既にヤンデレはそこに居る。
時亜 迅
ハ、ジ、マ、ル、ヨ♡
「あ、あの!えっと..........その。」
「..........なぁに?ゆっくりでいいよ?」
「は、はい。すー、はー。」
落ち着け!今日という今日は、言うって決めたじゃないか!
「鈴音さん。僕と、その、付き合ってくらひゃい!」
あ、盛大に噛んだ!.......終わった。
「いいよ?」
「...........え?」
「私も、拓人君のこと、その、好きだったから。」
「い、いいの?」
「うん!」
「やったー!!」
僕の初恋の相手。その人に告白できた。
僕はそれだけでもいいと思っていた。
だが、相手から返ってきた言葉は予想以上のものであり、僕の告白は、受け入れられたのである。
そう。これから僕は、恋人とのハッピーライフが始まるのだ!
でも、そんな未来は、赤い鮮血と共に途切れた。
ザシュッ
「............え?」
目の前にいた鈴音さんの口から、真っ赤なものが一筋溢れた。
それは、紛れもなく彼女の血であった。
彼女は脇腹に手を当てる。
彼女の掌は、真っ赤に染まった。
「どう............し、て。」
「貴女のようなクソ女なんかに、私の拓人をあげるわけ、ないでしょう?」
やがて、鈴音さんの体は、力なく倒れた。
倒れてもなお、彼女の制服から地えと、鮮血は流れたままだった。
「え、ど....どうして?」
状況が理解できずに、僕は上ずった声で、彼女に聞いた。
「決まっているでしょ?私の大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大好きな、貴方を、このグズ女から奪いに来たのよ♡」
「へっ?」
彼女の言ってることが分からない。
僕が、大好き?
そんな、だからってこんなこと。
「っ!?」
僕はそう疑問に思ってから、初めて冷静な状態で鈴音さんの体を、倒れた体を見た。
地面に広がる真っ赤な血。
そして、瞳孔が開いたような、光の点らない目がこっちを見て............
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
僕はたまらず逃げ出した。
こんなの想定外だ!
なんで、幸せを望んだだけなのに!?
「え?なーに?鬼ごっこがしたいの?フフッ、拓人はまだ子供だね?でも、そんな拓人も好き♡だから、私はそれに付き合ってあげる♡十秒数えてから一刻も早く捕まえないとね♡他のゴミ女共から..........ね?」
拓人のいないその場所で、彼女は独り言を呟いた。
やがて彼女は、死のカウントダウンを始めた。
「じゅーう♡きゅーう♡はーち♡なーな♡ろーく♡ごーお♡よーん♡さーん♡にーい♡いーち♡」
そして、始まるのだ。
「ぜろ♡さぁーて、拓人?............ ハ、ジ、マ、ル、ヨ♡」
彼の長い長い逃走劇が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます