第5話盗賊たちとクエストの闇

クエストをクリアしたぼくたちは、ミカエルにお礼を言おうとさがしていたら、ミカエルの方から来てくれた。

「あっ、ミカエル!さっきは本当にありがとう!」

「どういたしまして、さてお礼の話だけど」

「ちょっと待った、お前ミカエルになにしてもらったんだよ?」

速水さんがわって入ってきた。

「ああ、実はね魔法サファイアを手に入れるときにコインが足りなくて、その分をミカエルが出してくれたんだ。」

「そうだったのか・・・。でもどうして?」

「まあ、コインは腐るほど持っていたし、困っているプレイヤーがいたら、助けてあげてきたから」

「お前・・・、かなりいい奴だな」

「それで、お願いってなに?」

「お願いというのは、ぼくを君たちの戦友同盟に入れてほしいんだ。」

「えっ!?戦友同盟に入るの?」

「うん、一人よりもみんなでやった方がいろいろやりやすいことに気づいたんだ。いろいろ迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくね。」

ミカエルは今まで見せていない人懐っこい顔で言った、その可愛さにぼくたちはほんの少し見とれていた。

「ぼくたちでよければ歓迎だよ!」

「おお、これからよろしくな!」

「まあ、いろいろ疑って悪かったよ。これから仲良くしような!」

「ぼくもよろしく・・・」

ぼくたちはミカエルと一人ずつ握手した、そしてミカエルはぼくたちと戦友同盟を結んだ。

『まさか、ミカエルが戦友同盟に入るなんて思わなかったなぁ・・・。君の実力ならソロプレイヤーでも十分やっていけるのに・・』

「・・・たまにはみんなでやるのも悪くないよ」

「ねぇ、ミカエルはRと知り合いなの?」

『ミカエルはぼくのゲームで二連続チャンピオンになっているすごい人なんだよ、しかもソロで』

「えーっ!そんなすごいプレイヤーだったのーっ!」

『ふふふ、これは面白いことになりそうだな。次のクエストはもっと難しくなるから楽しみにしててね!』

そしてぼくたちは現実へと戻ってきた。







翌日、今日は学校が休みなのでぼくは戦友ドットコムで、みんなと次のクエストについて話していた。

「そういえば、矢田目さんは見つかったのか?」

「それがまだみたい・・・」

「そうか、どこかでひどい目にあっていないといいが・・・」

「残念だけど、それは保証できない。」

「は?どういうことだよミカエル・・・」

みんながミカエルに注目した、そしてミカエルは信じられないことを話した。

「Rからのペナルティを受けた者は、ゲームの一部として利用されてしまうんだ。例えば記憶を失ってモブキャラになったり、モンスターに変身させられたりね。」

「えっ・・・なにそれ・・・」

ぼくはビクッと震えた、つまりゲームの一部となり利用されてしまうのだ。

「お前、それをどこで知ったんだ?」

「ぼくがつきとめたんだ、そして君たちにこのレインボー・クエストの闇を教えてあげるよ。」

「レインボー・クエストの闇・・・」

真剣な顔のミカエルに、ぼくは息を飲んだ。そしてミカエルはこんな話をした。

「このレインボー・クエストには主催者であるRによる裏の目的がある、それは『虹のディスク』を完成させることなんだ。虹のディスクは七つの色の石盤をそろえた時に完成する。しかし石盤を集めるだけではなく、もう一つの条件がある。」

「その条件ってなに?」

「必ず七人で集めることなんだ」

「つまり、一人で全ての石盤をそろえても意味がないということか?」

「うん、だからRはゲームを開いて、虹の羅針盤を完成させようとしているんだ。」

「ちょっと待って、石盤は今までクエストで優勝すると手に入っていた。つまりRはぼくたち出場者に、石盤を集めさせている。おそらくRが事前に仕込んでいるはず、じゃあRはどうやって虹のディスクを手に入れたんだ?」

