第6話闘技場

盗賊たちをやっつけたぼくたち五人と松島さんたちは、古の地図を取り返すことができた。

「あんたらのおかげだ、ありがとう!」

松島さんはぼくに感謝の握手をした。

そして制限時間が終了し、ぼくたちはクエストをクリアした。そして謎の声がぼくたちに向かって言った。

「クエスト終了お疲れ様、古の地図を持っているプレイヤーはクエストクリアです。それでは古の地図を持っているプレイヤーは、古の地図を空にかかげてください。」

そしてぼくは古の地図を空にかかげた、すると地図に書かれていることが変わった。

『みなさんが持っている古の地図は闘技場への地図となりました、次のクエストでは闘技場にておこなわれます。闘技場でのバトルで、このゲームの優勝者が決定します。それでは皆様、次のクエストをお楽しみにしてください。』

「次はいよいよ闘技場か・・・」

「ゲームもいよいよ終盤を向かえたということだね。」

『ちなみに、今回のクエストで盗賊たちと戦い勝利する快挙を成し遂げた十三人に7000コインずつ、そして松島さんには紫の石盤を差し上げます。』

「あれ?ぼくには無いの?」

ぼくは謎の声にむかって言った。

『石盤は優勝者一人に一枚ずつと決まっています、あなたはすでに石盤を持っているのでもらえません。』

「えっ!?そうだったんだ・・・」

『それでは皆さん、また次のクエストでお会いしましょう。』

そしてなぞの声は去っていった。









数時間後、現実世界にもどってきたぼくと田中くんは、放課後の教室でゲームについて話していた。

「それにしても、あのゲームがRの欲望のためのものだったなんて・・。なんか気が落ち込むなあ・・・」

「うん、そうだね。ところで今まで石盤を持っている人って何人だっけ?」

「えっと、おれらを入れて四人かな。」

「ということは後三枚だな、残りの三枚をおれたちで手に入れて、Rの野望を止めてやろうぜ。」

「でも、Rって実際のところいい人なのか悪い人なのか、よくわからないよ。」

「えっ!?それは悪い奴だよ、あいつに捕まった矢田目さんたちは、まだ戻ってきていないし。」

矢田目さんがいなくなってすでに二週間が経過しているが、未だに矢田目さんは発見されていない。それに矢田目さんだけでなく、さらなるゲームの参加者が失踪しているとニュースで報じられている。その人たちは今ごろどうなっているのかわからない・・・。

「それはそうだね・・・、いくらゲームでもそれはひどいよ。」

「だろ?だからおれたちで、Rの野望を止めてやろうぜ」

「うん、そうだね」

ぼくたちは決意を決めて、こぶしを付き合わせた。

するとぼくと田中くんのところに、三人の男子がやってきた。

「なあ、二人ともレインボー・クエストのプレイヤーだって本当か?」

「えっ!?そうだけど・・・、なんで知っているの?」

「今、インターネットで話題になっているんだ。レインボー・クエストの優勝者トーナメント、これに優勝すればなんでも望みが叶うそうじゃないか。いやー、うらやましいな」

「優勝者トーナメント・・・」

ぼくと田中くんは同じ事を考え、いてもたってもいられなくなりパソコン室にむかって走り出した。

パソコンの電源を入れて、『レインボー・クエスト』と検索すると、なんとレインボー・クエストのホームページを発見した。

「レインボー・クエストのホームページだ・・」

ぼくはマウスを動かして、ホームページをクリックした。すると虹色が盛大に目立つ背景に、『レインボー・クエスト』の文字がカラフルなゴシック体の大きな文字が浮かんでいた。

