第11話虹のディスク

ぼくとミカエル・ミスターRが睨みあっている様子を、闘技場内は何事かと人達がざわついていた。

『おのれ・・・、野望を妨害した代償は重いぞ!それを重い知るがいい!!』

すると空間が歪み、通信が悪いテレビみたいになり始めた。

『オールクリエイトアース!この世界よ、創造主たる我に全ての力を与えよ!』

ミスターRが黒いエネルギーに包まれ、それが全てを吸収する。まるでブラックホールみたいだ。

「うわぁ!吸い込まれる!!」

「踏ん張れ!踏ん張るんだ!!」

ミカエルがぼくの左手をつかみながら踏ん張った、闘技場の中の人たちも闘技場そのものもミスターRの中へと吸い込まれていく。そしてぼくとミカエルは真っ暗な空間の中に二人だけ取り残された。

『フハハハハハ、見たか!これが創造主Rの真の姿だ!!』

それはまるで地球の縮図のような球体の姿で、体に海と大陸を持っている。そして山は噴火し、海は波が常に立っている。

「これって・・・地球!?」

『違う、これは私が創造した『世界のワールドスター』だ。私はこの世界の創造主にして、絶対者であるぞ!それ故にお前たち二人では、絶対に倒せない!』

「これがきみの本当の姿なんだね・・・。だけどこの世界の創造主だからって、ぼくと若葉くんで君を倒す!」

「ミカエルの言うとおりだ!みんなを元に戻して、現実の世界に返せ!」

『ふん、このレインボー・クエストで脱落した者は、この世界の一部となり創造の糧となるのだ。お前が望もうと、もう元に戻ることはない。』

「そんな・・・」

「ミスターR、お前をここで止める!そして虹のディスクを二度と使わせない!」

『ふん、この私を巨大な地球儀だと思ったら大間違いだぞ!!』

すると突然、膨大な水量の水が飛び出してきた。

「若葉くん、ゴッドカリバーの電撃を使うんだ!」

「わかった!」

ぼくのゴッド・カリバーが電気を帯びて光だす、そしてぼくは水の中にゴッド・カリバーを入れた。水を通じて電撃がミスターRに直撃した。

「やったか!?」

しかし、ミスターRはまるで無傷だ。

『フハハハハ、大いなる世界である私を相手に、電撃など効かぬわ!さあ、次はこれだぞ!』

今度は大岩がいくつも雪崩れこんできた。

「岩雪崩れだ!どうしよう!?」

「ここはぼくに任せて!」

ミカエルは呪文を唱えた。

「天使の奇跡よ、岩の群れを導きたまえ」

すると奇妙なことに岩雪崩れが突然Uターンして、ミスターRのところへ向かった。

「すごいよミカエルくん!!」

そしてミスターRに岩雪崩れがすごい音を立てて直撃した、しかしミスターRはさっきと同じく無傷である。

『岩雪崩れを跳ね返すとは、さすがだな。しかし私には全ての攻撃が通用しない、なぜなら私はだから!』

ミスターRは高笑いしながら言った。

「これもダメなんて・・・、世界が相手ならぼくとミカエルくんでも勝てないよ・・」

「くっ、あきらめてはいけない・・・。最後まであきらめちゃだめだ!」

『愚かな・・・、である私に挑み続けるなど愚の極み。抵抗するだけ無駄だというのに・・・』

「まだまだ行くぞ!!」

ぼくはゴッド・カリバーを構えて、ミスターRに向かっていった。

「メガスラッシュ!」

『ハリケーン!』

巨大な刃は、ハリケーンに阻まれてしまった。そしてハリケーンはぼくとミカエルくんの体を吹き飛ばそうとする。

ぼくとミカエルくんは、踏ん張りが効かずに飛ばされてしまった。

『ハハハ、全てを手にした我には万策を持ってしても意味なし!何もかも通用しないのだ!!』

傲慢に高笑いをするミスターR、ぼくとミカエルくんは絶望に打ちのめされた・・・。

『さあ、それでもまだ我に挑むのか?それとも諦めて、虹の石盤の残りを差し出すか?さあ、どっちだぁ?』

「くっ・・・、もうダメなのか・・・!?」

「あきらめるな・・・、まだやれるはずだ」

『ふん、幻想みたいな希望にすがるのか。これは面倒なことになるな・・・』

ミスターRはため息まじりに言った。

『それはそうと、お前たちは今までクエストで死んだ者の末路が気になるのではないか?』

