第10話石盤と五つの運命(2)
竜巻に守られながら、宙に浮くぼくたち。
竜巻の向こう側では魚が跳ねているけど、竜巻を乗り越えることはできない。
「このままいけば、三時間全員で耐えられることができるぞ。」
「ああ、いけるぜ!!」
ぼくたちは心のどこかで勝った気持ちでいた。
しかしその気持ちはすぐに消え去った・・、突然、竜巻の壁が何かに切り裂かれて、そして切られたところが広がり竜巻が消えた。
「そんな!竜巻が・・・!」
そして竜巻を切り裂いた者の正体が判明した。それは両腕の先に大鎌をつけた、まるでカマキリのような形の黒いものだった。
「な・・・、なんだありゃ!?」
「気味悪りぃ・・・」
ぼくたちがその異様な姿に震えるなか、Rは説明を始めた。
『ただいま現れたのは、デスサイス・キラーです。こいつはお前らの旗を切り刻みに来ました、こいつを倒してもいいけど、旗を守りきれるかな?』
Rの発言は明らかに挑発的だった。
「うわぁ、こいつおれたちのこと見ているよ!!」
「くっ・・・!?こんなものを用意していたなんて・・・!」
そしてデスサイス・キラーは、ぼくたちにめがけて攻撃をしかけた。二つの大きな鎌が空を裂き、旗をめがけて振り下ろされる。
「天使の結界!」
ミカエルが結界を張って、攻撃を防いだ。
「ありがとう、ミカエルくん!」
「だけど長く持たない、一番の方法はデスサイス・キラーを倒すことだ。」
確かにあいつさえいなくなればいいけど、下手に動くと旗を落としてしまうか、最悪旗を切られてしまう。
「だけど、旗を落とさずに戦うのは難しいぜ。一体どうするんだよ・・・?」
「みんな!ぼくのところに旗を集めて!」
ミカエルが呼びかけた。
「はぁ?一体、どうするんだよ?」
「いいから、早く!」
みんなは素早く旗をミカエルのところに集めた。
「天使の宝箱!」
すると集めた旗が宝箱の中に入った、そしてぼくの風がその宝箱を宙に浮かす。
「これで旗は地面に落ちない、みんなでデスサイス・キラーを倒すぞ!」
そしてみんなでデスサイス・キラーに向かって攻撃を始めた。
「天使の
「精霊の
「トリプルスラッシャー!」
「ハンマーストーン!」
ぼくたち四人の攻撃がデスサイス・キラーに命中した、しかしデスサイス・キラーはまだ倒れない。
「あいつピンピンしてるぜ・・・」
「やっぱり、簡単には倒れないか・・・」
そしてデスサイス・キラーの容赦無き鎌さばきが、みんなを襲った。
そして大悟さんが攻撃をよけきれず、お腹に傷を受けてしまった。
「グハッ・・・!!」
「大悟さん!!」
大悟さんが空中から落ち始めた、ぼくは慌てて大悟さんを抱きかかえる。
「わりぃ・・・、オレのせいで」
「いいよ、気にしないで。」
するとデスサイス・キラーが目前に迫っていた、鎌を振り上げその目は黒く冷徹に光っている。
「うりゃーーっ!」
デスサイス・キラーが振り下ろした鎌を、ぼくはゴッド・カリバーでブロックした。
そして一旦後ろに下がって、すぐにゴッド・カリバーを振り上げて突撃する。
「メガスラッシャー!」
強烈な剣がデスサイス・キラーを一刀両断した。そしてデスサイス・キラーは、真っ二つになったまま動かなくなった。
「やったー!!デスサイス・キラーを倒したぞ!!」
「さすがは若葉、やってくれると思っていたぜ!!」
みんなはぼくの勝利を称えてくれた。