「そこまでは知らない、だけどこのレインボー・クエストそのものが虹のディスクを完成させるためのものだということを覚えておいて。」

ぼくたちは息を飲んだ、まさかそのゲームにそんな陰謀が隠されていたなんて・・・。

「じゃあ、虹のディスクを完成させるとどうなるんだよ?」

「虹のディスクを完成させると、自分の運命を好きなようにできるんだ。」

「それ、どういうこと?」

「例えばお金持ちになりたいといえば、自分のところにお金が勝手に来るようになり、モテたいといえば、恋人と多く出会えるようになる。」

「つまり今後の未来を思い通りにできるのか、まるで夢のようなアイテムだな。」

「つまりぼくたちは、Rの思い通りの未来のためにゲームをしているということ?」

「・・・なんか、つまんなくなってきた。」

「ああ、なんかやる気無くしたな。おれ、リタイアするわ」

田中くんと速水さんは、すっかりつまらなくなってしまったようだ。

「悪いけどそれはできない、前にリタイアを申し込んだプレイヤーやバックレたプレイヤーが行方不明になったんだ。これまでに何人もね。」

「ウソだろ・・・」

「マジかーっ、とんでもないものに足突っ込んでしまった・・・」

「とにかくぼくは最後までゲームをやって、Rを止める。君たちは巻き込まないけど、途中で抜けることがあることを理解してほしい。」

ミカエルはぼくたちに自分の真意を話した。

「ミカエルくん・・・、君がどんな気持ちでこのゲームに挑戦しているかわかった。けど、ぼくたちはただゲームを楽しんでいることをわかってほしい。もちろんきみには協力するけど、君の気持ちは君だけの胸に閉まってくれないか?」

「・・・わかった、重い話をしてごめんなさい。」

「いいよ、別に。もうミカエルが仲間だということに変わりはねぇよ。」

「うん、その通りです。」

「まぁ、でもゲームを楽しむことは忘れないでほしいな。」

ミカエルは「わかった、ありがとう」と静かに言った。







そしてクエストの日がやってきた、今回のクエストは前回のクエストクリアの報酬で手に入れた、古の地図を使うことになっている。

ぼくは古の地図を持って、田中くんたちと合流した。

「お待たせ!」

「おお、ついたか。」

全員が集合すると、待っていたかのように声が流れた。

『えーっ、全員集まったところでクエストが始まります!今回のクエストには、古の地図を使います。そして今回のクエストは「ピース・バンデッド」といって、このエリア内に放たれた盗賊からクエストの参加者は地図を守らなければなりません。もちろん、盗賊に取られてもまた取り返せばOK!そして制限時間内に、盗賊から五枚以上地図を守り抜けばクリアです。そして最後まで地図を持っていたプレイヤーには、闘技場コロシアムへの出場権が与えられます。それでは最後まで地図を守り抜いてください!』

