第34話 最終回

 天空の城ルリナ


 王が天空の城の中を探索して、昨日は宮殿の中、今日は迷宮の中とルンタッタしながら探索していた頃、地上部分の天空の城コントロールセンターでは、ルリナの指示によって戦闘の火蓋が切って降ろされようとしていた。


「エルフ共の阻止行動開始っ! 天空の城、最大加速へっ、目標、エルフ側の天空の城っ!」


 レベルも上がって知能も上がり、ソリッドステートの脳に改変されているので、この程度の知識は持っている。


「艦対艦ミサイル発射っ、ジェノサイドキャノンの投下阻止っ」


 こちら側は下級天使達が操作、自衛隊みたいに「イージスシステムが遅いので手動で操作させて欲しい」とまでは言わないが、操作に関してはプロ。


「本艦は今より敵天空の城へ向かって衝突を開始します、衝角展開、耐ショック防御、総員何かに捕まれっ!」


「突貫だっ、突貫で行こうっ!」


 やっぱり突貫する時は、リヴァイアスの敵対何隻目かの艦長と一緒で、拘束されてからも突貫で行こう。


 エルフ側は天使も信用していないので、エルフの乗組員が制御室を確保していて、マニュアルなんぞ見ながら、下級天使に操作方法を教わりながらやっている。


 大義も正義も天祐真如も全部こちらにあるのだが、悪の?エルフ共は地上を制圧しようとして、北の人間国を天空の城の力で蹂躙しようとしている。


 警察行動だとか人類の為なんかこれっぽっちも考えていないし、贅沢三昧してきた王族貴族など死ねばいいとまで思っているルリナなので、困っている王族を救ってやろうなどと一切思っていないが、クソエルフ共を邪魔するためだけに行く。



 天空の城、野に咲く花(エルサレム)


 エルフの古老長老が、人間国の上空に天空の城を配置して、降伏勧告をし続けていたが、長時間の勧告にも関わらずゼロ回答を続けられたので、痺れを切らしてこう言った。


『うむ、既に長く待った。奴らの城砦の周囲、スラムでも薙ぎ払ってやれ』


『畏まりましたっ』


 ザコ一号が操作パネルを弄り、ジェノサイドキャノンの方向と天空の城の発射位置を調整して、人間国上空に至り発射体制に入った。


『神の杖、発射位置へ、発射っ!』


 高高度から弾丸を加速して発射、これで数千人から一万人は消滅させられ、黒雲が王都を包んで暗黒の雨が降り注ぎ、王都にも稲光と轟音が響き渡り、黒雲を洗い流すブラックレインが吹き荒ぶ地獄になるはずだった。


『感、二時の方向、約二十キロより飛来物有りっ』


 それは防御壁をも貫通して天空の城本体へと着弾した。


『攻撃を検知っ、防御壁を無効化した所からも、この攻撃は天空の城よりの物と思われますっ』


『なん、だと?』


『左舷より天空の城っ、敵対者ルリナ所有の艦と思われる物が接近っ、超音速でっ……』


 衝突した。


「ごいいいいいい~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」


 対衝突防御のシールドが作動し、双方の耐ショック防御なんかも作動しまくったが、それでも消し切れない加速Gが発生して、中身の方はシドニアが推力5で噴射したみたいになった。


 窓から人間が飛んで、ハーネス付けてなかった奴は全員空飛んで、壁とか外壁側にビシャビシャ墜落するアレである。


『『『『『『『『『『『『ぎゃあああああああああああああああああああああっ!』』』』』』』』』』』』


 悪は滅びた。


 王や天使騎士や下級天使はその加速Gに耐えられるが、長老古老やザコ達はシドニアの刑。


 今回国家騎士団とか衛兵とか冒険者は搭載してこなかったので、ローマ軍みたいに船に板を掛け渡して、敵船上陸して切り込んで、番族の襲来みたいな見せ場は無かったが、もし乗っていれば全員シドニアの刑。


 大体三千Gレベルになると、インディーカードライバーかF1ドライバーでも無ければ味わえない加速Gで、ビートたけしの義弟で現在GAORAで解説の松田さんぐらい、大クラッシュシーンでしか味わった事が無い。


 同じくIRL(インディーレーシングリーグ)ドライバーのケニーブラックなど、全身の骨がバラバラになって、アメリカの医療番組で特集され、3DCGで表示されてどんな治療やリハビリを受けたか、総額何千万ドルの治療費が掛かったか放送されるレベルの大事故で大怪我。


