に至るまで全てを正しい形にした。アレで女装癖が無ければな…


 しかし千代は何故、このような出来もしない無謀な巨大組織運営を行おうとしているのか?

 分かってるんだ俺は。千代は戦記物は書けないが、読むのは好きなのだ。

 だから雰囲気だけを書く…結局、凄い組織にいる『私と孫一、私の活躍』メインで。

 『格好良い感じ』だけを出しドーパミンが出っぱなしの千代、その思いつきの自己陶酔で不知火の組織運営で行った。


 結果、引き継ぎをした獅子川が…そして棺が発狂した。

 

『現状、資金源はどこの団体や企業?収支報告はどうなってるんだ?何?よく分からない!?フロッピーディスクに入ってるって!?何で!?うわ、大量の現金がタンスに…ちょっと整理するから!何もしないで!』

『と、とりあえずお金の話は良いや…で、組織の目的…目的無いの?じゃあ敵対組織を作り敵対し、組織を団結させる。敵…組織は…揉めてるのは何家だっけ?なんかあったよね?組織図は?小説サイト!?何でっ!?』


 俺、知ってんだ…獅子川がストレスがマッハになって、俺と千代が見てない隙きを狙い、小学2年のマシロの口に舌入れたんだ…子供に舌を入れるチューを…でも世話になってるから…注意出来んかった…


 それでまぁ獅子川は頑張ってもまとまらず、棺が入った途端、『私の本業じゃないから』と棺に丸投げした。すると棺が気付く。


『なんだコレ?何で指揮系統が、トップの孫一様と千代と末端で行ったり来たりするんだ!?』

『獅子川っ!おい獅子川!何だこれ!?何の端末?どうなってるんだ!聞いてんのか?おいっ!』


『知らないよ!やったの私じゃないって!千代に言えよ!棺は慣れてるだろ!?』


 何か大変そうだったのは覚えているし、あれが原因で仲悪くなったっぽい。

 そして、その後…運営計画も戦略政策も獅子川も棺も千代に教えなかった。

 計画が遅くなるし乱れるからな…すぐ、意見のない俺の承認を得ようとする…ドヤ顔で。

 報告する自分の参謀感に酔っている様だった。

 一応トップに報告すると言われると、馬鹿の承認欲求の為と解りきっているのだか、二人共従うしかない。

 違う意味での承認欲求モンスターだ…

 俺が20回目ぐらいの『それで良いんじゃない?』と返したあたりで獅子川と棺がキレた。


「とにかく『『私』』だって暇じゃないだっ!」


 結果、千代に情報が入らなくなった…そりゃそうだろな。




 話は遡るが、西園寺の叔母さんの時も…

千代が散々、難解な手紙を送り付け、会話にならない説得だか自分語りだか、よく分からない話を強気な姿勢で開始…


『白座孫一?そんなものはいない…マンゴ仮面に降れ、哀れ西園寺よ…そしてマンゴ仮面との絆…それは血の盟約…スパイダー千代の感度を知れ…』


 何言ってるか分からないし、叔母さんが説教しようとしたら急に泣きながらすがりつく…


『義母さんと約束したの!マンゴ仮面を守るために!私は…何でもする!だから!だからぁ!』


 とりあえず叔母さんはイライラする…それを見ていて我慢できなくなって獅子川が金を積む…叔母さんはとうとうキレるという馬鹿みたいなやり取り。


『話の流れがよくわからないからとりあえず現金置いて【金に困ってるみたいだからコレで折れてくれませんか?】って言ったらメッチャキレられた…もう無理…白座君が何とかして』


 と、獅子川という俺の会社のオーナーから命令が来た…俺は社畜、行くしかない。

 

