君は、もしかして!?

目の前には、僕と同じ制服を着た女の子が、僕の家の前で待っていた。

彼女は容姿端麗で、誰がどう見ようと美女である。

彼女は、笑っていた。

それは、他の人から見ればとても妖美な笑みだったが、僕にとっては恐怖そのものだった。

何故なら、顔が血まみれだったから。

ただ、彼女の顔に目立った傷的はない。

だとすると............

僕は最悪のヴィジョンを思い浮かべてしまった。

時間はないし、今すぐ逃げたいけど、いつもより走ったせいか息が上がってしまった。

体力の回復のために時間をかせがないと。

勇気を振り絞り、彼女に問う。


「な、何で、君はそ、そんなことをするん、だ?」


恐怖が抜けきっていないからか、はたまた息切れによるものなのか、僕の声は震えていた。


「えー?何でこんなことをするって?もー、分かんないの?こんなにアピールしてるのに。」


アピール?何だそれ?僕はそんなの見たことないぞ。

いや、今までのなかにヒントがあるのかもしれない。

僕は必死に思い出そうとした。

過去のことを、知っている限り。

ほれでも、ヒントとなるような事が見つからなかった。


「分からない。」


ボソッと、呟くような声で言った。

言ってしまった。


「分からない?そんなこと、ないでしょう?あの日のこと、覚えてないの?あの約束、君から言い出したんだよ?私は、ずっと覚えていた。だから、こんなことをしたの。ねぇ、もう一度、思い出してみて?」


「あの日の、約、束?」


...........そういえば、何で僕より彼女の方が早く家に着くことが出来たんだ?

最短ルートは避けたけど、学校を出たのは僕の方が早い。

理論上、僕の方が先に着くはずだ。

なにかが、引っ掛かる。


「あの、さ、質問、していい?」


「うん!いいよ♡愛しの君の質問なら、全部答えてあげる♡」


「...........君は、一体どうやって家に来たの?」


「フフフ♡それはねぇ、あの道を通ってきたから、だよ♡」


「え?」


彼女が指を指した先、そこはただの草むら。

僕の家の向かいにあるアパートの隣の草むら。

普通の人にとっては、“ただの”。



「ねぇ、たくと。ここ、こうこうの前のどうろにつながってるんだよ!」


「うわ、ほんとだ!すごい、すごい!こんなちかみちはじめてしったよ!...........しょうらいこうこうにいったら、このみちをとおればすぐだね!」


「うん!」


「じゃあ、ここはぼくたちのひみつのぬけみちだ!」


「ひみつの、ぬけみち?」


「そう!ぜったいひみつだよ?だれかにみつかったら、とおれなくなっちゃうかもしれないから。やくそく!」


「やくそく............ うん!やくそく!」



「あ....ひ、秘密の、抜け道............ 。」


「あはっ♡覚えててくれたんだ♡そう、その道は、私と、君の、秘密の抜け道。約束、したよね?」


忘れていた。いや、若干だけど覚えていた。でも、誰も知らないと思って、この道を警戒するのを忘れていた!

でも、何で...........?何で彼女がこの道を?


───私と、君の、秘密の抜け道。───


っ!?

ど、どう、して?


「君は、もしかして............キョーコ、ちゃん?」


「やぁーっと思い出してくれたんだね?拓人♡」


僕は、ここで初めて彼女をちゃんと見た。

少しおっとりとした雰囲気に、垂れぎみな目。そして、左の目の下のほくろ。

それは、昔と何ら変わっていなかった。


「そうだよ♡私は金見響子。君の.........幼なじみだよ♡」









鈴子さんを刺した犯人は、僕の幼なじみだったのだ。 









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る