「今回は盗賊から地図を守るのか・・・」

「おい、あれ!」

すると短刀や斧を持った目付きの悪い男たちが、目をギラギラ光らせニヤニヤした顔で見ている。

「おい、お前ら。古の地図を持っていたら、こっちに渡しな。」

「さもないと、痛い目に遭うぜ」

盗賊たちはゲラゲラ笑いながらぼくたちを脅した。

「盗賊だ!どうしよう!?」

「ふん、上等だ!追い払ってやる!」

「やっつけてやるよ!」

速水さんと田中くんが盗賊たちに立ち向かっていった。

するとミカエルが盗賊たちの前に立ちはだかった。

「なんだてめぇ?やるのか?」

「・・・消え失せろ」

突然ミカエルの目が緑に光輝いたかと思うと、突風が刃のようにするどくなって盗賊たちに襲いかかった。

「うわぁーっ!」

盗賊たちは悲鳴を上げながらあっという間に倒れた。

「す・・すごい」

「盗賊たちを一気に倒した・・・」

すごい・・・、これがミカエルの力。

「さあ、とっとと逃げよう。」

「うん、そうだね」

そしてぼくたちは古の地図を持ちながら走り続けた。








それからぼくたちは、盗賊に襲われながらもなんとか古の地図を守り抜いてきた。

「でも、動き続けるのは大変だ・・・。どこか身を隠せるところを探そうぜ。」

「でも、どこがいいかな?」

ぼくたちは街の中を見回しながらさがしていると、ある三人組がぼくたちに向かって叫んだ。

「おーい、こっちに来て!」

「ん?君たちはだれ?」

「ぼくたちは君たちと同じプレイヤーだよ、丁度いい隠れ家を見つけたから君たちも一緒に来てよ!」

「おお、隠れ家があるってよ!早く行こうぜ!」

田中くんがその人たちのところへ行こうとした。

「どうするみんな?」

「うーん、どうもあやしいなあ・・・。」

「ここは慎重に行こう、もしかしたらプレイヤーに変装した盗賊の可能性もある。」

ぼくはミカエルの言うとおり、慎重ながらも三人の後について行った。

三人の拠点だというエリアについた。

「ここだよ、ゆっくりしていってね・・・」

三人のうちの一人が歪な笑みを浮かべると、突然ぼくたちの周囲から、たくさんの人たちが現れた。

「うわぁ、なんだなんだ!」

「くそっ、やはり盗賊か!」

「ちっ、オレたちをはめやがったな!」

ミカエルと速水で、あっという間に取り囲んだ人たちを倒してしまった。

「ウソだろ・・・、こんなことになるなんて」

「どうするんだよ!これじゃあ失格どころか、エラい目にあうぞ!」

「もう、あれこれ考えないで逃げよう!」

うろたえた三人が逃げ出そうとした時、ぼくと田中くんで三人を攻撃して倒した。三人は気を失って倒れてしまった。

「おーい、起きろ!」

「もうほっとけよ、それにしても盗賊に待ち伏せされるとは・・・」

「こいつらは盗賊じゃない、プレイヤーだよ。」

「えっ!?どうしてわかるの?」

ミカエルは気絶した三人の内の一人のポケットから、戦士の名刺を取り出した。

「こいつらはおそらくみんなで他のプレイヤーから古の地図を手に入れようとしたんだ、おそらく自分たちのは先に盗賊に盗られてしまったんだろう。」

「そうか、制限時間内に古の地図を持っていないと失格になるからね。」

「動き回れば盗賊に追い回され、さらに他のプレイヤーにも助けを求められない。このクエスト、思いの外キツイぞ。」

速水さんが言うと、みんなの空気が重くなった。

「とにかく、ぼくたちはここにとどまって、制限時間がすぎるのを待とう。走り続けるよりは、その方がいいと思う。」

みんなはぼくの提案に頷いた、そしてこの場でみんなよりそって待つことにした。

「ふぅ・・・、それにしてもここで待つのか・・・。制限時間はまだ先だし、退屈だなあ・・・」

田中くんは背伸びをしながら地面に倒れた。

するとミカエルは真っ直ぐと視線の先を真剣な顔で見ていた。

「どうしたのミカエルくん?」

「ここにとどまることもできないみたいだ。」

「えっ・・・?」

そして次の瞬間、ミカエルの言葉の意味を知った。

「ヒヒヒ・・・」

「見つけたぞ、お前ら!」

道やあたりの茂みから盗賊たちがわらわらと現れた、最初に出会った時の十倍はいた。

「うわぁ・・・、盗賊たちだ!」

「しかもこんなに、さてはさっきの奴らが仲間を呼んだな・・・」

盗賊たちに完全に包囲されてしまった、ぼくたちはもう戦うしかない。

「おとなしく古の地図を渡しな、そしたら逃がしてやる。三つ数えるうちに決めな。ひとーつ・・・」

「どうしよう・・・」

「落ちつけ若葉、剣を持つんだ!」

