21

 ジャルスの店につくと紫色の片眼を隠した髪をした成人男性が一人。肌は青白く、長袖とズボンと軽装備の見た目は俺にそっくりだったが何か違う。


「あぁ、むらさきくん。キミが来るとは予想外だ。なんだい、キミはボクのスキル薬を飲んでもスキルは得られないよ。特別なスキル渡したろ? それで満足したまえ」


 この男、彼もジャルスのスキルに困っているのか苦笑しては「嘘つき」と小さな声で言う。


「え? やだやだ。ボクはキミに素晴らしいスキルをあげたよ。それが気に入らないのかい?」


 俺にベッタリくっつくジャルスはニマニマしながら男をあしらうように言葉返すと「君も……この悪魔・・に変なスキル売られたの?」と話が俺に飛ぶ。


「あぁ、まぁ……ちょっとな」


 詳しいことは言わず誤魔化すように返事すると握手のつもりかステータスを記される紙を丸め手のように差し出す。


「名はない。好きに呼んで」


 静かな自己紹介と微かに結ばれる信頼の糸。俺はさりげなく紙を掴むとスルッと男は紙から手を離した。


「見て、その方が早い」


 言われるがまま“それ”を見る。

 それには“俺”より酷いことが書かれていた。



【ステータス】

 name:―――

 性別:―――

 身長:159

 武器:猛毒

 体力:E-

 耐久:E-

 筋力:C

 知性:C

 精神:C

 器用:C+

 素早さ:A++

 幸運:A++

 魅力:C


【スキル】

 ・無限毒状態

 ・敵に毒状態付与

 ・毒回復

 ・アイテム、武器使用不可

 ・死亡強化

*死ねば死ぬほど強くなる

 ・不死身

*死んでも何度も甦る不死の呪い

 ・毒武器

*毒を武器に変形して戦う

 ・回復魔法、強化魔法無効


【戦闘スタイル】

 猛毒に体を蝕まれた不死身の能力。

 解毒も効かない、毒として生きる。



「ジャルス、この人に何をした!!」


 見たことないスキルと俺と同様の手の施しようがない酷い説明文に俺はジャルスを睨む。


「ん? 別にスキル薬を飲ませただけだよ」


 怖いなぁ、と小声で言われながらニヤリと不適な笑み。


「嘘つけ。そんなことでこんな馬鹿げたスキル得られるか!!」


 同じ境遇の人物がいるとは思わず、俺は男の代わりにジャルスに詰め寄る。


「なんだい、キミまで……煩いね。折角、怪我したときの話を聞きたかったのに気が散った。ボクは悪くないよ」


 スキル薬は此処でしか買えない。作るのも売るのもジャルスの勝手だ。


「お前、人を弄んでるだろ」


 俺の言葉に眉をピクッと動かすと「ボク、ダークエルフだよ? それが何か悪いのさ」と悪気がない、反省のない言葉に溜め息が漏れる。

 話しても無駄だ、そう思ったオレは「話す気失せた」とジャルスに舌打ち。男に歩みより「行こう」と肩を押す。


 すると――「まいどあり」。


 ジャルスの笑いある声。

 初めからこれが狙いだったのだろう。


「彼の扱いには注意しなよ。その子、モノに触れると猛毒で溶かしちゃうから。ついでに、彼はかなり優秀らしいよ。でも、捨てられちゃったんだってさ。かわいそうだね」


 アハハハハッと笑う声にドアを俺は乱暴に閉める。


「はぁ……最低だなアイツ」


 肩を落とす俺の隣にポツンと立つ男。人馴れしていないのか、俺から数歩距離を取る。


「オマエ、強いのか」


 先程のジャルスの言葉が気になり話しかけると悲しそうな顔をし小さく頷く。続けて「ついさっき仲間、溶かしちゃって・・・・・・・。追放された」と予想外の言葉にあんぐりと口が開く。


「……と、溶かした。誰を?」


「あの、酒場の……その……」


「え、マジ?」


「うん。何人も溶かしてる」


「おぉ……そうか。それは大変だな」


 力がコントロール出来ない。コイツは一人にしてはダメだ、と悟った俺は「変な奴いるけど来るか?」とさりげなく男に声かけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る