 リハビリの結果運よく復帰できて、最終予選日のバンプデーで、ポールデーに出たポールポジションタイムより速いスピードを出して期待されたが、500マイル完走する体力が無くて引退。



 王の探索域


「うん? 何だ、凄い衝撃だったなあ、外で何かやってるんだろうか?」


 迷宮が崩れたり落盤まではしなかったが、マグニチュードで言うと10ぐらいの凄まじい衝撃波が島を五周してから収まった。


 今回はどこに行くにもついて来る、ルリナと野に咲く花が来てないのはおかしいとは思ったが、マジで殺し合いしているとは思っていなかった。



 天空の城ルリナ


「艦載機発進っ!」


 艦これ的な弓矢や小さい奴じゃなくて、イゼルローン要塞からスパルタニアンと艦隊発進レベルの修羅場。


 やっぱりラピュタやルパン三世2の最終回に出て来たような、腕が翼になっていてピコピコ敵を検知してはレーザーぶっ放して来る、平面世界製の金属なのかセラミックなのか材質不明の頑丈すぎるロボが数百機射出されて、降下音とか飛来音響かせながら出撃。


「目標は敵エルフ全員っ、エルフ共を皆殺しにしろっ!」


 野に咲く花とかエルフの鉄の軍団が乗っていれば、天使貴族とか忍者頭領とか賢者もいるので、流石の平面世界製のロボでも撃破されるが、数が多いので処理しきれない。


 今回は分散配備されていて、故郷を守っているのは野に咲く花と鉄の軍団のょぅじょ数人。地上の接収に向かっているのが鉄の軍団。天空の城には乗らないように推奨。ルリナも自分で出撃すれば大した敵じゃない。


 長老古老は天空の城が手に入ったのでイキって隣国に攻め込み、今までの積年の恨みを果たしに行っているだけで、野に咲く花は参加しないで、敵国住民を全員排除して城砦を落とすような悪行には手を染めなかった。


 エルフは「もりのなかまたち」なので悪即斬されないが、冒険者ギルドから「北にある人間国をエルフの野望から救え」的なクエストが出されると、降伏しなければ王直々に出動して皆殺しにされる可能性が高い。


 エルフの合法ロリょぅじょ二十五歳なので、その辺の知識と言うか経験則により、姉竜込みでブレスで滅ぼされるのは知っている。


 何なら森の仲間達が総出演して、みなしごハッチの最終回付近のように今までの登場人物全員参加で破滅させられるか、少年ガンガン的な最終回で全員勝利している中で、エルフだけが完全敗北する未来予想図も見えたので不参加。


 でも長老に向かって、現在ケモミミ王国で宰相をやらせるためにしょっ引かれた若い者(300歳)みたいに、偉そうに意見とか反論とか直言とか「王に殺されますよ」とは忠告しなかった。



 敵方の対空兵装が作動して、ゴールキーパーみたいなプラズマガンや、地上にあるアイアンドームがブンブン呻って射撃して、スパローみたいな光子ミサイルもガンガン発射されて迎撃したが、数が多すぎてドローンまで含む飽和攻撃には対処できない。


「敵対空砲火無力化、上陸して内部の兵士を除去しますっ」


 防御壁を中和して上陸、向こうは指揮系統が混乱しているというか、ほぼ死んでる状態なので下級天使以外は対応不可。


 対空兵器は自動なので動作したが、島の内部で撃退のために武力行使するとなると、搭乗者の人間の許可が必要。


 今の所エルフ達は数千Gの衝撃で気絶して血塗れ。多分体の骨なんかもバラバラ。


「とっか~~~んっ!」


 天使騎士ルリナ様も上陸、多分リヴァイアス的な何かにヤられていて、突貫おじさんみたいになっている。


「ザムザムザムザム」


 陸上で花の世話をしていたり、滑空飛行機が鳥の巣の邪魔になっているので撤去しに来たり、キツネリスが肩に乗って懐いていたりするはずのロボが、エルフ処理の為に上陸してピコピコ言いながら、見つけ次第サーチアンドデストロイ。


 鋼鉄の軍団と言うか、強化セラミックの軍団が数百体、ザムザム言いながら上陸してヨツンヴァインになってセンサー働かせて、赤外線反応があり次第レーザーを高出力に切り替えて抹殺。


