第7話闘技場(2)

こうして次のステージへ進む四人が決定した。

『生き残った四人の皆様、おめでとうございます!それでは三十分休憩の後、次のステージへと進みます。』

Rの案内が終わると、速水さんはふぅと息をついて座りこんだ。そこへ若葉とミカエルがやってきた。

「速水さん、ステージ進出おめでとう」

「ありがとう、ここまでこれるか正直わからなかったが、進出できて嬉しいよ。」

「田中くんと加藤さん、残念だったね・・」

若葉が落ち込みながら言うと、速水は申し訳なさそうな表情になった。

「そうだな・・・、二人を倒したのはおれだ。」

「速水さんが・・・!?」

「本当はあいつらと次のステージに立ちたかったが、バトル・ロワイアルだからしょうがない。戦っているときは何も感じなかったけど、今になって思えば辛いことだな・・」

速水さんは染々と言った、ぼくも速水さんと同じ気持ちだ。

ぼくがここまでこられたのは、一緒に協力してくれた田中くんと速水さんと加藤さん、そしてミカエルくんなどの大勢の人たちと頑張ってきたからこそだ。それがバトル・ロワイアルで違えることになったのは、本当に心の底から辛いことだ。

「まあ、これからはあいつらの分もがんばって行くしかない!それが生き残ったものがやることだ。」

「うん、そうだね!」

ぼくと速水さんは拳を合わせた。

そして休憩時間が終わった後、Rから次のクエストについて発表があった。

「次のクエストは、『ミッション・バトル』です。四人はこれからお題の通りにバトルを行い、獲得したポイントで競います。獲得したポイントが一番高い人に、石盤を一つ与えます。ミッション・バトルは計三回行います。」

つまりこのクエストで、最下位になった一人が脱落するということだ。

『それでは最初のミッション・バトルと行きましょう!クエスト名は「コインorDEAD」です!』

すると闘技場内に砲台をとりつけた機械が七台、音をたてて入ってきた。

そしてRからぼくたちに麻袋が配られた。

『これは全自動式追尾砲台オートストーカーキャノンです、標的を自動的に追尾しながら、砲撃します。君たちにはこの砲撃を回避しながら、闘技場内に落ちている金貨を広い集めてもらいます。全自動移動式砲台おーとストーカーキャノンは、最初二台ある状態で始まり、十分後にプラス二台、二十分後にはプラス三台となります!砲撃に当たっても失格にはなりませんが大ダメージを受けて最悪死んでしまうことがあります。なお、コインが二百枚貯まったら新しい袋と自動的に交換いたします。一番多く金貨を拾い集めた石盤の未所持者には黄色の石盤をプレゼントします!』

「砲撃を避けながら、金貨を拾い集めるのか・・・」

「つーか、当たったら死ぬかもって、完全にデスゲームじゃん・・・。」

ぼくたちをふくむ参加者たちは、クエストの内容にどよめいた。

「あの、魔法で全自動式追尾砲台オートストーカーキャノンを破壊するのはアリですか?」

ミカエルがRに質問した。

『いいえ、その場合は強制的に失格となります。』

「そうか・・・」

つまり砲撃を避け続けながら、より多くコインを集めるというクエストだ。

二台の砲台がセットされた。ぼくたちに向けられたその姿は、こちらを睨む獣のように見える。

「それでは、位置について・・・・よーい、スタート!」

Rの合図と同時に、闘技場内の地面が金色に輝いた。無数の金貨が現れたのだ。

「ウォーッ!」

ぼくたちは一斉にコインを拾いに行く、砲台が早速ぼくたちに標準を合わせて、砲撃した。

「来るぞ!下がれ!」

ぼくはミカエルの合図のおかげで、砲撃を避けることができた。

「ふーっ、よかった・・・」

「とにかく、コインを集めながら避けるんだ!」

ぼくは砲台の様子をうかがいながら、落ちているコインを集め続けた。二重に集中しなければならず、かなり気をつかうクエストだった。

「もう、かなり大変だなあ・・・」

「若葉くん!来るぞ!」

コインに集中すると、砲撃がよけられなくなり。砲撃を意識すると、コインが中々集まらない。

「もっと集めたいのに・・・、砲撃が気になる・・・」

一体、この状況はどうしたら解決できるというのか・・・?