「本当にホームページがあったなんて・・」

「もしかして、みんなもここで申し込みしているのかな?」

ホームページに書かれていたのは、これまでのクエストで起きた出来事をまとめたブログみたいな感じだった。

「あっ!おれたちが優勝した時の写真だ!」

「本当だ、よく撮れているな。」

ブログにはコメントできるようになっていて、ぼくたちの写真にはすでに百を越えるコメントが来ていた。

「みんな、これを見てぼくたちがプレイヤーだということを知ったみたいだね。」

「でも、ホームページがあるということは、それだけここから参加したプレイヤーが多いということだね。」

するとホームページのお知らせに、気になる書き込みを見つけた。

「レインボークエスト・エキストラ大募集、日当五万円初参加者大歓迎、身分証明不要で誰でもできる・・・」

「なぁ、これってエキストラ募集のお知らせだよな?」

「うん、なんか不穏な匂いがするよ・・・」

ぼくはこのホームページが、暗い闇への入り口みたいに見えた。









クエスト当日、ぼくたちは集合すると、戦友ドットコムに送られた闘技場までの地図を頼りに、闘技場を目指して歩きだした。

その道中、ぼくはミカエルにレインボー・クエストのホームページについて聞いてみた。

「ねぇ、昨日田中くんと一緒にレインボー・クエストのホームページを見たんだ。」

「あのホームページを見たのか?」

「うん、レインボー・クエストでのいろんな事が投稿されていたんだ。」

「お前も見たのか、あのホームページ?」

速水さんが話の間に入ってきた。

「えっ!?速水さんも見たのですか!?」

「ああ、というよりもおれと加藤はそのホームページを見て参加したんだよな。」

「うん、速水さんがぼくに紹介して、ぼくも参加することになったんだ。」

「うん、速水さんと加藤さんのようにこのレインボー・クエストの参加者は、ホームページからの申し込みが多いけど、君みたいにR自らが招待状を出して、そこで申し込むというのもある。ぼくの場合は君と同じだけど」

「じゃあ、ミカエルにもハガキが来たんだ。」

「うん、でもこのゲームはもう止めさせるべきだ。こんなプレイヤーを一方的に利用するゲームは・・・」

「そういえば、ホームページにエキストラ募集のところがあったよ。」

「エキストラ募集?」

「ああ、日当五万円で誰でも参加できるって書いてあった。」

「なんだって・・・、みんなには教えたのか!」

「ううん、言ってないよ。」

「なら、このクエストが終わったら必ずみんなに伝えてほしい。エキストラ募集には申し込むなって!」

ミカエルは切羽詰まったようすで言った。

「うん、わかったよ」

「でもどうしてみんなに教えないといけないの?」

「Rはエキストラとして集めた人たちを利用して、あらたなクエストを始めようとしている。利用されたら、二度と戻ってこられない・・・」

ミカエルが言うと、みんな身震いした表情になった。

そして歩き続けて十分後、ついに闘技場へ到着した。闘技場にはたくさんの人が集まっていて、その中に以前のクエストで戦友同盟を組んだ松島さんたちの姿があった。

「おーい、松島さん!」

「おお、若葉くん!久しぶりだな」

「そういえば、松島さんたちはどうしてこのゲームに参加したの?」

「ん?わしらは元々、みんなで色々遊んでおってな。ある日、わしのところに妙なハガキがとどいたんだ。そこでみんなと話し合って、参加してみようということに決めたんだ。」

「へぇ、そうなんだ」

「ハハハ、今回のクエストは若い者には負けないぞ!」

松島さんたちはとても張り切っていた。

そして闘技場に全員が集合すると、突然闘技場の回りから激しい音をたてて花火が上がり、そして空の上から七色の仮面をかぶった人が宙を舞いながら闘技場の中に着陸した。

『えーっ、みなさん!私がこのレインボー・クエストを主催したミスターRです!ここにいるみんなは、今までのクエストを乗り越えてきた真の勇者たちです。そして今、この勇者たちの中から石盤を全て集めたものが、真の勇者・マスターレインボーとなることができるのです!みなさん、マスターレインボーになりたいですかーっ!?』

