第24話受付嬢

 冒険者ギルド(情報部)


 ギルドでは受付嬢が待っていた、鉄面皮で表情筋が死んでると言われながらも待っていた。


 この娘も別の城砦で魔族に両親兄弟姉妹を殺され、自分は王都の学校の寮に入っていたので無傷という経歴の持ち主。


 王国の西の果ては既に魔族に食い荒らされていて、魔の森の南側は陥落していて魔国領域。


 両親の墓にすら参れない、遺体もどこに散逸したかもわからない状態。


 それでも昨夜、殲滅竜の姉が酔った勢いで十二魔将を倒し、魔の森にある物流拠点を崩壊させたという。


 本日ももうすぐ業務終了だが、ギリギリまで待っていた。



「すいませ~ん、また姉さんがヤラカシちゃったみたいで。ほら、姉さん、報告」


 王がギルドにやって来て、姉同伴で薬草採取終了と依頼書片手にやって来た。


「ああ、終わった、一人死んだらしい」


 無造作に「十二魔将討伐」の依頼書をカウンターに置き、弟が討伐証明らしきものを置いた。


「うっ、ううっ、うわああああああっ!」


 受付嬢の方がカウンターに突っ伏して泣きだしてしまい、何事かと思ったが、聞いてみると西の方が解放され、魔族が駐屯していた領域も維持できなくなって後退し始めたらしい。


「に、西の方の城砦…… 魔族に、うっ、占領されてたのが、解放されたそうで、グスッ」


 それも食い物も何も来なくなったので「殲滅竜が出た」と口々に言って脱走兵多数なんだとか。


「へえ、そんな状況なんだ? 受付嬢さんがそんなに泣くなんて、早く言ってくれればすぐヤっちゃったのに」


 情報部員としては出来なかったのと、殲滅竜に過度の接触は禁止されていたので言わなかった。


「うっ、両親の領地だったのに、急に魔族に占領されて、父も、処刑……」


 責任の所在で父親も処刑されたらしい。


 自力で奪回するために冒険者として登録しても、この世界は残酷なのでいくらレベルを上げても、女の力では身体強化しても大してストレングスは上がらず、魔剣の類もドロップしないので万年D級ぐらいで強くなれないので諦め、頭の良さを使って情報部に入って復讐の機会を狙っていた。


 ギルドには詳しいので受付嬢、その上死の危険がある殲滅竜対応担当官に志願した。


 それらの一連の話を涙ながらに話してくれたので、普段から世話になっている相手の泣き売に嵌り「おい、こりゃあメーカーもんじゃないか、俺は買うぜ」と言う訳で、受付嬢のクエストを受けることにして再出場。


