Stage-Sub マシロ←オウガ→カレン

「……オウガくん、本当にもう寝ちゃった……」


「……少しはドキドキしてくれるかと思ったけれど……こうも気持ちよさそうに寝ているとショックだなぁ……」


 ツンツンとカレンさんはオウガくんの頬をつつく。


 あんな風に気軽に触れるのは幼馴染だからなのかな。


 ボクはまだそんな風にオウガくんにできないや。


 いつもだってドキドキしているのをなんとか抑えて頑張っているんだから。


 ……今も冷静になれば心臓が張り裂けてしまいそうだ。


 大好きな人の隣で、しかも同じベッドに入っている。


「…………」


 穏やかな寝顔。


 ……やっぱりボクたちがいるのに寝ちゃったのは、ちょっと……いや結構ショックだけど今はこの顔に免じて許してあげよう。


 いつものオウガくんは格好良いけど、こっちは可愛くて好き。


「でも、これならレイナさんと何もなかったというのも納得ですね」


「そうだね。もっと寝顔を堪能したいけど私たちも寝ようか」


「はいっ」


 明日も朝は早い。生徒会役員としての仕事がある。


 ボクもちょっと……ちょっとだけオウガくんに近寄って……っと。


「それじゃあ、おやすみなさい」


「うん、おやすみなさ――きゃっ!?」


 後は寝るだけというところで、急にカレンさんが甘い声を漏らした。


「カレンさん? いったいどうしたんです――ひゃんっ!?」


 その理由はすぐに身をもって理解する。


 は、肌を触られた……!? 


 すぐに自分の肩に視線をやると、そこには寝ていたはずのオウガくんの手があった。


「えっ!? オ、オウガくん!? いったいなにを」


 問いかける前に密着するくらいぎゅっと抱き寄せられる。


 カレンさんも同じみたいで顔を髪に負けないくらい真っ赤にしていた。


「オ、オウガ! こういう冗談はダメだよ? さすがに笑えないからね!」


「そ、そうだよ。……ちゃ、ちゃんと言ってくれたらボクはいつでも覚悟はできてるから……」


「…………」


 しかし、ボクたちの声にオウガくんの反応はない。


 さきほどまでと変わらない規則正しい寝息だけ。


「ね、寝てる……? 起きてないの……?」


「えっ、じゃあ、さっきのは……ただの寝相ってこと?」


 そんなことがあるのだろうか。


 ……いや、待って。もしかして、レイナさんが言っていた抱かれているってこういう……!


 そう考えているうちにもオウガくんの悪い寝相は暴走し、回された腕は肩からさらに下まで伸びていく。


 むにゅりと自分の大きいそれが温かな掌に包まれたのがわかった。


「あっ、ダメ……! オ、オウガ……! そこ触っちゃ……!」


「カ、カレンさん! どうにかオウガくんを起こさないとぉ……っ」


 胸をぎゅぅぅと力強く握られて、声を抑えるので精一杯になる。


 ほ、本当に寝てるんだよね!?


「マシロ……カレン……」


 寝言でボクたちの名前を呟くオウガくん。


 その間も彼の手による侵略は止まらない。


 ダ、ダメだ……。体に力が入らない……。


 まさぐられて、快感が全身を駆け巡って……んんっ……!


 起こそうにも彼の手を食い止めるのに必死で精神的にも余裕がない。


 ま、待って……。オウガくんは無意識でこういうことをしているんだよね……。


 じゃあ、オウガくんが起きるまでこれは続くってことなんじゃ……。


 自分のしてしまった恐ろしい想像に青ざめる。


「あんっ……!」


「ふぁ……っ」


 それからボクとカレンさんは疲れて寝落ちしてしまうまで、オウガくんとの攻めと戦い続けた。




     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「おはようございまー……あ~、やっぱりこうなっていましたか」


 予想通りだった目の前の惨状を見て、笑みを浮べる。


 オウガ君は両腕にマシロさんとカレンさんを抱きしめていた。


 しかも、パジャマの中に腕を突っ込んでいるのだから二人の服装はとても扇情的になっている。


 汗もかいて、顔も赤らんでいる。


 はだけて鎖骨どころか、その下まで見えてしまっていた。


 事情を知らない人が見れば完全に事後ですね、これは。


「だから、言ったのに……。オウガ君に毎晩、抱かれていますって」


 オウガ君はどうも寝相がすごく悪いらしく、熟睡すると近くにあるものを抱きしめる癖があるらしい。


 最初は私もビックリしましたが、今では慣れたもの。


 むしろ、こんな胸・・・・ごと抱きしめてくれるオウガ君の暖かさが心地良いくらいだ。


「さて……起こすのもありですが」


「んんっ……」


「……ぁっ……」


「ふふっ。面白そうだから、このままにしておきましょう」


 おそらくアリスさんがきちんと対応してくれるでしょう。


 彼女はオウガ君のこの悪癖を知っていながら、あの二人と同じベッドで寝かせたみたいですし……。


 公爵家の跡継ぎ問題を解決させるという意味でも、メイドとしては正解の選択肢を選んだだけ。


 元々、彼女はマシロさんとカレンさんとの恋愛を応援している立場でしたしね。


「目覚めたオウガ君がどんな顔をするのか楽しみです」






 その日、オウガ君は両頬を真っ赤にさせて生徒会室にやってきた。





◇次回から第三章始めます!感想お待ちしております!

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