⑰
「この糞がッ!!」
双剣の柄と柄を繋ぎ合わせ双刃刀に変形。踏まれないよう腹の下に滑り込み、後ろ足を斬り付ける。頭は簡単に切断できたが三つ分の頭部を支える体は強く頑丈で一筋縄では行かなかった。
「チッ」
痛みに吠え、四肢をジタバタと動かし踏まれそうになり前転。直ぐ様距離を詰めるも死角から尻尾が現れ、ガードしきれず――被弾。「ガハッ」と血を吐き、殴られたように全身に痛みが走る。双刃刀が手から放れ、乾いた音と共に血に落ちると俺は地面に勢い良く転がった。
「ブラッティ!!」
グランの声が遠くに聞こえる。
「ガーディアン!! ヒールガ、対象ガーディアン。ではなくて、ブラッティ」
緑色の回復の光が俺を包むも――俺の意識はそこで途絶えた。
*
「ガーディ――」
「ブ――」
ぼやける意識の中、名前を呼ばれ目を開けると見慣れたテントの中。グランは俺の腹に頭を乗せ泣きじゃくり、ディルは傷だらけの俺の腕に包帯を巻いていた。
「お目覚めのようですね。ケルベロスことケロちゃんは倒しましたよ。かなりギリギリでしたが、ガーディアンが傷つけた足のお陰で動きが鈍くなりましてね。グランくんの力技で二つ目の頭を切断。私が魔法でトドメをさしました」
「そう、か」
「はい、私達からしたら価値の高いケロちゃんの素材が回収できたことに感謝ですね。でも、ガーディアン。貴方の腕の骨が折れていたので治したのですが、しばらくは安静に」
腕、と力を入れるも両腕は持ち上がらず。マジかよ、と俺は天を仰ぐ。
「もう少し連携が整ったら夜の城塞をこなした方が宜しかったようで今回は申し訳ありませんでした。私がダウンした後、ご迷惑まで」
「別に……」
体を起こそうとするも激痛。泣きじゃくってたグランは疲れたのか知らぬまに俺の腹を枕に爆睡。いつもなら「邪魔だ」と怒鳴るがそんな気分ではなかった。
「前の体とは違い、扱いにくいものです。まずは体に慣れないと行けませんね。慣れたつもりではいたのですが、前みたいに無理して突っ込んだり、同じ戦い方はダメなようで」
「そりゃそうだろ」
「アハハッ貴方の腕が治ったら殴られそうだ」
「殴る前に蹴ってやる」
「お元気でなにより。でも、戦闘不能になって金貸しギルドに運ばれるよりはマシでしょう。あそこに運ばれたら治療費はバカ高いですし、わざと負債者から逃れられないように莫大な借金抱え込まされますからね。ある程度治療して『寝てるんです』と嘘ついてここまで運びましたので。もし、ギルドの方と顔合わせるときは普段と変わらないように接してください。バレたら面倒なんで」
「感謝する」
「いえいえ、お互い様ですよ。しかし、マリアさんにはバレてしまったので後で顔を出してあげてくださいね。裏口から回ったのですが、居ないと探していたようで事情を話してたら泣いてましたよ。女性を泣かせるのは好きではないのですが……」
ディルの言葉に俺は戦闘で言えなかった煽りをわざとらしく言う。
「おいおい、影から敵に迫って『フハハハハ』って殺してたのは誰だよ」
「私です」
「どっかの女どもを背後から襲って煩いからってドラゴンの肉食わせたのは誰だ」
「それも私です。でも、そのおかげで彼女はドラゴンブレスを取得しアナタ方はドラゴンキラーになった素敵ですね」
「嫌みかよ」
「アハハッまさか。もう夢物語ですが……懐かしいですね。あの煩い女性達の罵声や喧嘩を見られないのは寂しいです」
話が弾むも静まり静寂。しばらくしてディルも眠くなったか横になると「だからと言って私はアナタと出会えたこと。共に戦えたこと。それがなによりも嬉しいので……嫌では――」と言いかけるとスヤスヤと寝息が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます