第4話ミカエルと謎多きゲーム
そしてぼくは現実世界へと、もどってきた。
いつも通りに朝ごはんを食べて、制服に着替えて、登校して田中くんと矢田目さんと出会う。
「なあ、今回のクエスト楽しかったよな?」
「うん、たくさんドラゴンを捕まえることができてよかったよ。」
「ねぇねぇ、放課後になったら三階の総合室に来てくれない?いい写真がとれたから、見てもらいたいの!」
「うん、いいよ。」
「じゃあ、放課後待っているから!」
そう言い残して矢田目さんは、一足先に学校へ向かって走り出した。
「写真って、どんな写真だろう?」
「もしかして、今回のクエストの写真じゃないかな?」
「そういえば、三階の総合室って新聞部の部室だったよな?」
「矢田目さんって、確か新聞部だったよね。もしかして、学校新聞にぼくたちの写真が載るのかな?」
「えーっ、そうなったらおれたち人気者になるかもしれないぜ!いやーっ、なんて周りに言われるだろうな〜・・・。」
田中くんはすっかり浮かれている。
すると突然、目の前に少年が現れた。無口で瞳は暗い緑色、だけど神秘的で美しくも見える少年だ。
「君はだれ?」
「ぼくはミカエルだよ」
「えっ、ミカエルって今回のクエストで一位取った人だ!」
「うん、君たちも二位になったの知ってる。とてもすごいよ」
「ありがとう、ところでぼくたちにどんな用事があるの?」
「君たちの仲間の矢田目さんに伝えて、このゲームのことを公表してはいけないって。」
「どういうこと?」
「ゲームのことは他言無用、勧誘以外の理由で話したり、世間に公表すると、マスターに消されてしまう・・・」
「えっ、それ本当なの!?」
「うん、不正行為と同じくらい重い罰を受けることになる。だから、早く彼女に教えてあげて。」
真剣に言うミカエルに、ぼくと田中くんは矢田目さんのことが気がかりになった。
「教えてくれて、ありがとう。それじゃあね!」
「後最後に一つ、このゲームから早く抜けた方がいいよ。君たちも痛い目に遭うから」
「・・・わかったよ」
そう言ってミカエルは去っていった。
ミカエルが最後に言い残したことは一体なんだったんだろう・・・?
そんなことを思いながらぼくは登校した。
そして数時間が過ぎて放課後になった、ぼくと田中くんは矢田目さんからの約束通り、校舎の三階の総合室にやってきた。
「失礼します」
「二人とも、よく来たね!」
矢田目さんが拍手すると、総合室にいた人全員がぼくと田中くんに拍手した。
「いや、すごいな!」
「君たち、あのレインボー・クエストをやっているんだって?どんなゲームか教えてよ!」
他の人たちがグイグイ質問してくる、しかしぼくはミカエルからの言葉を思いだし、お茶を濁すことにした。
「ごめんね、よく覚えてないんだ。なぁ、田中くん?」
「えっ・・・、ああそうだよ。どんなクエストしていたのかなぁ・・・」
「えーっ、覚えていないの!?あっ、そうだ!この写真を見れば思い出すかな?」
そして矢田目さんは、写真をぼくと田中くんに見せた。
写真には変身したぼくたちや、あの巨大なドラゴンがゆうゆうと歩く写真、そしてゴッド・カリバーを手にしてポーズを取るぼくの姿が収められていた。
「あ・・ああ!思い出したよ、いやあ最高だった!」
「この写真の若葉、完全に勇者を気取っているよな。」
「もう!二人とも、どうして忘れたなんて言ったの?冗談のつもり?」
「あの・・・、ちょっと矢田目さんいいかな?」
「うん?どうしたの、若葉くん?」
ぼくは矢田目さんを廊下に連れ出すと、あの事について話し出した。
「実は登校中にミカエルさんに会ったんだ」
「ミカエルって・・・、あのドラゴンハンターズのクエストで一位取った人だよね?」
「うん、矢田目さんに伝えてって言われたんだ、レインボー・クエストのことを公表したりしてはいけないって。」
「えっ?でもそんなこと、マニュアルに書いてなかったよ?」
矢田目さんは首をかしげた。
