第3話ドラゴンハンターズ

その日の放課後、ぼくは田中くんと一緒にクエストについて語り合った。

「しかし、本当に大変だったよな〜。洞穴はギミックとフェイクばかりで、そのうえ相手から妨害されるし、でもクリアできてよかったよ。」

「うん、そうだね・・・。」

「おい、若葉。そんなに浮かない顔してどうしたんだ?」

「うん、クエストの後のことについて考えていたんだ。」

「ん?一体、どうしたんだ?」

「ぼくたちを妨害した二十人のチーム、行方不明になっているんだよ。」

「ええっ!?マジかよ!」

「うん、今朝のニュースで言っていたよ、突然失踪したって。それでさ、ぼく思ったんだよ・・・。もしかして二十人は、あのゲーム世界に閉じこめられたんじゃないかって。」

「うーん、確かにあの時『ペナルティーを与える』とかなんとか言っていたな。」

「一体、何をされるんだろう・・・」

ぼくは二十人のことを想像すると怖くて震えてきたが、田中くんはぼくの肩を叩きながら陽気に言った。

「まあ、そんなこと考えなくていいよ。あいつらの自業自得なんだからさ。」

そして田中くんの言うとおり、ぼくはそれからあの二十人のことについてあまり考えなくなった。

「それよりも、勧誘権どうしようか?」

「ああ、そうだな。確か一人、他の人を参加させることができるんだよな。」

「どうする?速水さんや加藤さんとも話し合った方がいいかな?」

「うーん、でも二人の連絡先知らないんだよな・・・」

「どうしよう?」

『それなら大丈夫ですよ、私が連絡を取り次いであげますよ。』

ゲームの案内をする声が聞こえてきた。

「えっ?そんなことができるの?」

『ええ、戦友同盟を結んだ相手同士なら連絡をするとことができますよ。』

「どうやって連絡するの?」

『今からそちらに戦友同盟のアプリケーションを送りますので、インストールしてみてください。』

するとぼくと田中くんのスマホに、アプリケーションが送信された。

「戦友同盟ドットコム?」

『それを使えば戦友同盟を結んだもの同士のスマホで、会話したり電話をしたりすることができるのです。』

「へぇー、それはすごいね。」

「学校が終わったら速水さんたちに連絡してみようぜ。」

『もしよろしければ、私の方から速水さんと加藤さんに声をかけておきましょうか?』

「はい、よろしくお願いします。」

そして謎の声は止んだ。

そして下校の時間、ぼくは早速速水さんと通話しようとしたところ、なんと速水さんの方から反応があった。

『やあ、若葉くん!元気にしているか?』

「速水さん、連絡してくれたのですか?」

『ああ、なんか急に「戦友同盟ドットコム」って名前のアプリが着てな、インストールすると現実で戦友同盟同士で連絡をとることができるということで、インストールしてみたんだ。』