Rが群衆に向かって問いかけると、『なりたーい!』と大声が帰ってきた。

『よし、それではまず現時点で石盤を持っている人を紹介しよう。まずは、若葉友歩くん!』

名前を呼ばれたぼくは、Rのところまで歩いていった。

『そして今までのクエストで五連覇を達成!果たして六連覇なるか、ミカエルさん!』

みんなはミカエルが歩き出すと、拍手がより盛大になった。

『そして五十・六十代のシニアチームのリーダーが参戦、果たしてダークホースとなるのか?松島さん!』

松島さんは照れながら、みんなの前に出た。

」そして最後は、仲良し三兄弟の出場!チームワークを見せてくれるのか?坂城達至さん!』

最後に出てきたのは、ぼくより一つ上の子どもだった。

これで石盤を持っている四人が出揃った、そしてRは残っているみんなに言った。

『えーっ、以上四名がそろったところで、重要なお知らせがあります。ただいまを持ちまして、今ある戦友同盟を全て無効とさせていただきます!』

みんなは突然の宣告に動揺し、「どういうことだ!」とRに言った。

『ここからはチームではなく、個人同士の仁義なき戦いです!残り三つの石盤をかけて、今呼んだ四人を除くプレイヤーたちで戦ってもらいます!そして残った四人が、このバトル・ロワイアルの勝者となります。それでは勝負の内容を発表します・・・バトル・ロワイアルだ!』

バトル・ロワイアル・・・、自分自身以外の全員が敵という生き残りをかけた戦いだ。

「バトル・ロワイアル・・・」

「ふぅ・・・やるしかないか」

「石盤を手に入れて、若葉と同じところに立つのはおれだ!」

みんな意気揚々に戦意を上げている、そしてRは右手を上にかかげた。

「それでは、バトル・ロワイアル・・・レディー・ファイッ!!」

Rが指を弾くのと一緒にゴングの音が闘技場に響いた。

「うおおーっ!」

「負けるかーっ!」

「一番になるのはオレだー!」

そして生き残りをかけた白熱の戦いが、激しい音をたてて燃え上がったのだった。












「くそっ・・・、強いなコイツ!」

おれ・田中はバトル・ロワイアルで強敵と戦っていた・・・。

「おれは生き残りたい・・・、生き残らなくちゃならないんだ!」

おれはとにかく矢を放って相手を攻撃した、矢が額に当たれば相手を倒せるが、それは相手も同じことで、自分の額も相手から狙われる。

「うおっ!!あぶなー・・・」

相手も攻撃の手をゆるめない、とにかく自分も負けじと攻撃する。

「ウリャーーッ!」

その時、背後から声が聞こえた。とっさに横にかわして、振り向いた先にいたのは速水さんだった。

「おお!やるじゃないか、田中!」

「速水さん・・・、あんたには負けませんよ!」

オレはとっさに弓を構えた、しかし速水さんは速攻でオレに近づいてきた。

「ウリャーーッ!」

速水さんが振り上げた剣は、おれの体に深い傷をつけた。

「ウギャァーーー!」

おれは弓と矢を落として、地面に倒れた。

「くっそ・・・、おれは、負けられない・・んだ・・・!」

口から言葉は出るが、体が思うように動かない。やべぇ・・・、完全にやられてしまったようだ。

速水さんがオレのところに近づいてきた、オレは速水さんに向かって言った。

「速水さん・・・、絶対に生き残ってくれ。オレの分まで若葉を・・・」

「ああ、わかった」

そしてオレの体は消えてしまった、若葉と一緒に戦えなかったことが心残りだ。









「これで十一人目・・・」

ぼく・加藤は必死に敵を一人ずつ倒していった。とにかく、生き残るためには敵を倒しながら時に相手同士を戦わせたりと、上手く立ち回ることが必要だ。

「おらぁー、次はどいつだぁ!」

「かかってこいやー!」

誰ともわからない声があちらこちらから聞こえる・・・、ぼくはそれを聞き流して闘いに集中する。

「魔法使いっ!覚悟ーっ!」

右斜めから斧を振りかざれた、とっさに結界を張ったが結界はすぐに壊されてしまった。

「ぐがぁ・・・!」

想定外だ・・、おそらくぼくよりレベルが高いか、あの斧に結界を無効化する効果があったのだろう・・・。

「フハハッ!そんな結界なんて、無駄なんだよ!」

男は不敵に高笑いをした、でもここでまけられない・・・!