「よし、これで後はのんびり耐えるだけだ。」
安心した気持ちでみんなに呼びかけると、大悟くんがいなくなっていた。
「あれ?大悟くん・・・!?」
ぼくは慌てて辺りを見回したが、大悟くんはいなくなっていた。
「大悟くん!!どこにいるの!?」
するとRの声が聞こえてきた。
『あー、説明の補足を忘れていました。デスサイスキラーに攻撃されると、その者は失格になります。』
「なんだよそれ!?」
「もっと早く言えよ!!」
ぼくたちはRを非難した。
『説明不足で大変申し訳ありませんでしたが、大悟くんの脱落は決定です。』
ぼくはガクッとうなだれつつも、なんとか気を取り直した。
それからは竜巻の風の中でなんとか耐え抜いて、始まってから三時間を耐え抜くことができた。
『終了〜!みなさん、大変お疲れ様でした。激しく揺れる地面と跳びはねる巨大な魚の水しぶきをしのいで、旗を守り抜いたのはこちらの三名です!』
生き残ったのはぼくとミカエルくんと坂城さんの三人、そして次のクエストが告げられる。
『次のクエストにいきましょう、それではこれより三人を閉じ込めます!』
突然、Rが変なことを言い出したかと思いきや、ぼくたち三人は本当に檻の中に閉じ込められてしまった。
「ちょっと、なんだこれ!?」
そしてまた闘技場内の地形が変わり、三人を閉じ込めた檻が宙に浮かんだ。そしてその檻の真下に、お湯がグラクラ煮えたぎっている巨大な鍋が現れた。
「なんだこれ!?」
『さあ、三人には脱出に挑戦してもらいますが、脱出できるのは二人までです。三人の中で誰を脱落させるか、話し合いをしてもらいます。脱落者が決まるまでの間、あなた方を閉じ込めた檻が少しずつ熱湯の入った鍋に向かって落ちていきます。もし脱落者を決められないと、檻に閉じ込められたまま鍋の中に沈められ、三人はまるで三匹のこぶたのオオカミのような末路を辿ることになります。』
「えーっ!?そんなのありかよ!?」
「・・・Rめ、何がなんでも落とすつもりだな。」
「どうしよう・・・」
考えても始まらない、ぼくはゴッド・カリバーを抜いて檻を破壊しようとした。
「待って!若葉くん!!」
ミカエルの声も聞かずにぼくは剣を振り下ろした、しかし檻は壊せなかった。
『無駄だよ、その檻はカギを開くことでしか脱出できないようになっている。』
「そんな・・・」
「それに下手に破壊したら、誰かが熱湯に落ちることになってしまう。」
『ミカエルの言うとおりだ、全員で助かる術は無い。』
ぼくはゴッド・カリバーをその場に落として絶望した、もう全員が助かるアイデアが思い浮かばない...。
「もういっそのこと、ぼくが脱落者として名乗り出て、ミカエルくんと坂城くんを助ける以外しかない・・・」
そう思ったとき、ミカエルがぼくに小さな声で言った。
「二人とも、ぼくにいい考えがある。上手く行くかは解らないけど、最後の賭けに出ようと思う」
「最後の賭け・・・?」
「君はぼくに石盤を託す、そして君を失格にする。」
「ぼくを失格にする・・・!?」
「それで上手くいくかもしれない、だからぼくに任せてくれ。」
ミカエルは真剣な顔で言った、ミカエルくんにはこの作戦は必ず上手くいくと信じている顔をしている。失格になるのはつらいけど、こうなったらミカエルくんの提案に賭けるしかない。
「わかった・・・、ミカエルくん。後は任せたよ」