「・・・それがどうした・・・?」

『見せてやろう、我が力によって新たな存在となった、屍の姿を!!』

するとミスターRの前に底なしの黒い穴が空いた、そしてその穴からはキメラとおぼしきモンスターが現れた。

「召還魔法か・・・、これはキツいな」

「ねぇ、ミカエルくん!あれ見て!!」

ぼくはキメラの首もとに指を差した、するとそこには速水さんの顔があった。

「これは・・・!?」

『我はゲームの敗者を使って、世界を生み出すことができる。岩も木も雲も、そして新たな命などそんなことは造作もない。今回はお前たちと一緒に行動していた者の体を使って生み出した。さあ、お前たちにこのキメラを倒すことはできるかな?』

キメラはぼくとミカエルを見て唸り声をあげた。

「速水さんと戦うことになるなんて・・・」

「ミスターRめ、なんて最低なことをするんだ・・・!?」

「ねぇ、このキメラを速水さんに戻す方法ってないかな?」

「・・・・わからない」

ミカエルは首を捻って考えたが、いいアイデアが浮かばない。

『全く、本当にムダなことばかり考えるね。このキメラだって、お前が持つゴッド・カリバーだって、この私が生み出したものだよ。だから、私は無敵なのだ!』

「私が生み出したもの・・・」

ぼくの頭にいいアイデアがひらめいた、そしてミカエルくんに小声で説明した。

「このゴッド・カリバーを、ぼくたちで作りかえられないかな?ぼくたちのだけの、剣に。」

「ゴッド・カリバーを作りかえるか・・、一か八かやってみよう!だけど、そのためには時間を稼がないと・・・」

「わかった、ぼくに任せて!」

そしてぼくは、ゴッド・カリバーをミカエルに託して、ミスターRに立ち向かっていった。ミカエルくんはゴッド・カリバーに呪文と唱えて、新しい剣に作り変えようとしている。

「ウオオオーーッ!」

『ハハハ、この私に武器無しで挑むとは。甘く見るのも大概にしろ!キメラ、こいつをねじ伏せろ!』

ぼくは全力を持って魔法を使い、ミスターRに挑んでいった。しかしキメラに取り押さえられてしまった。

「ウギャーーッ!!」

「大丈夫か!?若葉くん?」

「うん・・・、大丈夫・・・」

あぶなかった・・・、とっさに防御の結界を張ったものの、速水さんでできたキメラは攻撃力が高い。

キメラに苦戦するぼくを見て、ミスターRは言った。

『私の攻撃を完全に防御することは不可能だ、結界でしのいでもいづれ力尽きるのはお前の方だ。それでも我に挑むか?』

「・・・立ち向かうさ、何度でも。」

『それは例えこのゲームを生み出し、世界を創造した私が相手でもということか?』

「そうだよ、ぼくはあきらめない!例えどんなことがあっても、つまずいてもくじけそうになっても、一歩ずつ目標や未来に向かって進むんだ!虹のディスクで簡単に願いを叶えてもらっているあんたにはわからないけど、それが人間の生き方なんじゃないか!!」

ぼくの話を一通り聞いたミスターRは、三十秒間黙り込むと口を開いた。

『私も昔は、君と同じことを口にしていた。みんなが喜ぶ素晴らしいゲームを作りたいと、そして長く遊んでもらえるゲームを。だけどみんなは飽きっぽい性格だ、すぐに次のゲーム次のゲームへと遊びの刺激を求める。ゲームを製作しても、遊んでもらえるのはせいぜい一年くらい。こんな現実に私の不満は高まっていた。そんな時にみつけたのが、虹の石盤だ。最初は本当に願いを叶えるのか半信半疑だったが、虹のディスクは本当に願いを叶えてくれた!私が開発したこのは、みんなが飽きることなく遊ぶ最高のゲームになった!!私はさらにこのゲームをよりよくするために、デスゲームの要素も取り入れてさらに刺激的にした!!全ては私の作るゲームのためだ!!』

これがミスターRの考えなのか・・・、自分がみんなを楽しませるために、このゲームを作ったことは確かにいいことだ。だけど、そのためにみんなを殺したりすることは、間違っている。容赦無きルールや駆け引きは、スリルがあって面白いこともある。だけど、ぼくはゲームを楽しんで遊びたい・・・。プレイヤーを利用して、成り立っていくゲームなんて間違っている!!

