逃走、回想
はぁ、はぁ、はぁ
僕は、最低のクズ野郎だ。
僕は、鈴音さんを、置いていってしまった。
血がたくさん流れてて、死んじゃったような顔をして............
怖い、怖いよぉ。
何で好きなだけで人を殺せちゃうの?
何で他の人をゴミって言うの?
僕には分からない。
ただ、鈴音さんという僕の初恋の人を助けずに逃げた罪悪感が、僕を深く傷つけていた。
あの時、僕は綺麗だなって思った。
その人の髪が、綺麗にたなびいていた。
日光を反射する黒いロングヘアー、
どこまでも透き通った肌。
ただ、綺麗だった。
学校生活に馴染めなかった僕に、
その人は手を差しのべてくれた。
そのお陰で、僕はクラスメートと今話すことができている。
皆僕に対して優しく接してくれる。
嬉しかった。だから、
僕は光崎鈴音という、一人の女性に惹かれたんだ。
「くそっ!間に合ってくれ!」
僕は学校玄関までひたすらに走った。
彼女が何を言っていたかは聞き取れなかったが、逃げるチャンスを見つけた僕は、学校の階段をかけ下りた。
履き替えてる時間はない!
とにかく早く!
家までの最短距離は使えない。
でも僕にとってそれは好都合だった。
校門を出て、選んだルートを走る。
住宅街の中から少し離れたところに家があるので、住宅街に突っ込むことはしない。
普通であれば。
僕は左に曲がって真っ直ぐ進み、住宅街に入る。
そこには、電話ボックスがあった。
僕は急いで駆け込み119のボタンを押し、受話器を耳に当てる。
プルルル............
早く出てくれぇ!
『はい、こちら消防サンダーです。警察ですか?それとも救急ですか?』
「救急です!」
『内容を教えてください。』
「女の子が別の子に背後から刺されました。」
『場所と、今の状況を教えてください。』
「場所は荒杉山高校の屋上で、状態は、意識がなくて、そのぉ、あれです、脇腹から血が大量にっ!」
『落ち着いてください。我々がすぐに向かいます。止血の作業はしましたか?』
「犯人に追いかけられているので、出来ませんでした。」
『追いかけられてるですって!?............警察を呼びましょうか?』
「時間がないのでこれで失礼します!」
『ま、待って下さ──』
ツー、ツー、ツー
これで、よし。
これで助かってください、鈴音さん!
僕に出来ることは、できる範囲でしました。
後は、鈴音さんを信じます。
生きてください!
僕は走る、自宅まで。
鈴音さんを刺した犯人も、家までは追ってこられないだろう。
ことを大沙汰にすれば、捕まるかもしれないからだ。
しかもそいつは、僕のことを............
だから、家族のいる場所までは手を付けないはず。
でも、そんな考えが間違っていた。
家に着いたとき、既にそこには、
「やっほー♡さっきぶりだね?鬼ごっこはもうおしまい?」
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