「ああ、地方領主だったお父さんも処刑されていて、これでお家再興も叶うかもしれないのか」


「泣かせる話だねえ」


 姉の方も人情噺は好きなのか、弟に優遇されても「ギリイッ!」対応にならずやる気が出ていた。


 西の城砦に行って、軽く十二魔将やらを斬り殺してくる(鈍器)。


 バリバリの銀色の剣が抜き放たれ、刃付けもされていない鉄塊が物を言う。


「誰が同行する?」


「私行きますっ」


 エルフは全員休暇になって里に残ったが、まずルリナが同行。


「わ、私も連れて行ってください」


 危険な所だが、何と受付嬢まで同行を言い出した。


 姉も残っていても仕方ないので同行。まだ酔っていないが、昨日と同様必殺のブレスを放ってしまって、城砦が三日三晩燃えるような事態になるかもしれない。


「姉さんはブレス禁止ね」


「分かったよ(////)」


 内心「キャーー、弟君カッコイイ~~」とか思っているのは内緒。



 一旦城砦に入場したので、出て行っていない扱いで直接移動、どうやったのか分からないが、数十歩で西の果てにある城砦に到着。


「エ?」


 目を二、三回こすったが、夢の中ではなく現実に故郷の城砦に到着。


『やあ、蟻さん、遅くにごめん、これから上の城砦でちょっとヤっちゃうんだ、もしよかったら魔族の半殺しの死体回収してやってくれないかな?』


 魔道具でこの周囲に住んでいる蟻の巣に連絡。手足だけ斬り飛ばした魔族を蟻の巣の底にまで連れて行って貰う。


 蟻の巣は二十四時間営業なので、夜組が対応すれば問題ない。


『畏まりました、すぐに参上いたします』


 善意からの「寄付」と言うか「検体」なので蟻の巣もウハウハ。やったねたえちゃん、家族が増えるよ。



 ほんの数分もすると、直下から大蟻が出場して来て、城砦全体を囲んだ。


 逃げ出していた脱走兵なんかは、外周で全員補足されて地下へご案内。


『あっ、蟻の巣だけは嫌だあああああああっ!』


 魔族語で多数の悲鳴が聞けたが無視。ストーンゴーレムとか大蟻でも手こずる強い魔獣は、丘の上から見ている王がロングレンジのブレスで遠距離射撃して抹殺。


 何かキャシャーンのアンドロ軍団が街を占有したような状態で、門やら跳ね橋なんか大蟻が一瞬で城壁を乗り越えて通過、全周の大通りを大蟻が多数侵攻して行って、絶望的な戦場で魔族が抵抗していたが、3メートル級の蟻に敵うはずもなく、残っていた大半の歩兵が地下に連れ去られて行った。


『スタンピートだあああああっ!』


 今回は暴走ではなく殲滅竜様の露払い。大して経験値を稼がなくても良いので、大蟻が実力行使。


 人間の市民は誘拐しないが、魔族は手足を噛み千切られて軽量化されてから地下に搬入。


『嫌だあっ、嫌だあああああっ!』


 一体何が起こったのか分からないうちに都市ごと大蟻に占拠され、魔族の歩兵や工兵が全員地下に連れて行かれる。


『火を、火を放てっ、奴らは火を怖がるっ』


 火を放って混乱中に逃げようとしても、家屋ごと破壊されて消火されてしまう。


 今までは地上地下で住み分けが行われていたが、突如膨大な蟻が出現して魔族だけ誘拐。



「出ちゃだめだよっ、お前だけはここに隠れてるんだっ」


「ママーーーーーッ、ママーーーーーーーッ!」


 おっかさんが子供を納屋に隠したり、物置の奥に押し込んで、自分は犠牲になっても子供だけを救おうとしたが、人間の匂いがする所は襲撃されず、魔族だけが連れ去られた。


 殲滅竜一行は領主屋敷に到着して、地獄絵図になっている城砦内の治安を回復しようと奔走していた、十二魔将の座所に入場。


『誰かっ? ぼぐじゅああああああっ!』


 本日の軟鉄?剣の切れ味は一味違うのか、警備の兵に問われても順番に手足を払われて、後方の蟻に任せて地下に搬入。


 防御用の屋内用ストーンゴーレムであろうがリビングメイルであろうが軟鉄の剣で破壊。


 ズンズン入場して行ってヴァンパイアもリッチとかも破壊、ワードナ(誰?)クラスであろうとも悪即斬。


 ルリナが屈んで魔石回収をして行き、貧乏癖が直らず頭蓋骨踏み割って胸郭も踏み割って上下の魔石をアイテムボックスに取り込んだ。


 ギルドで売ると金貨数千枚なのだが、王と姉にするとはした金なので気にせず放置した。


『おりゃあっ、受付嬢様のご入場だっ、前領主の娘さんでお家再興を掛けて戦っている良いお嬢さんだっ、邪魔するなっ!』


 目が点になって口をパクパクさせていた受付嬢も、この辺はフラグ立てまくりで「トクン」とか心臓が高鳴り始めたり「ズキューーン」とかハートの中央の十点満点を愛の矢が貫通したり「ヤダ、イケメン、抱いて」状態。