「ミスターR、君の考えはやっぱり間違っている。みんなを楽しませるゲームを作るなら、みんなの命を利用するのは止めるべきだ!」

『ふん・・・、所詮心はお子さまということか。いいだろう、この世界における最強の必殺技でとどめをさしてやろう。この世界において私は絶対、私に意見したり刃向かったりすることは許されないということを思い知らせてやる!』

するとミスターRが光り輝き、巨大なエネルギーが集まり始めた。

『キメラ!奴を取り押さえろ!』

キメラはぼくの体にのしかかった。

これは間違いなく、最強の必殺技だ。まともにくらうとぼくもミカエルくんもただではすまない。

「一体、どうしたらいいんだ・・・!」

するとミスターRの他にも光り輝くものがあった、しかもミスターR以上の輝きをはなっている。

「できたぞ、これがゴッド・カリバーを越えた剣、レジェンド・ジハートだ!」

やっとミカエルくんが剣を完成させた、しかしぼくはキメラに取り押さえられて動けない。

すると不思議なことが起きた、突然剣がひとりでに動きだし、ぼくを押さえつけていたキメラに攻撃してきたのだ。

「ええっ!?そんなのあり!?」

『一体これはなんだ・・・!?この剣には魂がこめられているとでもいうのか!?』

そして剣はぼくの手元にやってきた、まるでぼくを最初の所有者であることを認めているかのようだ。

『くっ、小賢しい!キメラ、早くそいつを殺せ!!』

キメラが真っ直ぐぼくに向かって突進してくる、ぼくは剣を振り上げてキメラを切った。

するとキメラの姿は、元の速水さんへと戻っていたのだ。これにはぼくもびっくりした。

「速水さん!!」

「・・・あれ?ここはどこだ?オレはたしか、クエストで・・・」

『そんなバカな!!キメラにしたはずなのに、どうして元に戻ったんだ!?一体、何が起こったんだ!?』

ミスターRは何が起きたのか戸惑っている。

ぼくも正直何が起きたのかわからない、だけどこの剣はこの状況を打開できる可能性が大いに期待できる!

「とにかく、どんな状況かわからないけど助けてくれてありがとな。」

速水さんはぼくとミカエルくんに頭を下げた。

「よし、それじゃあミスターRを倒すぞ!」

『ええい!いきがるのもいい加減にしろよ、直ぐに叩き潰してくれるわ!』

ミスターRが巨大な岩を発射した、ぼくは力強くレジェンド・ジハートを降った。その力強い一閃は、巨大な岩を一刀両断にしてミスターRにダメージを与えた。

『グワアアアアーーッ!!バカな・・・、この私がダメージを受けるなんて、ありえないぞ!!』

「すごいパワーだ・・・」

「すげえ、これがあればミスターRを倒せるぞ!」

『ぐっ、おのれーっ!こうなったら、目にもの見せてくれる!!』

するとミスターRは溜めていたエネルギーを一気に解放した。

『ジ・アースフォース!』

「ジ・ハート断界斬!」

二つの必殺技が激突した、しかしパワーはミスターRの方が上で、ぼくは必死に持ちこたえようとしたが押し負けてしまった。

「うわぁーーーっ!」

ぼくの体はすごい勢いで宙を舞い、地面に激突した。

「若葉くん!?」

「おい、若葉!しっかりしろ!?」

ミカエルくんと速水さんが呼びかけるも、ぼくは意識が薄れていき、そして気を失ってしまった。

『フハハハハハ、やはり我は世界である!世界には何人足りとも敵う訳がない、残る二人もすぐに世界の一部にしてくれよう。そうすれば、我の完全勝利だ!!』

「くそっ、本当にここまでか・・・」

「ちくしょーっ!こうなったら、せめてオレだけでも・・・!」

「待て、ぼくも行くよ!こうなったらぼくたちで、若葉くんの意志を受け継いで戦うんだ!」

「おうよ!オレもミスターRに利用された恩を仇で返さないと気が済まねぇ!」

『ふん、若葉が倒されたというのになおも行くか・・・。それなら若葉どうように潰してくれる!』

ミスターRがミカエルくんと速水さんを倒そうとしている・・・、このままでは二人とも倒されてしまう!!