 俺は即謝りに行った。俺の特技『悪・即・謝』

 間違えたと思ったら『悪い思ったら即、謝る』

 よし、土下座だ。ただの土下座じゃないぜ、倍・土下座だ。


 その為に俳優をやってるエロゲーの友人、永井は顔も身長もあるから土下座させたらインパクトあるだろうと誘い、バイクで西園寺邸に向かった。


「孫一のバイク久しぶりダゼ!そして永遠の親友の為に、その親友の彼女を救いに行く、コレは盛り上がるな…萌えから燃えになった…モエカン以来の盛り上がりだわ」


 一つ言うと親友と言った事は永井の母親に一度しか言ってないし。

 バイクのケツに乗せた事は無い、何故ならコイツは重いしデカいので運転しづらいしバイクの後輪タイヤがバーストするから。

 それに俺もお前も結婚して子供いる、彼女じゃない。

 そして無理矢理ギャルゲー情報を挟み込む永井。


「これから行くのは孫一の弱点属性のところに負けを覚悟で殴り込みに行くんだろ?彼女を救うためにな!グワハハ!コレは覚醒するな…俺はモブ相手に無双ってところか?孫一の覚醒…そして夜は千代ちゃんと…まぁこれは蛇足かも知れないな(笑)ヤベ、盛り上がってまいりました!ギャハハハ!」


 何がおかしいんだよ…俺は今から親戚に謝りに行くんだよ…そのギャルゲーも全然違うしファンディスク買ってないからそんなの知らんよ。

 コイツはコイツで役者なんて仕事、慣れない事して家では奥さんに滅茶苦茶手綱握られてるからな…なんか溜まってんのかな?


「とにかく永井、現地で土下座インパクトよろしくな」


「ゲハハ!まかしとかんかい!まろいちの為に千切ってわ投げたるわぁ!そして止めの土下座インパクト!グワハハハハ!」


 しかし、うるせえな永井は…テンション上がると口調変わるけど話聞いてんのかコイツ…そして家に着いた…流石ナビで家の名前で検索出来る家、デケェ家だなぁ…とりあえずインターホンを押そう…


ピンポーン

「白座孫一でーす!嫁とその友達が迷惑をかけたので謝りに来ましたー!…あの、穂澄さん、いらっしゃいますか?花蓮の息子が来ましたと伝えて貰えますか?」


『白座!?孫一!?様!し、少々お待ちを!』


 デカい門が開く、どうやら車で中まで入れるようになっているらしい…とりあえずバイクのまま入ろう。


 そしてなんかスーツの人が手を振っているのでそちらに向かう…が、後輪ブレーキをかけてると、案の定、永井の重量と小刻みに揺れる馬鹿、後、久しぶりにバイク動かしたのもあって後輪タイヤが破裂した。


 あぁ…一人なら何とかなったかも知れないな。

 永井が重くてな、もう、無理…と、思いながら豪快にコケた。骨は折れないがまた全身擦りむいて血がダラダラ出た。

 ハァ…やだやだ。何で永井は擦り傷すらないんだよ…しかしまぁ…謝罪衣装、持って来といて良かったわ…

 波の入った白い着物セット…筈が羽織しかないじゃん!まぁ良いやと、思って着ると波の柄に血が染みて凄い事に…

 着替えたところで案内された部屋に入る。

 執事みたいな人が「わぁ!?」みたいな驚き方してたけど…しょうが無いよな。


 中に入ると千代と西園寺の叔母さん、それと叔母さんの娘かな?小学生ぐらいの女のコ、俺を見て3人の目が見開いた。


 その周りのには執事さんかな?スーツやヘンテコな全身タイツ男がこちらを見てニヤリとした。

 血だらけの着物は珍しいかな?洗濯どうしよう?


 そして腕を組み、明らかにイライラして、俺と永井を睨み付ける獅子川。


「遅いっ!お前等はもう、ゲームの発売日に合わせて出す希望休はやらんから!後はなんとかしろ!」


 パワハラだな、ブラック獅子川だ。後でマシロに何とかしてもらおう。ゲームの発売日に合わせてお父さんを休ませてくれと。


「だめえぇぇ!マゴ君!何で来たんですか!?ココは危険ですっ!私に任せて下さい!皆!彼は関係ありません!」


 相変わらず騒ぐ俺の嫁…俺も呼ばれて来てんだけどな(笑)

 ちなみにこの時期は俺がトップという事は隠す方向らしい。意味わからんけど。

 

「孫一君…やっと来たのね…待ってたわ…」


叔母さんがヨヨヨと近付いてくると瞬間に永井が消えた…次の瞬間、聞こえる炸裂音。


ドギャっ!「ぎゃっ!?」グシャ!「ヒイっ」バタンバタン…


 永井が叔母さんを囲んでいた執事さんらしき人や全身タイツの人を襲い始めた。

 テンションの上がっている永井は圧倒的に強かった。強いとかそういう問題じゃない…


 何をしているの?永井。…土下座は?

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