 戦場のど真ん中なのに股間からヌルヌルした物が出て来たり、受付嬢の方も大変だったが領主の部屋に到着した。


 領主の屋敷ごと魔族の戦隊が接収して、この城砦を統治している、でも今日でオシマイ。


『ギーーーーーーッ!(死ねっ)』


 部屋に入るとリッチか不死王が襲い掛かって来たが軟鉄の剣で撲殺。


『お前が十二魔将か?』


『そ、そうだ……』


『前の領主はどうした?』


『かい…… 処刑した。統治の関係で仕方なく……』


 魔族語は情報部員である受付嬢にはヒアリング出来てしまうので、失礼な事を言わないうちに両手足を斬り飛ばして回転させてやった。


『ぐああああああっ!』


「さあ受付嬢さん、貴方はご両親の仇を討つこともできる。しかし、このまま蟻さんに連れて行かせて、半年以上手足がないまま地獄を見て貰って、腹の中から蟻の幼虫に食われ続ける苦痛を与えることもできる、どちらがいいかな?」


 ルリナに与えた前の十二魔将の遺品の魔剣を借りて渡す、軟鉄の剣は人類には持ち上げられない。


「父の仇っ!」


 心臓や首を差そうとしたが、ストレングスが足りな過ぎて十二魔将の装甲値を上回れなかった。


「あとは蟻さんに任せようか」


「ううっ、うあああああっ!」


 泣き崩れてしまった受付嬢をルリナに任せ、大蟻を呼ぶ。


『カチコチカチ、カチカチカチ、シャババ、シュビビ(人道的に翻訳できない)』


 暫くすると働きBBAの1メートル級が複数来て、十二魔将を連れ去った。出来るだけ残酷に殺すよう言い渡して置いた。


『蟻の巣だけは嫌だあああああっ! せめて決闘で死なせてくれっ』


『うん、タップリ苦しんでから死んでよ』


 名誉ある死を求めたが王は許してくれなかった。地下で兵士達と一緒に仲良く抱卵器の刑。


 生えある十二魔将のうち、始めて蟻の巣の底まで連れて行かれて、惨めに無様な最期を遂げる者が出た。


 ギルド出発から約二時間程度のスピード解決。


 通常ヒロインとして登場して、訳ありの家柄で元貴族として主人公と苦労して、コミカライズ版でも3巻ぐらい費やして解決する話が、夕食前の一時で終了した。


 ルリナのお姉さまの貴族令嬢も来ていたが完全にモブ。目を点にして口をパクパクさせている間にすべてが決着した。



「わたくしはこの身の全てを殲滅竜様に捧げます、グスッ、今後如何様にもお使いください……(////)」


 受付嬢も自分が抱えていた問題の全てを解決してくれた王に、何もかもを捧げて仕える気になったが、姉の方は顔を赤らめて恋心を抱いているのを見逃さなかった。


「ギリイッ!」


 これ以上嫁が増えたりするのが嫌だった姉には「ギリィッ!」案件だったようで、シュパアアアッ!と放出しているオーラを強化したが、人類には感知できないので気付かなかった。


 後で一人になった所を襲撃されて脳まで食われたり、バラバラに引き裂かれて記憶や姿を奪われて、人間の皮でも被って変化した姿で弟の前に出て抱いて貰う気でいるが、いつも通りシュパアアアアッ!とオーラが出ているので一発でバレる。


「やだなあ受付嬢さん、こんな時はお互い様だし、いつもクエストを出して貰ってお世話になってるからいいよ」


 王にとっては夕食前の軽いクエスト扱いで、お家再興までの問題を全部解決してやった。


 いつも受けるクエストは薬草採取ぐらいで、討伐クエストは受けないのだが、本日はコネ?で受付嬢の素性クエストを受けて来た。


 個人のクエストなので報奨金とかは発生しないが、城砦を一個解放して十二魔将を一人ぶっ殺して来たので、ギルドからも王国からも膨大な報奨金は出る。


 それでもちょっと年食ってて、冒険者辞めてから情報部に入ったような、自分の年齢の倍近いアラサー女子はノーサンキュー。


 色々ある聖女物で三十路越えのババアが聖女に召喚されて「ツルー、ペター、チビー」の体格と、アジア人で年齢が若く見えるのを利用して、自分の年齢の半分以下の元気っ子騎士やら、二十歳過ぎか中頃程度の騎士団長やら魔法師団団長のイケメン高身分、高身長、高収入の人物と恋愛するのは非常にムリがある。