「それなら、もう出し惜しみは無しだね。」

「はぁ?お前に何ができるというんだ?」

ぼくは杖を上に掲げると、呪文を唱えだした。

「マインスター・ヘイスト!」

自分の力が魔力によって最大値まで上昇した、さらにこの呪文を唱えることで発動できる攻撃魔法がある。

「オーバー・フォースブラスト!」

杖から極太の光線が放たれ、相手に当たった。相手はボロボロになり、体から煙を出して倒れた。

「なんだ、ありゃ・・・」

「とんでもねぇ、攻撃だ・・・」

みんなはぼくの姿を見て息を飲んだ、ここまで強くなるためにぼくは速水くんと一緒にいっぱい強くなるトレーニングしたんだ。人並みに負けないほどの力がある!

そしてぼくはこの力をフルに使い、目の前の相手を次々と倒していった。







バトル・ロワイアルもいよいよ大詰め、最後に残ったのは五人だ。

つまり誰か一人が倒れたら、生き残った四人が次のステージへと進むことができる。

『さぁ、バトル・ロワイアルもいよいよ大一番!最後まで生き残れる四人は誰なのか!?』

Rの掛け声がコロシアム内に響いている、生き残った五人は誰がどうでるのか様子をうかがっていた。

そしてその五人の中に、速水と加藤の姿があった。

「加藤・・・まさか、お前が残るとはなあ」

「それはこっちも同じですよ、速水さん」

そして互いににらみあった五人は、ついに激突した。互いが倒す相手を狙って攻撃しはじめた。

「加藤!ここでお前を倒してやる!」

「速水さん、あなたはここで終わりです!」

速水の検と加藤の魔術が激突した、互いに凄まじくぶつかり合いながら、技の応酬が始まった。

「マグマの礫!」

加藤が放った灼熱の塊が、速水にむかって降り注いだ。

「あんなの使うとか、やるな速水!」

速水は剣で防ごうとしたが、二発ほどもろに食らってしまった。

「あんなのみせられちゃ、おれだって負けられないぜ!」

そして速水は剣を構え直して、大きく振り上げた。

「っ・・!攻撃がくる!」

「グラディウス・ブラルヴィース!」

剣から放たれた巨大な刃が、加藤向かっておそいかかる。加藤は結界を張って防ごうとした。

「ぐっ・・・、すごい攻撃だ!」

結界でも防ぎきれないこの攻撃、そして消えた刃の衝撃があたりに響きわたる。

「やるな、加藤!もういっぺん行ってみようか!!」

速水は再度剣を振り上げた、次にこの攻撃を受けたらもう立てないかもしれない。

「どうする・・・避けるしか・・・いや待てよ!」

加藤の脳裏にある作戦が思い浮かんだ、そして加藤は杖を上にかかげて魔法を唱えた。

「オーバー・フォースブラスト!」

「グラディウス・ブラルヴィス!」

必殺技同士の激突、勝負は引き分けに終わった。

「ぐぅ・・・っ!なんて力だ!」

衝撃波のせいで少し動けない速水、そこに加藤が至近距離で迫ってきた。

その瞬間、加藤は勝利を確信した。

「オーバー・フォース・・・」

と加藤が魔法を唱えかけたとき、加藤の腹を速水の剣が貫いた。

「悪いな加藤、オレも負けてはいられないからな。」

「・・・負けました、速水さん・・・」

そして加藤の姿がすぅと消えた、そして様々な想いを含んだバトル・ロワイアルが終わった。

























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