でも、起き上がれる力がない・・・。こんなピンチの時に何もできないなんて・・・。

「誰か・・・、ぼくに・・・ちか・・ら・・を・・」

かすれた声で呟いた時だった、ぼくの体が光りだして二つの石盤が宙に浮き出した。

「なんだあれ・・・?」

「石盤に一体何が・・・!?」

するとミスターRからも謎の光が輝きだした。

『こ、これは・・・!何が起きている!?』

そしてミスターRから五つの石盤が飛び出した、まるで石盤同士が何かに引かれあっているかのようだ。

そして石盤は一枚ずつ合わさっていき、そしてレインボー・ディスクが完成した。

「これは・・・、レインボー・ディスク!」

『な、なぜレインボー・ディスクはひとりでに完成したのだ・・・?』

そしてレインボー・ディスクは、ぼくのところにやってきた。七色の光をその身に受けて、ぼくの体が再び動き出す。

「・・・あれ?何だか元気が出てくる、体の奥から何か力が溢れてくる!」

そしてその力は、ぼくを新しい姿へと導いた。

「こ・・・これは!!」

「かっけぇ・・・!」

ぼくの姿は、神々しい鎧を装着し、首もとには赤いマフラーみたいなものを巻き、ジェットエンジンのついた足で宙に浮く、サイボーグ戦士のような姿になっていた。

「我はクリエイトマグナム・WKだ。ミスターR、お前の愚行をここで終わらせる」

『ありえん・・・、レインボー・ディスクが若葉に手を貸した・・・いや、若葉が立ち上がりたいと願ったから力を貸したのか?ありえない、今までレインボー・ディスクの願いを叶えてきたのは私のはずだ!こんなこと、絶対に認めないぞ!!』

「ミスターR、お前の野望もここまでだ。全てを終わらせて、皆を救う!」

『黙れ!異物がぁっ!!』

ミスターRは怒り狂い、色んなモンスターや巨大兵器を召還した。

『これらは我が世界において、最強クラスに強い連中ばかりだ!一気に叩き潰してくれるわ!!』

モンスターや巨大な兵器たちが攻撃をしかけた。

「うわっ、ミスターRめ容赦ないな・・」

「さすがにやられるか・・・」

しかしぼくにはまるで痛くもかゆくもない攻撃だった。ぼくは右手を出して、術をしかける。

深層拘束術ディープバインド

すると全てのモンスターと巨大兵器が動かなくなった。

『なっ・・・ありえない!そのものたちの中には、バインド攻撃に耐性のあるものもいる。なのにそいつらまでもがうごけなくなるなんて・・・!』

『太陽の熱波サンフレアヒート

超高温の熱波がモンスターや巨大兵器たちにふきつけていく、そしてモンスターや巨大兵器は熱であっという間にどろどろに溶けてしまい、その液体になった無惨な姿を見せた。

『こんなにあっさりと倒されるなんて・!』

『終わりだ、ミスターR』

ぼくは巨大な剣を上にかかげた、剣にこめられた力が剣を美しく、そして勇気あふれるように輝きだす。

『やめろ、やめろ!そんな攻撃をするな、頼むこの通りだ!!もうみんなの命は奪わない、だから頼む!!』

ミスターRが急に怖れおののき命乞いをしてきた、この攻撃で倒されることをわかっているかのように。

しかしぼくはミスターRを許すつもりは一切ない、そして剣を振り下ろした。

真剣地球割しんけんちきゅうわり』

『グワアアアアーーーッ』

球体のミスターRの体が真っ二つになり、すさまじい断末魔と爆発音を出した。

それはミスターRの世界の終わりと、ぼくたちの勝利を意味するのだった。





























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