「おい、二人で何話しているんだよ!?もう少しで鍋の中に落ちてしまうぞ!!」
坂城くんが言うと、ミカエルが冷静に言った。
「若葉くんが脱落者として名乗り出ることになった。」
「え・・・?いいのか?」
「うん、もうこうするしかないよ・・・」
「そうか、悪いな意気地無しで・・・。」
「いいよ、ぼくの分もがんばってね。」
そしてぼくはRに向かって言った。
「ぼくが脱落者だ、カギを渡してくれ!」
モニターの画面で見ていたRは顔をニヤニヤした。
『わかった、バイバイ若葉くん。』
そしてぼくの目の前が真っ暗になり、何も見えなくなってしまったのだった。
若葉が脱落して生き残った坂城とミカエル、二人はRから渡されたカギを使って檻から脱出することに成功した。
そして二人が脱出すると、檻を吊り上げていたロープが切れて、檻はお湯が煮えたぎる鍋の中へ勢いよく落ちた。
「あ・・・あぶなかった・・・!」
「ふぅ〜・・・」
『ミカエルくん、坂城さん。脱出成功おめでとうございます!次がいよいよ、最後のクエストです!』
いよいよ五つの運命も終盤を向かえた、闘技場内はミカエルと坂城のどちらが優勝するのかとても気になっていた。
『最後のクエストは・・・、ズバり!バトルです!!』
「バトルか・・・」
『なお、ここにいる二名が戦うのではなく、こいつと戦ってもらいます!』
そして目の前に現れたのは、大人の三倍はあろうかという大きさの巨大な鎧を装備した騎士だった。
「でけぇ・・・」
『このガーディアン騎士と二人で戦い、攻撃した回数や与えたダメージで得点を競います。ガーディアン騎士の弱点は、右ひざを五回攻撃されることです。弱点を攻撃されると倒され、ボーナスでポイントが二倍になります。プレイヤーの攻撃手段は、支給される武器のみとし魔法の使用は禁止です。』
そして坂城とミカエルの前にいろんな武器が用意された。
「えーっと・・・、おれはこれだ!」
坂城は槍を手に取った。
「私はこれです。」
ミカエルは剣を手に取った。
『それでは、両者前へ』
坂城とミカエルがガーディアン騎士の前に並んだ。
『それではクエストスタート!!』
ピストルの合図と一緒に、クエストが始まった。
ガーディアン騎士が相手の背丈くらいの長さの剣を振りかざして向かってくる。
「うわぁ!!」
「ほっ!ふっ!」
坂城は防戦一方、ミカエルは攻撃を避けながら、ガーディアン騎士の懐に入り込める隙を探している。
「くそっ、こちとら魔法使いでがんばってきたのに・・・!」
「体格の差があるだけじゃない、こいつは剣の使い方が上手い。弱点を攻撃するのは難しそうだ・・・」
坂城とミカエルがガーディアン騎士を相手に苦戦を強いられる中、ガーディアン騎士の目が光だした。
『さあ、ご飯の時間よ。』
とっさに目を隠したミカエル、しかし光を見た坂城に異変が起きた。
「母さん・・・?母さんなのか?」
『そうよ、さあいらっしゃい。』
優しく呼びかけるガーディアン騎士の声、坂城はゆっくりとガーディアン騎士に向かって歩いていく。
「これは、催眠術だ。かかったらやられてしまう・・・」
ガーディアン騎士は無表情な顔で坂城に呼びかけつつ、剣を振り上げ攻撃体制に入る。
「坂城くん、近づいたらダメだ!!」
大声で坂城に呼びかけるも反応無し、ミカエルは一か八か隠していた目を開けて、ダッシュで坂城を抱き抱えた。
カーーーン!