「キュイイイーーン、コオオーーーーン」


 キモイ動きしてキモイ首の動きして、ひざの関節が逆についている犬型ロボット的にキモイ、何百体も同じ動きしてるのでキモイアンドキモイ兵団が天空の城の中を行軍。



『長老、起きて下さい、現在敵対者の侵攻を受けています、起きて下さい』


 下級天使なので一般地上生物の生き死になど自由自在、なので治療魔法と言うか修復と言うか、死にかけで体の骨バラバラ、頭蓋骨まで粉々の状態でも直してしまい、起こそうとしているがもう魂抜けてるのか口から出ちゃっているのか中々起きない。


『あうう、うああああああ……』


 それでも電撃入れたり酢酸系のキツい匂い嗅がせると起きた。


『ふあああ、ここは……?』


『天空の城のコントロールセンターです、現在敵対勢力からの侵攻を受けています。敵艦載機によりここが陥落するのも時間の問題、早く対処を』


 魂抜けかけなので、もうガーゴイルの野望とかBF団の野望とか忘れている。


『ど、どうやって?』


『ここを守れとお命じ下さい』


 本当の主は野に咲く花なのだが、宜しく言われているので長老でも守る下級天使。


『ここを、守ってくれ』


 長老は再び眠りについた。即死級のダメージ食らったので、半分以上魂が飛んでる。回復するには長時間の眠りが必要。


『艦載機発進ッ、コントロールセンターを守れっ』


 無事だった下級天使の命令により艦載機発進。後手に回ったが一応互角、かなりの場所まで侵攻されているが、コントロールセンターのゲート前で立ちはだかればどうにかなる。



「押せーーーーっ!」


『持ち堪えろ~~~~っ!』


 もう後は艦載機同士でドッカンドッカンやって、レーザーが床面やら地面の下まで抜けたり、宮殿も引き裂いたり、兎に角しっちゃかめっちゃかになって、まず野に咲く花の側の天空の城が各所で爆裂してから落ちた。


 都市の上空にいたので、都市の上にドッサリ残骸やら瓦礫やらが落ちて「バルス」の後みたいに「ルールールルールルルー」とか合唱して大量の物が落ちるかと思ったが、超音速で衝突したので都市の直上にはいなかった。


 でもレーザーとか貫通しまくったので都市も被害。


『艦載機っ、向こうの天空の城も道連れにしてやれっ!』


 自軍の天空の城が落とされたので、その後は復讐戦。ドッカンドッカンやった後の生き残りの艦載機がルリナ側の天空の城に襲い掛かって、やっぱりレーザーとかビームとかawecsゴールキーパーアイアンドーム発射しまくり。


 船体全体なます切りにされて、耐久力も超えて飛空石もぶった切られて、色々と崩壊しながら墜落した。


 こっちはほぼ都市上空だったので大被害。


 城砦の真横に残骸やら土砂やら瓦礫が崩落して来て、それも高度差があったので衝撃波も発生して、雷は鳴るはブラックレインは吹き荒ぶは、だいたいヒナトゥポ山が噴火したぐらいの大被害を出して、範囲にあったスービック基地が壊滅して灰に埋まるぐらいの被害を出して事変が集結した。