「これで、いつでも話せるね。」

『ああ、それで今回は何の用事だ?』

「実は勧誘権についての話ですけど、そちらでだれか誘いたい人っていますか?」

『いや、いないな。元々おれと加藤の二人だけでやろうと思っていたからね。もしお前たちに誘いたい奴がいるなら、誘ってもいいよ。』

「えっ、いいんですか?」

『ああ、いいよ。』

「ありがとうございます!あのところで、速水さんと加藤さんはどういう関係なんですか?」

『ああ、中学の頃からの友だちだよ。加藤はビビりだけど、オレよりも頭はいいんだ。だから頼りにしてくれ。』

「うん、わかったよ。今日はありがとう!」

『ああ、またゲームで会おう!』

そして速水さんとの通話は切れた。

「速水さんがこっちで誘う相手決めていいって!」

「よかったな、それでだれ誘う?」

田中くんに聞かれて、ぼくは言葉に詰まった。ぼくは田中くん以外の友だちがいない。

「田中くん、いい友だちいない?」

「うーん、とりあえず声をかけておくよ。それじゃなあ」

そしてぼくは田中くんと手を降ってわかれた。






そして翌日の二時間目の休憩時間、ぼくは田中くんに聞いてみた。

「ねえ、誘えそうな人見つかった?」

「ごめん、ダメだった。というかみんな、信じていない感じだったぞ。」

「えっ、そうなの?」

「ああ、話してみたら『そんなの都市伝説だよ』とか『そんなゲーム聞いたこともない』って言うんだよ。」

「そうか、これじゃあ学校に誘えそうな人はいないなあ・・・」

「どうしようか・・・?」

するとこちらに向かって走ってくる女子がいた。

「おーい、若葉くーん!」

「あっ、矢田目さんだ」

「聞いたわよ、またゲームがあったってね。」

「うん、ていうか矢田目さんはどうして知っているの?」

「ああ、実はねSNSで参加者と知り合っているのよ。そこからクエストの内容とかを集めているんだ。」

「なあ、若葉。矢田目さんと知り合いなのか?」

「うん、『レインボー・クエスト』に興味があるみたいなんだ。前日も矢田目さんに声をかけられて、レインボー・クエストのこと話したんだよ。」

「ふーん・・・、あっ!そうだ!」

突然、田中くんが大声で言った。

「どうしたの田中くん?」

「矢田目さん、もしレインボー・クエストに参加できるとしたら、参加したいか?」

「それはもちろん、すごく参加したいです!」

「よし、それじゃあ決まりだな。矢田目さんは、今日からおれたちの仲間だ!」

田中くんは一人で矢田目さんを仲間に加えることを決めてしまった。

「ええ!?レインボー・クエストに参加できるの!?嬉しい!!それでいつから?」

詰め寄る矢田目さんに、田中くんは困ってしまった。

「えーっと、矢田目さんを正式に仲間に加えるには・・・?」

『戦友同盟に名前を書いてもらうだけだよ。』

また謎の声が聞こえた、そしてぼくの手元には戦士の名刺があった。

「ここの裏面に、名前を記入するだけでいいよ。」

「へぇー、意外とシンプルな手続きなのね。」

矢田目さんが名前を記入すると、再び戦士の名刺は消えた。

『これで矢田目奈津子さんは、正式に戦友同盟の一員となりました。次のクエストから、あなたも参加できます。』

「やったー!私もできるんだ、レインボー・クエスト!」

『それでは矢田目さんには、ゲームのルールと注意事項が書かれたマニュアルを渡しておくので、明後日のゲームまでによく読んでおいてください。』

矢田目さんのところに薄いマニュアル本が届いた。

「ありがとう、それじゃあまたね!」

矢田目さんはマニュアル本を持ってそのまま走り去っていった。

「明後日のクエスト、楽しみだなあ。」

「今度は何をやるんだろう?」

新しい仲間が増えて、仲間との連絡がとれるようになったことで、ぼくはこのゲームの面白さにますますハマった。

ぼくの心は次のクエストに向けてのワクワクでいっぱいだった。








そして二日後の朝、クエストが始まる時刻となった。

「よし、集合場所へ行くぞ!」

ぼくは着替えて、玄関の扉を開けた。すると奇妙な生き物がいた。

「くりゅ、くりゅー!」

「きゃわララララー」

「なにこれ?とっても可愛い・・・」

ペットの犬みたいなつぶらな瞳、今まで見たことのない鮮やかな模様の生き物が二匹、ぼくをのぞいていた。

「この生き物たちはなんだ・・・?」

ぼくはそう思いながら、待ち合わせ場所へと歩きだした。待ち合わせ場所は、近所にある石田公園。昨日戦友ドットコムで、四人と話し合って決めた待ち合わせの場所だ。

「おーい、若葉くん!」

「速水さん、加藤さん、田中くん!もう来ていたんだ。遅れてごめん」

「いいよ、これで後は矢田目さんだけだな・・・」

「そういえば、ここに来る途中で変わった生き物に出会ったんです」

ぼくは三人に玄関前でのことを話した。

「それならおれも見たよ、しかもここに来るまでに結構な数を見たんだ。もうネコみたいに、当たり前にそこにいるかんじだったよ。」

「ぼくも見たよ、でもぼくのは可愛いというよりも、空を滑空するかっこいい奴だったけどね。」

「おれも同じの見たけど、口から火を吐いていたぜ!目の前で急に吐き出すから、もうあせっちゃったよ!」

するとそこへ矢田目さんが走ってきた、しかも矢田目さんは可愛いあの生き物を抱えていた。

「矢田目さん、それどうしたの?」

「いや、なんかすごく可愛くて思わず連れてきちゃった〜。あっ、矢田目奈津子です!初めまして。」

「速水だ、よろしくな!」

「加藤です、よろしく」

すると矢田目さんが持っていた生き物が突然いなくなった。

「あれ!?えっ、どこへ行ったの!?」

『はい、一ポイント獲得です。』

「えっ、一ポイント?もう、ゲームは始まっているの?」

『はい、そうです。今回のクエストは参加無制限の『ドラゴンハンターズ』です。六時間以内に、町中に放たれたドラゴンを捕まえてください。捕まえたドラゴンが強ければ強いほど、高得点をとることができます。しかし倒してしまったら、得点は無効です。より多くドラゴンを捕まえた者が優勝者です。それではみなさん、がんばってください!』