「でも、以前のクエストで不正をした二十人の人たちが、行方不明になっているんだ。未だに見つかっていないというし、下手なことするとどうなるかわからないよ。」
「でも、私はこの写真を記事に載せるってもう決めているのよ。ミカエルだかなんだか知らないけど、あたしはこの写真を新聞に載せるの!」
矢田目さんは声を強くして言った、これはいくら説得しても無理だと思った。
「わかったよ・・・、変なこと言ってごめんなさい。」
「あたしも怒っちゃってごめんなさい、次のクエストも参加していいよね?」
「もちろんだよ!」
そしてぼくと矢田目さんは、総合室に入っていった。この時、ぼくは無理やりにでも矢田目さんを止めておくべきだったと後悔することになるとは、夢にも思わなかった。
その日の夜、ぼくは戦友ドットコムでみんなと次のクエストについて話し合うことになっていた。
次のクエストは「姫の求むものをそろえろ」というものである、内容は可憐なる姫が求めるものを制限時間内に全てそろえるというものだ。
「みんないる?」
ぼくが呼びかけると、田中くんと速水さんと加藤さんから返事はあったが、矢田目さんからの返事がない。
「あれ?矢田目さんは?」
「どうしたんだよ?若葉と田中は確か同じ学校だったよな、何か連絡なかったか?」
「いや・・・、特に何も」
「とりあえずぼくの方から連絡してみるよ。」
加藤さんが戦友ドットコムで矢田目さんに連絡を入れようとしたが・・・。
「だめだ、つながらない。」
「えっ!?風邪ひいたかな?それとも失踪した!?」
「落ち着け若葉、きっと事情があるんだよ。明日学校で彼女に会いに行こう、そして話を聞くんだ。」
「うん・・・、それじゃあ今回は四人で話し合おう。」
こうしてぼくたち四人は次回のクエストに向けて話し合った。
そして翌日、ぼくはいつも通りに学校へ向かった。朝礼の時間になり、担任の先生からのお知らせがあるのだが、今回のお知らせはぼくを驚愕させた。
「実は昨日から矢田目さんの姿が見えなくなってしまったという事態が発生した、もし矢田目さんと昨日話した人がいたら先生に様子を教えてほしい。」
そんな・・・、矢田目さんが失踪してしまうなんて・・・。
「ん?どうした若葉、何か心当たりがあるのか?」
先生に聞かれて我に返ったぼくは、先生に昨日矢田目さんと話したことを伝えた。すると同じクラスの女の子が言った。
「そういえば私は新聞部なんですけど、矢田目さん今日だす新聞記事を作るために、昨日夕方遅くまで私と一緒に総合室にいたんです。それで矢田目さんが写真のコピーをしてくるって、職員室に向かったんです。そしたら、それっきり姿が見えなくなってしまいました。職員室の先生にも聞いたんですけど、矢田目さんを見ていないって。」
女の子の証言にクラスがざわついた。
「何々?こわいんだけど・・・」
「神隠しか?」
先生も難しい顔で考えている、そしてみんなに言った。
「教えてくれてありがとう、このことは私が校長や矢田目さんのご家族に報告する。だからみんなはいつも通りに、学校生活を送ってください。」
そして朝会が終わった、だけどぼくは矢田目さんのことが心配だった。
「矢田目さん、一体どうしていなくなったんだろう・・・?」
そして放課後、ぼくは田中くんと一緒に矢田目さんのことについて相談した。
「ねぇ、矢田目さんはどうしていなくなったのかなあ?」
「うーん、やっぱりあれなんじゃないか、ミカエルが言っていた『レインボー・クエストを公表してはいけない』って、もしかしてそれをマスターに知られて、どこかに連れていかれたんじゃないかな?」
「どこかってどこなの?」
「さぁ、そこまではわからないなぁ・・・」
「とにかく、今日速水さんと加藤さんにも相談しようよ。」
そして学校から家に帰って、夜の8時になったころに、ぼくは戦友ドットコムで三人と話した。
「速水さんと加藤さん、実は矢田目さんが行方不明になってしまって・・・」