 バツイチこぶ付きとか処女でも何でもない上に、大学時代は男とっかえひっかえ、彼氏がいても浮気して男選び。海外旅行に贅沢なランチにディナー、贅沢な服装をするためにパパ活して「海千山千で何もかも知り尽くした女はどうですか?」と言われても何も知らない若い子を自分色に染めたり、教えるのが好きな者はそんなキズモノ見向きもしない。


 ディカプリオ様の恋人遍歴と同じく、男性からは二十代中頃までの新鮮な卵子を持っていて、みずみずしい母体が要求されるので、三十路越えの女はノーサンキュー。



『蟻さんありがとう、急な呼び出しにこんなに沢山来てくれて助かったよ。良かったら人間とは仲良くしてやって欲しい。今度人間の国から沢山奥さんを貰ったんだ、出来たらこれからも弱い人間を守ってやってくれないかな?』


『畏まりました、人間とは仲良くして、守ってやります』


 この城砦は人間国で初めて、蟻が周囲を防衛してやる協定が結ばれた。


 これも十戒の石板みたいな物に「人間はトモダチ」と記入されて、蟻の巣の絶対の掟に書き加えられた。


 蟻なので文書は存在しないが、鉄の掟なので全員に共有されて口伝でも伝えられる。


 以後は「カチコチカチ(立ち去れ)」と言って話通じなくても、泣き叫んで腰抜かして小便漏らして立ち去れない奴らでも、両手足噛み切って巣の底にまで連れて行かれる事件は起こらなくなった。


「さあ、これでお家再興だ、この城砦とか周りの城砦も受付嬢さんの領地だ」


「ああ……」


 水星の魔女で、スレッタが「勝ちました」と言って、ミオリネさんがコクピットから出てきたぐらいの幕開け感があったが、同じように話が通じていない相手なので、ガンダムで人間を「ビチャアアッ」と潰しても笑顔で出てくるサイコパスなので、魔族も人間も人を人だと思っていない。



 余りの悲惨な結果に、自動的に周囲の人間国の占領も解除され、王国の西側、魔の森の南地方が一斉に解放されて王国の領土が元に戻った。


 蟻に護られているので独立国宣言しても構わない状況。


 難民のように魔族の兵団が引き上げる姿が見られたが、持ち込んでいた食料が足りず人間から少々略奪され、盗っ人に追い銭になっても、城砦から出て行ってくれるのが最良なので見逃された。



 城塞都市メルカバ


 城門は閉じていたので、これまたどうやって入城したのか? ほんの数歩で帰って来た王一行。


 受付嬢は城砦に残って領主になるように言ったが、家の中も血塗れやら肉隗やらリッチヴァンパイアの死体だらけだったので、特種清掃が必要になって蟻が協力して死体の撤去はしてくれたが、血なまぐさいのは取れなかったので、思い出の故郷で自宅には住めないので帰城。