そしてぼくたちはドラゴンを求めて歩きだした。

すぐ近くにはネコみたいにかわいいドラゴンがあちらこちらにいた、しかもぼくでも簡単に捕まえることができた。

「こりゃいいぜ、このクエスト思ったより簡単じゃないか?」

「あれ?なんか、思ったほどポイントが増えないなぁ・・・」

このゲームのポイントは、ぼくたちの頭の上に数字で表示されている。今は15ポイントだ。

「15ポイントか・・・、これじゃあ他のライバルに勝てないぞ。」

「やはり、強いドラゴンをさがしましょう。」

「それでどこを探す?」

「とりあえず向こうをさがしてみよう。」

そしてぼくたちは強いドラゴンを探して歩き回った、すると畑に巨大な足跡が刻まれているのを見つけた。

「でかい・・・、きっとこのドラゴンはとてつもなく大きいぞ!」

「ああ、一気に大量得点だ!」

「ちょっと待って!みんなドラゴンと戦う前に、そんな格好で大丈夫なの?」

矢田目さんに言われてぼくたちはハッとした、確かに今のままではドラゴンと戦うことはできない。

「大丈夫だよ、今回も変身して戦えるから。」

『その通り、今回はウォリアー・重戦士・ウィザード・エルフの中から一つを選んでね。』

「じゃあ、ぼくはウォリアーだ!」

「あたしはエルフかな、戦うのはあまり得意じゃないから・・・」

ぼくと矢田目さんは変身した。田中くんはぼくと同じくウォリアー、速水さんは重戦士・加藤さんはウィザードになった。

「よし、これでドラゴンと戦う用意は完璧だね!それじゃあ、足跡を追ってドラゴンを見つけるぞーっ!」

ぼくたちは「エイエイオー!」と気合いをいれた。

足跡をたどっていく途中、踏みつけられて歪んだ家がいくつかあった。この足跡のドラゴンは、かなりの力を持っている。

「こいつ、もしかしたらかなり強いかもしれないぞ・・・」

ぼくは足跡をたどりながらそう思っていた。

そしてぼくたちは、足跡の主であるドラゴンを見つけた。

「あっ、あれだ!」

そこにいたのは、映画で見たゴジラの五倍の大きさはあるドラゴンだった。ビルのように太い足と、巨大な翼。その巨体は他のあらゆるものよりも高く、そして見下ろしていた。

「でけぇ・・・」

「あいつと戦うのか・・・、勝てるかな?」

「不安になるな加藤、こっちには五人もいるんだ!絶対に勝てる!」

「・・・うん、勝てるよ。ぼくは行くよ!」

「あたしも行くよ!」

こうしてぼくたち五人は、あの巨大なドラゴンを倒す決意をした。

「先手必勝、突撃だ!」

五人いっせいにドラゴンへ攻撃すると、ドラゴンの体がゆらいだ。

「やった!効いているぞ!」

しかしドラゴンはすぐにぼくたちに口を向けて、口から吹雪を吐き出した。

「うわーっ、強烈だ!」

「吹き飛ばされるーっ!」

ぼくたち五人はあっという間に吹き飛ばされた。

「いてて・・・、みんな大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。」

するとその時、三人のチームがぼくたちのところへやってきた。

「おい、ケガは無いか?」

「はい、大丈夫です。」

「そうか、それならあのドラゴンへ挑むのは、止めといた方がいい。おれたちも、コテンパンにやられてしまったからな。」

確かに三人は酷くボロボロになっている、あのドラゴンはとても強いことがよくわかった。

「・・・どうする?別のドラゴンを探した方がいいかな?」