 長老古老とか、王やその他の乗組員は、下級天使が救い出して地上に降ろした。



 王の屋敷


「二人共、ちょっとそこに座りなさい」


 天使騎士と天使貴族なので、実質、テコンダー朴的に武と文の世界の支配者なのだが、王の前では大人しくしているので正座。


 この二人を召喚と言うか呼び出せるのは、長老でも王家でも不可能で、魔王も死んでるのでムリ。


「『ハイ』」


 野に咲く花はこうなるのが大体予想できたので長老の自由にさせたが、それが問題で怒られる。


「もっと女の子と言うのはエレガントに。その…… 裸で格闘したり、天空の城を使って争ってはいけませんっ」


「ハイ」


『ハイ』


 王は人語とエルフ語で二回言った。


 ちょっと話の方向が違うと言うか、行儀作法の教師として農民の娘達のために呼んである奴みたいなことを言い出した王。


 ルリナの場合、自分がブサイク枠なのを知っていて、エルフが憎くて「ギリイッ!」だったのと、後から来た年上のエルフが子供まで授かって卵産んだのも「ギリイッ!」。


 何か奴らだけ里で出世していて、自分は勲章一個貰っていない(呼ぶと王都殲滅のため呼べない)。


 金持ちになったので母親だけ喜んで、娘の苦労も知らないでオホオホ抜かしているのもムカツクし、クソ弟まで自分の金で贅沢しているので気に食わない。


 後から連れて来られた農民市民商人の娘はクソの役にも立たないし、貴族令嬢は偉そうで、お姉さまは脳内お花畑の人で「戦争も軍隊も無くして平和になって、みんなで豊かになりましょう」みたいな、サヨクか革命家みたいな寝言言ってるのでムカツクし、大人しかった令嬢まで邪神騎士とかになりやがって偉そうになってムカツク。


 追加注文で来たクソエルフ全員体育会系と言うか軍人で、何言ってるのか全然分からないし多分悪口を言っているので超ムカツク。


 更に、一番最後に来たくせに、たった三歳で体が出来上がっているからと言って、ケモミミ女王が卵を授かって今もこの屋敷に住んでいるのが超超超ムカツク。



「折角探索中だったのに、天空の城も壊れてしまうし、女の子と言う物はもっとおしとやかに」


 現在これを言うとポリコレ違反でポリコレ警察に逮捕されてしまうが、中世世界で貴族教育なので却下。


 王の方も探索前のエルフ側の天空の城が失われたのだけを怒っている。


 まあ、嫁同士で対艦ミサイル発射して殺し合って、超音速で衝角出して突貫したり、艦載機発進させて相互確証破壊で二隻とも撃沈させてしまったのには怒っているが、下の人間国が破壊されたのには怒っていない。


 長い事エルフの「もりのなかまたち」が誘拐されたり、交易中街中で捕まって性奴隷として苦しめられてきたので、長老古老の責任は問わなかった。



「本当にもう、こんな幼い子まで……」


 そこで、窓側から来客があった。


「まいど~~~、平面世界で~~すっ、ご注文の天空の城二隻お持ちしました~~、もうクライメルク様からお代は頂戴していますので、明日にでも壊れた方、外にでも出して置いて頂けましたら回収しますんで、それじゃあ失礼しま~~す」


 姉竜からの教育で、Bバージン的に「女が見ている前で会計してはならない」と言われているので、ルリナにも野に咲く花も見ていない所で支払いを済ませ、壊れた天空の城の代わりを「サプラ~イズ」で注文して置いた王。


 普通、天空の城は注文不可で配送不可だが、国家予算レベルの所持金か、もっと価値がある竜所有の品で支払った。


 多分、天文学的な金額だが、王の方は気にしていない。


 野に咲く花の側の天空の城も探索して、詳細に記録してから自分が絵物語にして、二冊出版するのが楽しみ。


 と言う訳で、もっかい城砦の真上に天空の城が二隻配達されて来た。


「「ゴウンゴウンゴウンゴウウン」」


「『エ……?』」


 二人共イミワカンナイ状態で、目を点にして口をパクパクさせるだけ。


 流石に受注生産の天空の城が注文出来て、支払いの手段があるとか、平面世界に連絡して持って来させる手段が存在するなんて思っていない。


 平面世界の下級天使も、まるで寿司桶でも持って来るような感覚で配達して来た。


 壊れて城砦の近くに二隻も落ちているのも「大怪獣のあとしまつ」みたいに撤去に苦労しないでも、ウルトラマン的な何かが回収しなくても、平面世界の空間管理局が撤去してくれる。