そういえば、ミカエルはそんなことを気にすることなくコインを集めている。

「ミカエルくん、どうして砲撃が気にならないの?」

「・・・パターンがある」

「え?パターン・・・?」

ぼくは改めて全自動式追尾砲台オートストーカーキャノンを見た。砲台はぼくたちのうちの誰かを狙っているが、砲撃した砲台は次の砲撃まで一分ほど時間がかかるようだ。

「ミカエルはそのパターンを見切っている、だから落ちついてコインを拾えるんだ」

ぼくは二台の砲台を観察した、二つの砲台が狙いを定めて砲撃した。

「よし・・・、今だ!」

ぼくは急いで落ちているコインを拾い始めた。そしてタイミングを見て、砲撃をよけることができた。

「やった・・・!ぼくにもできた!」

そしてぼくはコインを拾い続けた、すると十分経っていたので全自動式追尾砲台が二台増えた。

「うわぁ、砲台が増えた!」

「ここから、もっと難しくなるぞ。」

ぼくは砲台が発射するタイミングを見計らいながら、コインを次々と集めていった。

するとここでRからのお知らせが入った。

『ここで、みなさんにボーナスのお知らせがあります。ただいまより黄金のヤシの実が追加されます。黄金のヤシの実は、金貨1000枚ぶんのポイントとなります!一個だけの早い者勝ちなので、みなさんぜひ手に入れてください!』

「なんだって!?」

「高得点のチャンスだ!」

みんなは闘技場内に置かれた黄金のヤシの実めがけてとびついた。

「よし、ぼくも!!」

「あっ、危ない!」

すると黄金のヤシの実に向かって走り出したみんなが、砲撃を食らった。

「うわーっ!!」

そして煙の中から速水さんが必死に走ってきた、他のみんなもヨロヨロになりながら走り出した。

「ふーっ、あぶなかった・・・。あやうく死ぬところだったぜ」

「おそらく、黄金のヤシの実に来た人達を一気にやっつけようとしたんだ。全く、Rのやることと来たら・・・」

「でも、あのヤシの実は取りたいよ。一体どうしたらいいんだろう・・・?」

ぼくは考えた・・・、あの砲台をかいくぐって黄金のヤシの実を手に入れるには・・・?