「でも残り時間はもう一時間半を切っている、体力的にも探し回るのはキツイ。それなら時間いっぱいこのドラゴンと戦った方がいい。」

「そうだな、こいつあきらかに今までのより強いし、高得点狙えるぞ!」

「ああ、それじゃあ行くぜ!」

そしてぼくたちは再び、ドラゴンへと突撃した。するとドラゴンは少しジャンプすると、ドスンと着地した。巨体から出る衝撃で、ぼくたちは大きく揺れた。

そしてドラゴンは火炎を吐き出した、慌てて後ろに下がりながら逃げる。

「あぶなかった・・・」

「どうするの?さっきみたいな攻撃されたら、ぼくたちに勝ち目は無いよ。」

「スタンプからの火炎攻撃・・・、あ!?」

「若葉、何か思いついたか?」

「加藤さん、矢田目さん。ちょっと耳を貸して。」

ぼくは加藤さんと矢田目さんに、ぼくの考えることができるかどうか聞いた。

「それなら、この魔術の本に書かれている魔法でできる。」

「わたしのエルフの力ならできるわ」

「よし、それじゃあドラゴン退治へ行こう!」

そしてぼくたちは再び、ドラゴンの前に現れた。ドラゴンがスタンプのために飛び上がったそのタイミングで・・・!

「怪力思念」

加藤さんが魔法でドラゴンを宙に浮かせた。

「魔法の矢・スモール!」

矢田目さんが放った矢がドラゴンに刺さった、するとドラゴンの体が一気に縮小して大型犬くらいの大きさになった。

「よーし、捕まえるぞ!」

そしてぼくと田中くんと速水さんで、小さくなったドラゴンを取り押さえた。

「よーし、ついに捕まえたぞ!」

そして取り押さえたドラゴンが消えて、一気に一万ポイント獲得することができた。

「おお〜!一気にポイントが増えた!」

「一万点も増えるなんて、やっぱりあのドラゴンを捕まえて正解だったね。」

「時間はあと一時間だ、ここからドラゴンをさらにたくさん捕まえて行くぞ!」

そしてぼくたちは、さらなるドラゴンを求めて進みだした。







それからぼくたちは残り時間までドラゴンを捕まえ続けた。

そしてピピーッという音とともに、クエストは終わりを告げた。

『はい、そこまで〜。これよりポイント集計に入ります、二十分後に結果を発表しますのでお待ち下さい。』

「おれたち、一位かな?」

「ああ、たぶん間違いないぜ!」

ぼくも自分たちの組が一位だということに、強い確信を持っていた。

そして結果発表の時がきた。

『それではこれより、結果発表と行きます。まず3位は、十和田さんの戦友同盟・8465ポイント。そして2位は、若葉さんの戦友同盟・11575ポイント。そして1位は・・・ミカエルさん・20555ポイント!なんと単独での参加者が一位です!』

「一位は取れなかったかぁ〜・・・」

「ミカエルさん、すごいなぁ〜。一人で20000ポイント以上とるなんて。」

「こいつは、強敵だぞ・・・」

ぼくはまだ見ぬプレイヤーの存在に、興味が沸き上がってきた。

そして優勝者のミカエルには、緑の石盤が授与され、ぼくたちには輝く剣が授与された。

『その剣は、神の雷をまとった「ゴッド・カリバー」という剣です。攻撃がクリティカルヒットしやすくなる高性能の武器です。』

「やったな、若葉!最強の武器じゃないか?」

「うん、すごい力だよ!」

そして新たに勧誘権を二人分も獲得した、これから先どんなクエストが待っているのだろうか・・・。











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