『まあ、次のも来たし、長老に預けると人間国に恨みがあるからすぐ持って行って、北の国を攻めようとするから、もう預けちゃいけないよ』


『ハ、はい……』


 配達が来たので何故か叱責もうやむやに、野に咲く花が怒られたのは、決戦兵器レベルの地上人一切手出し不可の超空の要塞を、長老程度の人物に貸与した事だけ。



「ご来客です、魔国から宰相閣下と王太子様がお出でです。先王様は亡くなられたそうで(邪神騎士が許してくれないので殺された)今回はそのご挨拶かと」


 情報部の家令が入って来て、来客を告げたので本格的に説教は打ち切り。


「え? 魔王さん死んじゃったの?」


「はい、情報収集しても、どうやらそのようで」


 家令も情報部員なので、魔王死去と言うか弑逆が確定。


 今日は息子が首桶抱えて挨拶に来たが、旅程でまた世界の所有者が変わったので、天使騎士か天使貴族に挨拶すれば済む。



 一階接見場


「ああ~~、何時も息子がお世話になってます~~」


 今回も呼びもしないのに、母竜が人化して王の屋敷に滑り込んでいた。


 オバハン構文で世話になっていないのに、新魔王の前に女主人の顔をしてやって来た。


 また「嫁」を教育しようとしたり、嫁イビリを開始すると秒で追い出されるが、一応学習したので「ギリイッ!」だけで済ませる。


「王の母上様…… これはこれはご機嫌麗しゅう」


 魔国の宰相と一緒に頭を下げる新王だが、宰相が育てて来た暗愚な第二王子程度で傀儡。


 こいつも宦官みたいに「これは馬か鹿か」をやらかして、家臣団も宰相怖すぎて「鹿に御座います」と言ってしまい、気分が悪くなって下がり「殿下のお仕事はお世次をたくさん作ることに御座います」と言って、酒浸り女浸りの生活をさせて、魔国の王として君臨してきたのは宰相。



「ああっ? 前の魔王殺させたのはお前だな、うちの息子にも危害を加えようとしている、死ねっ!」


「ぶしゃあああああああああっ!」


 そんな不忠者を息子に合わせると、暗殺しようとしたり毒殺しようとしたり、薬で操り人形にしようとして来るのは見えてるのと、実際にそう思っているのが分かったので悪即斬。


 宰相は母竜に、撲殺天使ドクロちゃん的に手刀一本で首を切り落とされて「新しい顔よ~」すらして貰えなかった。


 悪は滅びた。


 後で「こいつね、前の魔王殺したんだよ~、それにあんたにまで悪いことしようとしてたから、ついママカッとなっちゃって~」だとか、猫なで声で御注進して褒めて貰えると思っているのだが、物凄い嫌な顔しておパンツ見せられる。


「駄目じゃないかっ、和平の使者殺しちゃあっ!」


 早速ムチュコタンに見咎められたが、やっぱり猫なで声出してゴロニャン。


「こいつね~~、魔国の宰相なんだけど~、傀儡に座らせてた前の魔王、邪神騎士の嬢ちゃんに許して貰えなかったから~~、魔王弑逆~?ってのヤラカシちゃってね~、あんたやお嫁さんにまで薬盛って殺すか、自由に操って世界を自分の物にしようと思ってたから~~、ママついカッとなっちゃって殺しちゃった~~、許して~~ん」


 ゴリラみたいなムッキムキのガタイした元女神が、ウホウホ臭い息吐きながらバアア臭放って迫って来るのでキモイが、自分の母親なので我慢して聞いてやっている。


 でも今回は、元の平和の使者がやって来たのに、三度とも問答無用で斬り殺した鎌倉武士ぐらいのマジキチムーブだったので許せなかった。


「ああ~、もう、魔国の宰相殺しちゃって、新しい魔王さん腰抜かしちゃってるよ」


『ひいいいいいっ!』


 若い頃から全部宰相にお任せだったので、ここでも何言っていいのかすら分からないし、次に殺されるのは自分だと思い込んでいる。


「どうぞ立って…… 駄目だ、誰か椅子を」


 新魔王の方は膝から下が産まれたての小鹿で、駄目そうなので母竜を追い出す。


「もう、折角お嫁さんが「世界を平和にして豊かにする方法」ってのをやってるのに、ママが殺しちゃったらどうしようもないだろっ?」


「デモデモダッテ、お前にも薬飲ませて操ろうとした酷い奴なんだよ?」


 女さん特有の、例え浮気して来ても、子供が誰か知らない間男の子でも、「でもでもだって」「寂しかったんだもん」「本当に愛しているのは貴方だけ」ジュリエット発言が通用しなくなったら、開き直って「アリバイ作りのためとはいえ、オマエ俺を抱けてうれしかっただろうが!」「俺様の料理食えて光栄だっただろうが!」「だったら父親の種が誰かなんてどうでもいいだろう?愛しているのが俺何だったら、とっととミルク代稼ぎに行ってこい!」「女々しい奴だなあ、だから浮気されるんだよっ!」と言って、ATM奴隷男の子供は決して産まず、家に一銭も入れない系統、働きもしないでブラブラしている男で、DVオラオラ系の男の子供を産む。