「すいませ~ん、西の方にある受付嬢さんの故郷解放して、また十二魔将討伐してきました。これで受付嬢さんのお家再興できますよね?」


「は?」


 ギルド(情報部)で報告して、ほんの数時間で受付嬢の領地を開放して来て、統治していた十二魔将も討って来たと報告。


 情報部なので待機していたが、普通のギルドなら閉店時間。


 事実ならトンデモナイ快挙で、周囲の城砦からも一気に魔族が消えて王国領に復帰。


 既に城砦にして六個ぐらい負けて占拠されていたのが全部解放。


 最前線からも物流が途絶えたので総員撤退。王と姉だけの実力で全員下がらせた。


 ここに西側からの脅威が全部排除されてしまい、例え王国の王でも泣き崩れて神に感謝したと言われる。



 王の自宅


 引き上げて風呂にでも入って、少し遅い夕食になる前にルリナに情報部から接触があった。


「ル、ルリナ君、王の報告では受付嬢の故郷、西の端にある辺境伯領を開放して来たそうだが、詳しく聞かせてくれないかね?」


「は? はあ。な、何が起こったか分からないけど、私にも何が何だか……」


 余りにも荒唐無稽な話だったが報告。まず前日の夜、エルフの里で宴会になっていたが、酔った殲滅竜の姉が「宴会芸」として魔族の物流拠点に行って、ブレスで何もかも焼き払って消滅。


 その時、自分も略奪に参加して魔族の物資をイタダキ系女子したのは報告しない。自分で全部ガメてしまい、拾ったリッチやヴァンパイアの討伐証明も自分で金に換える。


 母親に教えると「飲食店経営」とか「良い投資の話が」と騙されるので教えない。仲が悪い弟にも絶対に教えない。


 売れっ子の子役でも、折角稼いできた金を親が管理していて全部使ってしまい、1円も回収できないどころかマイナス以下の裸で放り出されるので教えない。



 今日は受付嬢の泣き売?を聞いてしまった王が気軽に出動。蟻の巣から蟻を呼び寄せ、脱走していた魔族を全部地下に誘拐。


 正門ぶち破らないでも大蟻が大量に入城。人間は連れ去らないで魔族だけ選んで地下に搬入。


 火が放たれても蟻が消化してしまい、ストーンゴーレムとか大型魔獣などの大蟻が倒せない相手は王のブレスで始末。


 領主屋敷に行って、出て来たヴァンパイアであろうがリッチであろうが、良い事をしていると思っているので「今宵の軟鉄剣は一味違うぞ」とゴキゲンのまま全員物理で撲殺。


 十二魔将の一人は、立てかけてあった剣や鎧を装備する暇もなく手足を斬り取られて、受付嬢が仇を討とうとした物の失敗、そのまま王の命令で地下に連れ去られて抱卵器の刑になったと報告した。


「そうか……」


 情報部の人間でも情報量が多すぎてイミワカンナイ。


 事実としては二日連続で十二魔将が討たれて、物流拠点は焦土になり、直径十キロのペンペン草すら生えない焼け野原ができて一部はガラス化。


 今日は受付嬢が泣いてしまったので出動、領地を取り戻してやって、魔族は全員蟻の巣に搬入された。(十二魔将を含む)


 受付で「これで受付嬢さんのお家再興できますよね?」と言って帰ったので、もし別の者が領地を欲しがったからと言って、賄賂や鼻薬が効いたからと領主に任命したりすると「君誰? 受付嬢さんどこ行ったの?」と問われて、相手が王族だろうが両手足切り飛ばされて地下にご案内。



 何より信じがたいのが「エルフの里は蟻に護られている」「受付嬢さんの領地も蟻に護られることになった」で、もし事実なら王国西側は永久に魔族から守られることになった。


「し、信じられん……」


 王の所業なのでいつも信じられない事ばかり起こるが、今日は晩飯前の時間だけで城砦が六個ほど王国に復帰した。


 王は城砦なんか必要ないので「受付嬢」に譲渡。世話になっている受付嬢がお家再興できたのを喜ぶ程度。



 食事用ホール


 夕食に受付嬢も招待されたが、オイオイ泣いてしまって王に縋り付くので、姉に「ギリイッ!」とされて肉の塊か星にされる所だったが、弟に阻止された。


「姉さんっ、泣いてる人にかわいそうだろっ」


 30歳近い受付嬢はアウトオブ眼中なのは知っているが、どうしても取り入って抱かれようと思っている女なので姉が許さない。


 本来15歳までに結婚していないと行き遅れで、二十代や三十代でも病気でバンバン死んで行く世界だが、三十路間近で超行き遅れの受付嬢だったのに、領地目当てに婚約結婚依頼が殺到した、らしい。


