第1部 三ヶ月前の話

2 こうして僕は陰キャで底辺扱いにされた

 それは三か月前の入学式を終えた後の翌日の『1年C組』でそれは起こった。

 ホームルームの為に教室に入った僕の席が別の場所に移動させられていた。

 いや、僕だけではない。

 それ以外のクラスメイトの席も窓際に移動させられていたのだ。


「ちょっと! あんた達、何勝手に席を移動してるの!!」


 これを見て激怒したのは昨日クラス委員長になった女子だ。

 確か、小暮こぐれ 雪菜ゆきなさんだったかな?

 彼女だけでなく、他の女子や男子も机を移動させた犯人に食ってかかる。


「そいつらは陰キャで底辺な奴らだからだ! そいつらは窓際にいるべきなんだよ!」


「「「そうだそうだ!!」」」


「すぐに戻しなさいよ! 先生が来るまでに!!」


「嫌だね。 この場所は陰キャがいていい場所じゃないんだよ!!」


「お前ら、昨日の入学式でカーストを設定するのを禁止するって学園長が言ってたぞ!」


「関係ないね。 ここは俺様がルールだ! 俺様のルールに逆らうならお前らも容赦しないぞ!」


 どうやら僕の席は小暮さん達が食って掛かってる奴らによって移動させられたようだ。

 そして、窓際にいる僕達は、奴らから【陰キャ】扱いされたようだ。

 だが、スクールカーストを設定することは昨日の入学式で学園長から禁止すると言っていたはずなんだが、奴らはそんなの関係ないと素知らぬ素振り。


「ゲームや漫画などを趣味にしてる奴なんて陰キャで底辺だしキモいからな。 窓際に居てもらわなきゃ腐っちまう」


「「「そうだそうだ!!」」」


 犯人とその取り巻きはどうもゲームや漫画などを趣味としている僕や他のクラスメイトを汚物のように扱っていた。

 小暮さんは怒りに顔を歪め、他のクラスメイトも奴らに不快感を感じ、睨みつける。

 どうやら、奴らにとっての【陰キャ】の基準はゲームや漫画、アニメやラノベを趣味としている者を基準としているようだった。


 おかしいな。

 本来の【陰キャ】って、コミュニケーションが苦手な人たちの事を言うんじゃなかったっけ?


「俺様はこれからこの学園を支配してやる! 逆らうなら退学よりも酷い目に遭わせるからなぁ。 ひゃははははは!!」


「酷い目に遭いたくなけりゃ、そこの陰キャ共を庇うのはやめるんだな。 奴らは惨めに死んでもらいたいからな」


(そ、そこまでするか……)


 奴らの学園を支配するという宣言を聞き、小暮さんを始めとしたクラスメイトは悔しそうにしていた。

 担任もどうやら既に脅しをかけられたようで、僕たちに声を掛けるような事はしなくなった。


 こうして、僕を含め、窓際に移動させられたクラスメイトの少数グループと、奴らのグループ……いわゆる陽キャグループに分断され、一気に居心地が悪くなった。

 このクラスだけではない。

 他のクラスも奴らの取り巻きによるスクールカーストが形成され、僕のような者が居心地が悪くなるように仕向けられた。


 だが、それを看過できない存在がいた事をこの時は知る由もなかった……。

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