「この剣があれば砲台を壊せるけど、それはルール上できないし・・・ん!?」

ぼくの頭の中であるアイデアが浮かんだ。

「そうだ!いいこと考えた!」

そしてぼくは砲台の近くへ走り出した。

「一体どうしたんだよ、若葉くん!」

「あの砲撃を利用してやるんだ!」

そしてぼくは砲台の近くについた、別の砲台がぼくに狙いを定める。

「・・・今だ!」

ぼくはすぐにダッシュした、狙いを定めていた砲台は、ぼくが近くにいた砲台めがけて発射した。

「ドカーーン!!」

そして砲台は跡形もなく壊れてしまった。

「まさか・・・、最初から自滅を狙って。すごいな・・・」

「これならルール違反にならなく、砲台を破壊することができる!」

そしてぼくはもう一つの砲台も、さっきと同じパターンで破壊した。

これで砲台は二台に減った、そしてぼくは大急ぎで黄金のヤシの実を取りに向かった。

「おっと、若葉だけ抜け駆けはさせないぜ!」

速水さんが飛び出した、ぼくも負けじと走って取りに行く。

しかし、黄金のヤシの実を取ったのはミカエルだった。

「ああっ・・・、取られてしまった」

「あいつ、いつの間に・・・」

「ふぅ、あぶないところだった・・・」

せっかく高得点のチャンスだったのに・・。

ぼくは仕方なく闘技場内に落ちた金貨を拾い続けた。










クエストが始まってから二十分後、三台の砲台が追加された。

いよいよ大詰め、ここでより多く金貨を集めたい。

「いよいよ本番だね・・・」

「砲台は増えたけど、絶対にコインを集めてやる!」

するとここでRからのお知らせが入った。

『えー、先ほど全自動追尾砲台オートストーカーキャノンの攻撃が別の全自動追尾砲台オートストーカーキャノンに当たるという事故が発生しました。よってこれからの全自動追尾砲台オートストーカーキャノンの操作は、私がすることになりました。みなさん、最後までコインを集め続けてください!』

「えーっ!そんなの無いよ!」

「Rのやつ・・・、対策してきたな」

全自動追尾砲台オートストーカーキャノンが全てRの操縦なったということは、自滅作戦がもう通用しないということだ。 さらに全自動追尾砲台の攻撃パターンも新しくなり、砲撃を避けることも難しくなる。現在闘技場内に出ている全自動追尾砲台オートストーカーキャノンの数は五台、この状況はぼくたちにとって最悪だ。

「・・・ッ!一体どうしたらいいんだ」

しかしぼくにそんなことを考えている余裕はなく、五台の砲台が一斉にぼくたちに向かって火を吹いた。

「とにかく、もうこうなったら何がなんでもコインを集めながら砲撃を避けるしかない!」

ぼくはすぐに落ちているコインを集めた、しかしコインを集めることに夢中になり、次の砲撃が来ることをすっかり忘れていた。

「あぶない、若葉くん!」

ミカエルの声が聞こえたときはすでにおそかった、ぼくの体にものすごい爆裂音とものすごい衝撃が走った。ぼくの体は風に舞う紙のように舞い上がり、そして地面に叩きつけられてしまった。

「ヴグッ・・・!」

大きなダメージを受け、ぼくの体は動かなくなってしまった・・・。ぼくはここまでなのか・・・。

「若葉!しっかりしろ、若葉!」

「大丈夫か!若葉くん!!」

速水さんとミカエルくんの声が聞こえる、でも起き上がりたいけど起き上がれない。

「若葉くん!今、ぼくがなんとかしてあげるから!」

ミカエルくんの声が聞こえる・・・、意識が薄れたぼくは、もう誰が誰だか認識できないくらいに目の前が暗くなりかけていた。

その時、突然暗くなりかけた目の前が明るくなり、動かなくなった体が動き始めた、まるで新しい電池を入れてもらったオモチャのように。

「あれ?なんか体が動くぞ・・・!」

「ふぅ、もとに戻ってよかった・・・」

ミカエルくんが安心した様子で言った、もしかしてミカエルくんがぼくを回復させてくれたのか・・・?

