⑫
テントに戻るとニマニマと笑うグランとディルに「お前らなぁ!!」と俺は足元に落ちてた朽ちた木材を拾い投げつける。
「どうどう、ブラッティ」
「馬じゃねぇ!! 糞グラン!! あと、そこの旧アサシン。お前体が変わったからってメロメロになってんじゃねーぞ。前なんて何一つ興味のない冷酷野郎だったろ。なのに――はぁぁぁ!?」
恥ずかしさからぶちギレる俺。
「ディルも悪気があってやったんじゃないだろうから。なっディル」
「そうですね。実に美人でした」
「なに仲良くなってんだ。オラァァァ!!」
いつの間にか仲良くなったのか肩組む姿に更に腹立たしくなり、双剣を引き抜きたくなる。しかし、仲間を斬り捨てるのは俺らしくないと踏み止まり大きく深呼吸。
「スゥ……はぁー。で、グランはディルの正体知ってんのか?」
「えっ、あー……聞いた。ブラッティの仲間だったって。しかも、体が入れ替わったってのも聞いた。なんか、うまく言えないけど……俺もしかしてヤバい?」
「は?」
「狙われたりしないかなって」
キョロキョロと不安そうに周囲を見渡す。
「そんなもん知らん顔してればいい。何か吹っ掛けられたら此方が対処する。だが、公に話すな。俺らだけの秘密にしてくれ」
「アーッん。分かった」
「言いふらしたら口縫うからな」
「こわっはいはい、分かったよ」
にへら、とグランは笑う。
「そだそだ、スキル薬なんだけど。魔窯屋のジャルスが面白がってさ。大サービスだって六十個もらったんだよね。マジックバックの容量オーバーで袋もらってきたんだけどさ。『中に貴重なの混ざってるからね』って邪悪な笑み浮かべてた。んで、一人三十個飲むってことで――」
楽しげに話すグランに割り込むように「へ? 私もですか?」とディルが自分を指差す。「あったり前だろ。新しい仲間の歓迎会を含めて――」の言葉に「酒場で火の付いた酒をバカみたいに飲む誰かさんみたいですね」とディルの視線に俺は顔を逸らす。
「黙ってろ」
「別に貴方のこと言ってるわけではありませんよ?」
「いや、俺だろ」
俺はディルを睨み、ディルは俺を見て微笑。
「えっナニナニ。何の話?」
グランがディルにソコッと聞く。
「えっとですね。ガーディアンが仲間の女性に酒飲みさせられて―――」
「うわぁぁぁっ言うな!!」
「え、オレ聞きたい」
「ダメだ!!」
「酔い潰れて負けたんですよ、女性に」
「ディィィィル!!」
わざと挑発か。喧嘩を売られているように感じ「吐くなら外で吐けよ」と俺は外に置いていた丸の椅子を蹴りながらテントの前へ。腰を下ろしベルトを緩め、さりげなく準備。その行動にディルは軽く肩を回し、グランは楽しそうに椅子に腰かけるスキル薬を均等に色が揃うように配り、「早く飲んだ人が勝者な」とグランはビンを一つ手に取る。
「あ、スキルの取得公開は飲み終わったらのお楽しみ。絶対紙見んなよ」
グランはそう言うや願うように「いいスキルが少しでも多く出ますように」と祈りポンッとコルクを抜く。
「じゃあ、カンパーイ」
と俺、グラン、ディルは軽くビンを開け、まずは一本飲み干す。体に力がみなぎる。だが、それは一瞬でいいスキルではない気がした。
「お先ー二本目」とグラン。
「美味ですね。では、二本目頂戴します」と丁寧に口を拭いながらディル。
「飲むのはえーよ。少し落とせ」
早飲みの辛さを知ってる俺はあえてチマチマ、チビチビと二本目からは遠慮気味に飲み。後、苦しむ二人を見て嗤った。
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