ガーディアン騎士の剣が振り下ろされるほんの数秒前だった・・・。ミカエルは坂城を救出することに成功した。
「イタタタ・・・」
「あれ・・・?おれは・・・って、ミカエルくん!?」
坂城は左肩を押さえるミカエルを見た、ミカエルは左肩をすりむいてしまったのだ。
「おれを助けようと・・・」
「今はそんなことを言うな、次が来るぞ!」
とたんにガーディアン騎士の容赦ない攻撃、二人は追い詰められていく。
このままではやられてしまうのは時間の問題、どうにかして弱点への攻撃を通さないといけない。
しかし名案を考える余裕はない、そうこうしているうちにガーディアン騎士のさらなる攻撃が来た。
突然飛び上がると、剣を地面の上に突き刺した。闘技場の中が地震のような揺れで震えだした。
「うわわぁ!!」
「ぐっ・・・、くっ!」
坂城は揺れに耐えられずに転んでしまった。
揺れが収まると、ガーディアン騎士がこちらに向かってきた。
「うわぁーっ、来た!!」
坂城は恐怖で頭を抱えて身を守り、ミカエルがガーディアン騎士の攻撃を受け止めた。
「はぁ、はぁ・・・!」
ミカエルは攻撃を受け止めてすぐ、ある考えが浮かんだ。
「あの強烈な揺れを起こす攻撃・・・、あの攻撃の後には必ず隙が生じる・・・!」
そしてガーディアン騎士が飛び上がった、ミカエルは上を見上げタイミングを見計らっている。
「3・2・1、今だ!」
ミカエルは自信の全ての力を持って飛び上がり、宙に浮くガーディアン・騎士の右ひざを攻撃した。
ガシャーン!!
ガーディアン騎士は弱点を攻撃されたことでバランスを崩し、そのまま落ちてしまった。
立ち上がろうとするガーディアン騎士を、ミカエルは容赦なく弱点を四回連続した。
「はぁ・・・はぁ・・・!」
そしてガーディアン騎士は、魂が抜けたみたいに動かなくなった。
「すげぇ・・!!一人で倒しちゃったよ」
何もできなかった坂城は、ミカエルの快進撃に感心した。
そしてRの声が聞こえてきた。
『ガーディアン騎士討伐成功、おめでとうございます。ではこれより『レインボー・クエスト』の優勝者について発表します。』
闘技場内が発表を待つ緊張感に包まれた。
『レインボー・クエストの優勝は・・・、ミカエルです!!』
会場内から大きな拍手が響き渡った。
『そして坂城さんはここで脱落です!』
坂城は音もなく消えてしまった・・・、ミカエルはすっかり慣れているのか動じない。
『またもやミカエルの優勝、これで六連覇達成です!!ミカエルさん、何か感想をお願いします。』
Rからマイクを渡されたミカエルは、突然気がおかしくなったかのように笑いだした。
『あ・・・あのー、一体どうしましたか?』
「ミスターR、お前の野望もここまでだ。虹のディスクは、二度と完成しない!」
『なっ、どういうことだ!?私の持っている五枚と、お前の持っている二枚の石盤を合わせれば完成するはず・・・』
Rは石盤を持つものを脱落させることで、自分が持つ石盤の数を増やした。
「残念、ぼくは一枚も石盤を持っていないんだ。」
『なんだと!?おい、残りの二枚はどうしたんだ!?』
「残りの二枚は、若葉くんが持っている。」
『若葉が・・・!?そんなバカな!アイツは脱落したはず・・・!』
「実は脱落したときに、石盤を一年前にタイムスリップさせたんだ。」
『なっ、一年前に戻しただと!!なんてことをしてくれたんだ!!お前、よくも私の邪魔をしてくれたな・・・!』
Rは拳を握りしめてミカエルをにらんだ。
「そして、ミスターR!!今ここでお前を倒す、彼と一緒に!」
するとミカエルは魔方陣を発動させた、魔方陣の中心に穴が空き、中から若葉くんが現れた。
『な・・・なんだと!?敗者復活なんて、あり得ない!!』
「実はぼくには天使の力があってね・・、その力を使えばたいていの自由が効くんだ。」
「すごい・・・、本当に戻ってきた!」
「さあ、ここからが勝負だ!ミスターR!」
『ぐぬぬ・・・、チーター風情がぁ!』
Rの口から怒りの歯がむき出しになった。
いよいよミスターRとの決戦が始まる・・。
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