「ありがとう、ミカエルくん!助かったよ」

「もう仲間なんだから、お礼なんていらないよ。起き上がったら、急いで走って」

ミカエルくんは照れてそっぽを向きながら言った。

「それにしても、こいつらどうしたらいいんだ?Rが完全に操縦することになった以上、もう小細工は通用しないぜ。」

一体どうすれば・・・とぼくが思っていた時、誰かが落とした盾が目に付いた。

そしてぼくは、速水さんとミカエルくんに言った。

「また、何か考えがあるのかい?」

「それはどんな方法なんだ?」

ぼくは速水さんとミカエルに作戦を小さな声で説明した。

「なっ・・・なんだって!?あれを使うのか?」

「おいっ!?そんなので、本当に解決するのか?」

「うん、でもこの方法ならRも簡単には手出しできないはずだよ!」

「わかった、お前を信じるよ。」

「よし、わかった!」

ミカエルくんとぼくは持っていた石盤を速水さんの持っていた盾にとりつけた。

そしてぼくはその盾を持って砲台の前に立った。

「さあ、撃てるものなら撃ってみろ!!」

「おい、あいつ砲台の前に立っているぞ!」

「おかしくなったのか!?あのままだじゃ、あいつ死ぬぞ!!」

みんなは砲台の前に立つぼくを見て驚いた、そしてRも驚いた。

『ちょっと!なんだそれは!?石盤を取り付けた盾なんて・・・、反則だろ!?』

「そんなルールはありません!それにRだって自動操縦から、急に自分で操縦を始めたじゃないか!」

『ぐっ・・・ぬぬぬ』

Rは悔しそうに歯ぎしりした。

「おお、砲台が発射できていないぞ!」

「今がチャンスだ!」

みんなはせっせとコインを拾い始めた、砲台がみんなの方を向くと、ぼくはとっさに砲台の前に立ちはだかった。

『なっ・・・、ちょこまかと・・・!』

「どうだ!ぼくたちだって、あなたには負けないぞ!!」

「いいぞ!若葉くん!」

みんなの歓声と砲台を向けられたプレッシャーを感じながらも、ぼくは盾を構えながらコインを集めた。そしてRは石盤を破壊してしまうことを怖れて、砲台でぼくたちを攻撃することはできない。

そしてついにタイムアップとなった。

『はい、これにてクエスト終了!みなさま、大変お疲れさまでした。それではこれより結果発表のため集計を行います。しばらくの間お待ち下さい。』

ぼくはふぅー・・・とその場に座りこんだ。

「お疲れ、若葉くん」

「ありがとう、ミカエルくん。」

「それにしても、まさか石盤を盾にして砲撃を防ぐなんて思いつかなかったなぁ。Rのやつ、今頃お前にヒヤヒヤしているんじゃないか?」

「あはは、確かにそうだね。」

そして数分後、Rから結果発表が告げられた。

「それではこれより、コインorDEADの結果発表を行います。コインを一番多く集めたのは・・・・、ミカエルさん・2505枚です!」

会場から「おお〜」と拍手の声があがった、ぼくを庇いながらここまでコインを集めたのはさすがだ・・・。

「そして第二位は、大悟さん・1948枚!彼は石盤を未所持なので、黄色の石盤を差し上げます!」

「よっしゃー!ありがとうございます!」

大悟は嬉しそうに石盤を受け取った。

そして結果発表は最後まで行われて、ぼくは第四位だった。

「それでは次のクエストまでみなさんお待ち下さい、お弁当の支給を行いますので食べながら待っていてください。」

それからぼくたちは、支給されたお弁当を食べて次のクエストを待った。






『まさか、ここまでやるとは思わなかったよ若葉くん・・・!』

クエストの進行を一時中断したRは、悔しそうに呟いた。

Rは元々このクエストで、誰か死者を出すつもりでいた。そうすれば、敗者復活戦を行うことができたはずなのに・・・。

『私はゲームを通して虹のディスクを完成させつつ、参加者たちがクエストに挑みながら必死になるする姿を見て楽しみたいのに、あの若葉ってやつめ・・・、虹の石盤を盾に楽々と・・・!』

Rは自分の思い通りに反することをする人が許せなかった、だから自分にだけ与えられたこの力を使ってそういう人たちを消してきた。

『若葉友歩、お前だけは絶対に消してやるぞ・・!さて、一体どうしようか・・?』

Rは次のクエストの企画を見た。

『若葉友歩が下らないことをできないようなルールにしないと・・・、石盤を持っているだけあって下手に手が出せないんだよなぁ・・・』

するとRの脳裏にあるアイデアが浮かんだ。

『そうだ!向こうも石盤がやすやすと使えなくすればいいんだ!こりゃ、いいことを思いついたぞ・・・』

Rはニヤニヤしながら、クエストのルールを変更した。
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る