「ああ、そのニュースなら知っている。今朝テレビでやっていた」
「ぼくもテレビで見たよ、以前行方不明になった二十人もまだ見つかっていないのに、また行方不明者が出るなんて・・・」
「そうだったんだ、二人は矢田目さんはどうなったと思う?」
「・・・実は気になって調べてみたんだ。レインボー・クエストについて」
「えっ!?加藤さんが?」
「ああ、おれも気になってSNSで調べてみたんだんだよ。そしたら以前に、レインボー・クエストに似たタイトルの違うゲームが北海道や岡山で行われていたことがわかったんだ。」
「しかも、そのゲームでも数人行方不明者がいることが発覚した。そして行方不明者になった人の共通点は、ルール違反かゲームの内容を公表・SNSに投稿しようとした人たちなんだ。」
「それって、どういうことなの?」
「まだわからない・・・、更に妙なことはそのゲームでは優勝者が一人もいないんだ。」
「えっ!?優勝者って、ぼくと田中くんがいるよ?」
「クエストでの優勝者じゃなくて、総合的なゲームの優勝者のことだよ。どのゲームでもクエストの優勝者同士で、トーナメントやって最終的な優勝者を決めるんだ。SNSで調べてみたけど、以前のクエストの優勝者はどれも不明のままになっている。」
「そうなのか・・・、一体何がどうなっているんだろう?」
「うーん、ゲームをやり進めないとわからないのかな・・・?」
「うーん・・・、そうだ!ミカエルさんに聞いてみようよ!」
「ミカエルって、前回のクエストの優勝者か?」
「うん、次のクエストにも参加していると思うから、さがして声をかけてみようよ。」
「そのミカエルさんは、このゲームの裏側について本当に知っているのか?」
「うーん、そこまではわからないけど、言っていることに嘘は無さそうだよ。だから明日聞いてみようよ。」
そして田中くんと速水さんと加藤さんはそれに納得して、今回の話は終了した。
そしてクエストの日を向かえた、ぼくたちはいつも通りの場所に集合すると、クエストの開催地である「松田建設株式会社・八階」へ向かって歩きだした。
「おっ?あそこだ!」
そして松田建設株式会社へやってくると、すでにたくさんの人だかりができていた。
エレベーターに乗って八階へと上がっていくと、豪華に飾られた扉が見えた。
そこを開けると赤く長いカーペットの先にある立派なイスの上に、金髪で美しい顔の女性が堂々と座っていた。
「この人が、クエストの姫様か・・・」
「姫の御前だぞ、お前たち控えおろう」
姫の両わきににいる騎士が、ぼくたちに言った。ぼくたちはとっさにひざまづいた。
姫はイスから立ち上がると、ぼくたちを指差しながら命令した。
「そなたたちには、赤くて巨大なバラの花束と、紫色のビンに入った最高級ラベンダーの香水と、青く輝くチョコレートを手に入れてもらう。頼めるか?」
「はい、かしこまりました!」
「三時間以内に手に入れてくるんじゃ、一秒たりとも遅れてはならんぞ」
「ははっ!」
そしてぼくたちは、姫の欲しいものを探して歩きだした。
「とりあえず、制限時間以内にみつけだすために、二手に分かれた方がいい。ぼくと速水さんは最高級ラベンダーの香水と青く輝くチョコレートをさがしにいくよ。」
「よし、それじゃあこっちは赤くて巨大なバラの花束を探しにいこう!」
そしてぼくたちは二手に分かれて、街の中へと散っていった。
探し始めて数分が過ぎても、巨大なバラの花束は見つからない。
「一体、どこにあるんだろう・・・?」
考え込んでいると、ぼくと田中くんのところにぼくたちよりも背の低い男の子が、声をかけてきた。
『お兄さんたち、どうしたの?』
「あの、巨大なバラの花束を探しているんだけど、どこにあるか知らない?」
『それならアルラウネ・ガーデンの中にあるよ、場所を知っているから案内しようか?』
「ありがとう、助かったよ」
