⑨
城塞にて。
「うぉぉぉぉっくたばれ!!」
グランは地を蹴り、大きく跳躍しては城塞に攻めてきたモンスターの頭に大剣の切っ先を勢い良く突き刺す。俺は双剣士のためマリアの兄はスピードを生かした戦術をしていたのをヒントに一撃の重いグランを援護する形で切り刻む。
「はぁぁぁっ……このゴミ虫が!!」
ドラゴン騒動でいつもよりも人の多い城塞。だが、皆の狙いはドラゴン。その他モンスターは眼中にない。城塞よりも稼ぎが良いのは【遠征】。遠い居場所に向かいモンスターを討伐するのだが、それよりも注目を浴びているのか上の中、上の下などのそれなりの腕のある輩が居た。
「なんで俺らが雑魚討伐なんだよ!! このッ」
今日も昆虫系のモンスターが多く双剣を振るうと足や頭が切断され飛び散る。周囲は緑色や紫と意味悪い血の色に染まり、全品に浴びた俺は拭い。目に血が入りながらも必死に殺す。
昆虫に紛れてスケルトン、オーグ、ラミア、ワーウルフなど昆虫よりも強いモンスターがおり、油断していたグランがぶっ飛ばされたのを見逃さなかった俺は倒れ、食われそうになっているグランとモンスターの間に割り込む。右手を盾にモンスターに噛み付かれるもグランに左手でグランに回復薬をぶっかける。
「うっ……」
「グラン!!」
俺は右手の鋭い痛みに耐え兼ね。モンスターに蹴りをかます。グランを呼ぶも「む、ムリ……」と腹部を押さえ、体を起こすも腹部には大きな爪痕と血が滴っていた。
「待ってろ」
珍しく俺は焦る。大切な仲間・友達が死ぬのではないかと思考が傾く恐怖に。さらに焦らすように風が吹くと血の匂いに誘われ集うモンスター。
斬っても斬っても処理が追い付かず、痛む右手がモンスターの固い部分に当たった瞬間――力が抜け剣が弾き飛ばされる。
「なっ」
――しくった――
そう死を悟った時、黒い影が目に見えぬ速さでモンスターを切り裂く。一瞬で残骸と化し、見覚えのあるスキルに俺は動きを止めると周囲を見渡す。
「大丈夫ですか? ガーディアン」
すると、背後に気配。昔懐かしい呼び方に俺は――「アサシン」と小さく呼び振り向くと口調にしては似合わない大柄で威圧あるの男の姿。その姿は俺が知ってるアサシンではなく――「ディルなのか?」と問いかけると薄く笑った。
*
「イテテテテッいてーよ!!」
金貸しギルドでディルの治療を受けるグラン。あまりの痛さに声を荒らげ「我慢してください。タマ付いてるでしょう」とディルが言う。しかし、騒がしいグランが好きではないのかわざと傷口に触れ、「イギャァァァ」と痛みでグランを気絶させると「ふぅ、これで静かですね」と安堵の溜め息。
前のアサシンの時は回復魔法なんて何一つ覚えてなかった。だが聞かなくても事情が理解できた俺は何も口にはせず「悪いな、騒がしい奴で」と一言。
「構いませんよ。たまたまスキル薬で回復系が豊富に得られまして今は職業固定せずやっている身ですから」
相変わらず見た目と口調が合わない。いや、前の少し中性的な声の印象が強いのだろう。頭が混乱しそうになる。声が低く、細身の体格がゴッツイ。盾役の暗黒騎士や斧使い、盾使いが似合いそうだが何か違う気もする。
「ディル、何があった」
「ここではお話しはできません。彼を回復させてから二人だけでお話ししたい。すみません、ガーディアン。私は無力です。彼女達を守れなかった」
その言葉にディルは黙ると「いい、責めるな。把握はしてる」と俺は視線を逸らす。
「ガーディアン、それが現在の私のスキルです。何かお力になればいいのですが」
【ステータス】
name:ディル
性別:男
身長:182
武器:ダガー、杖
体力:B
耐久:C
筋力:B
知性:A++
精神:A++
器用:A++
素早さ:A+
幸運:B
魅力:D
【スキル】
・知性力アップ(絶大)
・精神アップ(絶大)
・器用アップ(絶大)
・魔法広域化
・エリア回復魔法
・回復魔法
・素早さ強化
・詠唱短縮化
【戦闘スタイル】
支援回復系。
渡された紙を見ると想像していたよりも回復向けのステータスに俺は口が開く。だが、逆に言えば好都合だった。俺とグランは回復行動は基本しない。だが、ディルが居れば――。
「ディル、組むか?」
「はい、貴方がそういって下さるのなら。この命に変えても着いていきます」
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