 農民市民商人の娘は食事を済ませていたが、お茶でも飲みに来て歓談。


「まんず、物語みてえな話だがや。お家再興ば目指すお姫様が、領地ば取り返して勇者と結ばるる」


「うんだ、どしょっ骨強ええ娘でねえと叶えらんねえ」


 まだ王に食べられていない(性的な意味で)農民の美人の娘と言うのは、マナー以前に言葉を治さなければならない。



 お姉様でレズの貴族令嬢だけは退出して、魔道具で実家にご報告。


「父上、王国の西側にある城砦が、今夜魔族より解放されました」


「ほあっ?」


 野望を持っている親父でもイミワカンナイ。


「昨夜、殲滅竜の姉によって、魔の森の外にある物流拠点が灰になったのはお聞き及びと思いますが?」


「ヘっ?」


 聞き及んでいない。新聞も無い情報が遅い世界なので、知っているのは情報部か内容を教えられた騎士団や王様程度。


 と~~っても新鮮~~(くりいむレモン)な情報なのだが、親父程度ではどうこうできる内容ではなく、せいぜい次男を受付嬢とやらに宛がうか、まだ成人していないショタ三男を宛がう程度しかできない。


「西の端の都市が解放された事、ほぼ全員が地下の大蟻の巣に連れ去られたことからも、周辺の都市も全て解放されることと思われます」


「何と……」


 出来ることは政治力を駆使して今後解放される都市の領主に立候補する程度。でも余計な奴が領主になっていると王にぶっ殺される。


 他のお家再興を願っている息子や娘が入っていないと、王の敵になって命を失う案件。


「その都市は王の呼びかけにより大蟻に守られております、その意味は鉄壁、二度と魔族に脅かされることはありません」


「欲しい、その都市が欲しいっ」


 でも手出ししたら王に「ぼぐじゅあああっ」と殺される。手足切り飛ばされて蟻の巣に搬入される。



 食事用ホール


(イイーーーヒッヒッヒッ!)


 さっきまで泣いていた受付嬢はどこに行ったのか? エルフの長老やら嫁を出した親みたいな笑い方をして、何か皮算用している模様。


 蟻の巣に護られた鉄壁の都市を入手して、もう笑いが止まらない。


 新王国を宣言しても許される状況で、情報部なんかさっさと辞めて、ブラック過ぎる勤労状況をどうにかして、どうせ女だから出世なんか許されないので即辞める。


 それよりもルリナや他の令嬢みたいに、どうにかして王を篭絡して嫁の一人になれば「王の赤ちゃん」という宝物が手に入る。


 卵子と母体が老化し始めている受付嬢だが、今ならギリ間に合う。


 でも王からは女として見られていない、少々デブい感じになっているのも致命傷。


 橋本環奈が最大級デブっていた頃ぐらいにはデブい。一部のマニアから「橋本環奈の腹」と言われるぐらいデブ好きならどうにかなったが、十代の引き締まった脂肪がつかない肉体を失ってしまい、ウエスト70超えのユルユルの腹をしているので選ばれない。


 既にエルフの超美少女も13人ほどいる上に、十代前半の貴族令嬢、商家農家の美人のょぅじょも貰っているのでムリ。


 足りないのは子供産めるデカイケツと、デッカイオッパイだけ。


 ただ、モー娘。のオーディションみたいに、小学生で合格した時には輝くような美しさがあっても、移動中に弁当やらお菓子食べ放題なのか、高校生になるとデッブデブになってしまい「黒い三連星」と呼ばれるぐらいのトリプルドムになって、踊ったりするとドッスンドッスン鳴る失敗案件に。


 西村里香みたいに凄い肩幅になってしまい、斜めに撮影しなければ太すぎたりするかも知れないし、骨格が変わってしまい、幼い頃は妖精のように綺麗な子も、ガイジンサンならケツアゴになったり髭が生えたりスゲエガタイになって、成人すると非常に残念なことになる。

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