そしてぼくたちは子どもの案内で、アルラウネ・ガーデンへとやってきた。
そこは温室の中にある花畑で、大小色とりどりの花が咲いていた。すると店長らしきほがらかな女性が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ、花をお探しですか?」
「あの、巨大なバラの花束ってここにありませんか?」
「ありますよ、少々お待ち下さい。」
そう言って店長は店の奥に行って、少しすると大きなバラの花束を台車に乗せてやってきた。
「おお、本当に巨大だ!」
二人一緒に驚いた。
そこにあったのは通常の二十倍の大きさのバラの花が、七本束ねられていた。
「ちなみにこれ、いくらしますか?」
「タダでいいよ。」
「えっ!?いいのですか?」
「むしろ大きすぎてだれも買わないのよ、売り物じゃないから持っていって。」
「こちらこそ、ありがとうございます。」
そしてぼくたちは、巨大なバラの花束を持って、アルラウネ・ガーデンを後にした。
それから戦友ドットコムで速水さんと加藤さんに連絡を取った。それによると最高級ラベンダーの香水は入手できたとの報告を受けた。
「それで問題は青く輝くチョコレートを手に入れるには、魔法サファイアという特別な粉が必要なんだ。どこで手に入るかはまだわかっていない。」
「わかった、捜してみるよ」
連絡を切ったものの、魔法サファイアがどこで手に入るのか全くわからない。
ぼくと田中くんが頭を抱えていると、そこにミカエルがやってきた。
「どうしたの君たち?」
「あっ、ミカエルくん。魔法サファイアって知らない?」
「あーっ、それはねコインと交換で手に入るんだ。入手できる場所を知っているから、案内しようか?」
「ありがとう、よろしくお願いします!」
「よし、それじゃあおれはチョコレートを探してくるぜ!」
そしてぼくは田中くんと分かれてミカエルと一緒に魔法サファイアを手に入れに向かった。
ミカエルに案内されたのは、古いお宿のようなお店だった。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
店長のおじさんが顔をだした。
「魔法サファイアを探しにきました。」
「ああ、ちょっと待っておくれ。」
そして店長は棚から箱を取り出すと、ぼくたちの前で開けた。
「おお〜、これが魔法サファイアか」
「これはいろんなものを青く塗ることができるんだ、一つ3000コインじゃ」
「えっ・・・」
どうしよう・・・、1000コインしか持っていない・・・。
ぼくが黙ったまま慌てていると、ミカエルくんがコインを出してくれた。
「これで、足りるかい?」
「丁度3000コインだね、毎度あり〜」
そしてミカエルは、魔法サファイアをぼくに渡した。
「これ、あげるよ。けどその代わり、ぼくのお願いを聞いてほしい。」
「うん、もちろんだよ!ありがとう!!」
そしてぼくとミカエルは店を出て、田中くんを探しに行った。
「おーい、若葉・ミカエル!」
「あっ、田中くん!チョコ見つかった?」
「ああ、手に入ったぜ。そっちは?」
「魔法サファイア、手に入ったよ。」
「よし、それじゃあこのチョコレートに魔法サファイアを・・・」
魔法サファイアがチョコレートに当たると、チョコレートは綺麗な青色になった。
「やったー!青く輝くチョコレート、ゲットだ!」
「よし、早く姫のところへ行こう!」
そしてぼくたちは速水さんと加藤さんと合流し、姫のところに品物を持ってきた。
姫は大いによろこんでくれた、クエストクリアだ。
『おめでとうございます、クエストの報酬は5000コインと古の地図と神秘の宝石杖です。古の地図は次回のクエストで必須のアイテムですので、無くさないようにしてくださいね。』
ぼくたちは報酬を受けとると、お礼を言いにミカエルのところへと向かった。
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