 そして叩き出されても、三十年ローンで自分のために建てさせたのが自分の巣で城なので、何度鍵変えられようが出て行かない。窓割ってでも侵入してくる。


 友達には無い事無い事吹き込んで、自分は放置されてDVされたから浮気したんだと言い、何なら旦那が浮気したんだと立場入れ変えて言うので、大学時代の友達がやってきて何故か被害者の旦那がぶん殴られる。


 離婚されて追い出されて接近禁止令が出されてからも、まともな父親の方にぶん殴られてやっと出て行っても、風俗でティムポしゃぶって生きていても、ボロアパートで生活保護受けて生きていても、子供には「父親が浮気して捨てられた」と説明しているので、成人しているはずの他人の子の息子が「お前には俺らを養う義務がある、大学に行く資金を出せ!」と見当違いの権利要求をしてくる。


 君、間男の種で生まれたから他人、と説明しても理解できない系統の障害持った、権利関係理解できない発達がやって来る。



「もう黙って、ここからも出て行って」


「エ……」


 エルフの里からに続いて、現在の屋敷からも追放宣言。


 また最前線と魔の森が滅茶苦茶になるが「棄民」なので、平和を求める令嬢的にもどれだけ死んでも構わない。


 阿片業者か奴隷業者か売人か、路地で阿片食って転がってるか、恐喝してるか窃盗してるか強盗しているだけの奴らなので、ヤクザの仁義とかも存在しない奴らなんで全員「死んで貰います」。


「ぶえええええええええええんっ、ママ悪くないのにいいいいいいいいいいいっ!」


 事ここに至ろうとも「私悪くないモン」が通用すると思い込んでいる。


 暫くしてほとぼりさめたら帰って来て居座る。凝りもしないで嫁イビリを始めて「全く気の利かない嫁だよ」をやり始めて、近所にはいい顔して出て行かない。


 家族には特上寿司でも取って「嫁」には食わせない。適当に助六寿司でも取って差別化。


 女手として立たせておくか、例え妊娠していても台所仕事をさせて座らせない。


 家族として呼ぶのは「憎い嫁が産んだ可愛い孫」までなのだが、子供の方は母親が胃袋掴んでいて心も掴んでいるので決してクソババアには懐かない。


 孫を呼んで「さあ、お婆ちゃんのお膝の上においで」と言っても無視され、土間か台所に行かされた母親の方に行って、「嫁」と一緒に睨んできて、母親に言われた通り「クソババア」と呼ばれて嘲笑われるだけ。


 大抵の息子は「母さんは優しい人で、とってもいい人だから、実家に帰っても苦労しないよ」と言っても、苦労させないのは息子だけで「嫁」の方は道具で子供を産む機械だと思っているので楽はさせない。


 どれだけ妻がイビリ倒されても気付かないで、平気で座っていてイビリ放題虐められても「母さんは良い人だから」暖房されている部屋のドアを閉めて、台所にポツンと妻を放置しても平気。


 でも王の場合お嫁さんをひどい目に遭わさないで、母親を追い出した。


 何故か姉竜の教育の賜物とも言える。


 自分を優遇させて、腐った母親を追い出すためにやったのかも知れない。


「ぶえええええええええええええええんっ!」


 ドップラー効果が効いた泣き声が遠ざかって行って、また姉竜が勝利した。


(フッ、計画通り……)


 姉竜も嘲笑っていたが、嫁イビリされたエルフの兵団も野に咲く花も笑っていた。


(((((((((((((計画通り……)))))))))))))))



(届いた……)


 その頃、ガチレズのお姉さま令嬢にも届いたようで、腹を押さえて悪い顔で笑っていた。


 普通のサヨクみたいにこの世にありもしない、ほの甘い事ばかり言っているのかと思ったが、コイツが計画的に「棄民」を殺戮して遺伝的に世界をきれいにしようとしているので、一番の悪役令嬢。


 邪神騎士になった令嬢なんかは、精々千人ぐらいしか殺していないので可愛い者。


 累計で数万人、最終的には数千万人殺しまくるので、キルスコアでは最悪最凶。


 ここに暴虐竜ドミナントアロンゾの誕生が確定した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その攻撃力999999。竜の少年、絵物語の冒険譚に憧れ、成人時に冒険者ギルドに登録してしまう。過保護の姉と母親も城砦を包囲してしまい、魔獣達は今日もパニック。 @piyopopo2022

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