「こうなったら、戦うしかねぇ!」

するとぼくはあることを思い付いた。

「ぼくにある考えがある」

そう言うとぼくは、盗賊の目の前に自ら立った。ぼくの足は盗賊たちへの恐怖でプルプルと震えていたけど、加藤さんの堂々とした表情がそれを隠した。

「古の地図を差し上げます・・・」

そしてぼくは、持っていた古の地図を盗賊たちに渡したのだ。

「ええっ!?ちょっと若葉!?」

「おお、物わかりがいいじゃないか」

「若葉!それは渡したらだめだ、俺に渡せ!」

ぼくたちのよびかけもむなしく、古の地図は盗賊たちの手に渡った。盗賊たちは古の地図を手に入れると大笑いしながら去っていった。

「若葉!!お前、なんてことしてくれたんだ!?古の地図が無いと、オレたち失格になるんだぞ!!」

速水さんが加藤さんに怒りながら詰め寄ると、ぼくは冷静に話した。

「どうせ逃げ続けても追われるのなら、盗賊をやっつけてやろうと考えたんだ。」

「盗賊たちをやっつける・・・?」

「さっき古の地図を渡したのは、そのためのエサだよ。ミカエルくんが盗賊たちを尾行している、その間にぼくたちで仲間を集めて盗賊たちに逆襲するんだ!」

「なるほど・・・、お前らはどう思う?」

速水さんは田中くんと加藤さんに言った。

「危険だけど盗賊たちはやっつけておいた方がいいと思う。でも今のままじゃ足りないから、仲間を増やそう」

「おう、そうだな。そっちの方が面白そうだ!」

そしてぼくたちはエイエイオーッと気合いを入れた。







ところがなかなか仲間は集まらなかった。

「危険すぎる」

「自分が持っている古の地図を盗られるかもしれない」

みんな、そんな理由で協力を拒んだ。

「なかなかいないな・・・。」

「やっぱり、ぼくたちだけで盗賊に立ち向かうしかないかな・・・」

するとぼくたちの姿をみた中年のおじさんたちが声をかけてきた。

「おーい、あんたらどうしたんだ?」

「実は盗賊たちをやっつけて古の地図を取り返そうとしているのですが、仲間が集まらずに困っているんだ。」

「おー、それならおれらも同じじゃ。一つ手を組まんか?」

「えっ!?いいのですか?」

「ああ、おれらも古の地図を盗賊に盗られてしまってな。取り返そうとしていたんだ。」

こうしてぼくたちは、戦友同盟を交わしてチームになった。






戦友同盟を交わした松島まつしまさんのグループは、五十から六十代を中心とした八人の男チームだった。ミカエルから盗賊たちの拠点が見つかったと報告を受け、ぼくたちはそこへ向かった。

「ここが盗賊たちの拠点・・・」

そこは小さな村のようになっていて、盗賊たちが生活していた。

「見てきたところ、五十人くらいの盗賊たちがここにいるみたいだ。」

「こっちは十三人、勝てるかのう・・」

「数は多いですが、魔法を使える者はおらず単調な武器を持った集団です。魔法を上手く駆使すれば勝てます。」

そして作戦が始まった、まず田中くんたちが盗賊たちの拠点を攻撃して、盗賊たちを誘い込む。

「待てぇ!!」

田中くんたちが必死に走りながら、盗賊たちをあるところへ誘い込む。

「よし!今だ!」

誘い込んだ盗賊たちをミカエルと加藤さんが電撃で攻撃、さらに逃げられないように松島さんたちが大きな木の板を持って、逃げ道を断つ。後はぼくと田中くんたちで盗賊をやっつけた。

「おお、おれたち本当に盗賊をやっつけたんだ!」

「うん、だけどまだあそこに何人かいるみたいだから、また誘い込みにいこう。」

そしてぼくたちは、二回三回と同じやり方で盗賊たちを減らしていった。

「ぐぬぅ・・・、こうなったらおれが相手だーっ!」

そしてついに盗賊のボスがやってきた、ぼくはゴッド・カリバーを構える。

「うぉーっ!」

「うりゃーっ!」

盗賊のボスは剣の腕前がぼくより上手い、ゴッド・カリバーを持っていても追い詰められていく。

「これで終わりだ!」

盗賊のボスが剣を振り上げた瞬間、松島さんたちが木の板を盾に盗賊のボスに体当たりした。

「今だ!若葉くん!」

「うん!うおおおーっ!」

「ッ!・・・ウワーッ!」

雷をまとった剣が振り上がり、振り下ろされ盗賊のボスの首を跳ねた。

ボスがやられると、盗賊たちは武器を捨てて一目散に逃げ出した。

そしてぼくたちはだれもいない拠点に入り込み、古の地図を取り戻すことに成功したのだ。


















































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