第23話殲滅竜またたび
魔の森西側
王国とは反対側の、魔の森が果てる場所。魔国の範囲を更に通過すると海岸に出て、悪魔の島であるイギリスみたいな魔族始まりの地がある。
そこにも魔族が建設した石積の出城があり、奥地侵攻の足掛かりとする砦が作られていて、ここを経由して魔の森にも南や西の前線に出兵出荷されている。
本国か大陸側で出生して、健康で動ける者は新兵となり、安い給料や略奪で儲けようと、数万分の一の確率で手柄を上げて出世しようと、田舎や農村からも出てくるが、大半は弓矢で死んだり頭割られたり、城砦に取り付いて梯子から突き落とされて、上から石を落とされたり煮え湯を全身で浴びて殺される。
単体でも人類やエルフよりも頑強なので、生産ユニットとしても安く多く、魔法職やテイマーにゴーレムマスターでも低いコストで教育量産できて、何の能力もない兵士ばかりできる人類よりも非常に有利。
そんな強い魔族であろうが「誤差」でしかない、酔った殲滅竜の姉が来てしまった。
急に出城のど真ん中に出現して、同行者は王とエルフの嫁達、ルリナと貴族令嬢。
『何者かっ?』
本営を警備していた兵士に誰何されたが、姉は答える気が無い。
『ウルセ~~』
鎖かたびらを着ていた兵士達だが、軽く手で払われると「ビシャアアアアッ!」
と爆散して飛び散ってしまい、壁の染みになったり、切り飛ばされた上半身は星になったり、下半身も数百メートル飛行して重力に引かれて墜落した。
木製の門は吹き飛んでしまい、大規模襲撃を予想していなかった出城の中心地では無防備状態。
『ウへへへ』
姉からすると全部虫けら以下。酔った勢いで軽く十二魔将を討伐しに来ただけ、それも宴会芸の一つとして。
『おうい、十二魔将ってのはここにいるのか~?』
もう問いかける人物は爆散してしまったが、デカイ声で中にいる人物に聞いてみる。
今回蟻の巣にも通達していないので、死体を片付けてくれる者がいない。
『出会えっ、出会えっ! 本営に侵入者っ!』
ロープが引かれて鳴子が慣らされ、門の兵士達は犠牲になったようだが、砦側でも反応して周囲の就寝していた兵士も起こす。
大型魔獣の襲撃でもあり、外周なら門番の兵士が犠牲になることもあるが、こんな内側、それも本営の門が破られることなど無いので、突如侵入警報が鳴らされた。
『おお。集まって来たじゃねえか』
まず遅番の兵士が出場、ギャラクター基地かDOOMのマップ並みに兵士が湧いて来て全員が犠牲になる。
姉的には殺虫剤でもぶち込んでやると、汚水のピット辺りからゴキブリがうじゃうじゃ湧いてきた程度の感覚。
『来た来た』
まず手刀を一振りしてやると石積みの壁が崩壊して、前方の90度以上から120度が切り取られて、高さ一メートル少々の衝撃波の経路にいた者が首や肩の高さで斬り飛ばされて行く。
『うぎゃああああっ!』
そのまま衝撃波が外周の城壁まで突き進んで、天幕やストーンゴーレムの足、積み上げられた補給物資も切れて吹き飛び、火を囲んで座っていた連中も交代で食事していた者も首が飛んで死んだ。
流石の弟やらルリナでも目を逸らすほどの惨状で、これから起こる惨劇を予想した。
『おい、オマエラ、その辺の食い物やら金目の物、全部かっぱらって来いっ』
『サ…… サーイエッサーッ』
エルフの少女ょぅじょ、ルリナにお姉様の貴族令嬢までもがパシらされ、穀物のサイロやら集積物資、梱包されたストーンゴーレムとか金になりそうな物は片っ端から押収されアイテムボックスに投入。歯向かう物は射殺されたり爆破されたり石にされた。
後ろで督戦している義姉の方が怖く、前方の魔族がどれだけ恐ろしい相手でも斬り殺した。
『よ~し、そろそろ戻って来いや』
十分程度の「お買い物タイム」を与えられ、目に入る金目の物を全部かっぱらって来たエルフ達が呼び戻された。
既に結構な地獄絵図だが、姉だけが笑って見ていた。月とマリア様だけが見ていたような優しい光景ではなく、またも死山血河。
『アハハハハハハッ、アハハハハハハハハハハハハッ! 魔族がゴミのようだっ、ヒイイイイイイイイイインッ、ドバアアアアアアアアアアアアッ!』
狂ったように笑った後には、必殺のブレスが放たれた。
一応エルフ達の安否確認はされているが、整列して「1,2,3」と点呼を取るようなことはしていない。
左前方から回転するように左後方に向かって放たれ、右側には弟がいたので放出を停止。
半周以上に渡って放たれた青白い炎は、建設中のアイアンゴーレムの足を溶断し、即座に爆発炎上。
周辺にいた魔族や、テントや物流拠点にあった物資などは蒸発して消えた。
もうこの時点で十二魔将でもレジストできず、寝る前に軽い服装に着替えていたので熱線が通過して死んだ。
大した強者でもなく、兵権やら地盤に看板に金やコネを持っている人物なので、ここまでの剥き出しの暴力に晒されたことなど無い。
副官のリッチや不死王などは、どうにか物理防御魔法で耐えたが、ヴァンパイア程度の者には死が訪れた。
続いて弟を巻き込まない位置から再度ブレスが放出されてしまい、残りの半分も焼却。
射程距離である五キロ程度、石壁の城砦の外まで高温で焼き払われ、地面まで焼き尽くされた。
文字通りペンペン草さえ生えなくされて、虫も苔も何もかもが焼かれ、学校のグランドみたいに一回焼かれた土になって、何も生えて来ない土に変更。
どこかのハーンの孫が戦死した戦場のように「一草一木に至るまで命を奪われた」状態で、小動物や虫、雑草や樹木まで全て爆散して弾けて焼死した。
最初に殲滅竜が到着して時点で、尻尾巻いて逃げだした魔獣だけが助かり、中心地から半径五キロにまで逃走できた者は熱線に焼かれずに済んだ。
周囲では火災旋風が起こるほどの業火に包まれたが、三次職の者は耐火して生き残った。
『お~し、次行くぞ~、ついて来い…… グ~~~~~』
殲滅竜は酔って弟に寄りかかって眠ったようだが、全員膝から下が産まれたての小鹿になって、本物の殲滅竜の恐ろしさを改めて思い知らされた。
暫くすると何かを抱きかかえた不死王が、ヨロヨロと歩み出て来て王の前で膝を屈した。
骨の周囲に張り付いている腐肉も余りの熱で燃え、ローブも大半燃えているのでスケルトンに見えるが、頭蓋骨の中と胸郭の中の大きな魔石が不死王だと証明している。
『恐れ入りましてございます、もう生きている者はおりませんが降伏させて頂きます、今後殲滅竜様には歯向かう事無く余生を過ごしたいと思います』
もう心の根幹までへし折られているので、副官や参謀としてブイブイ言わせるのもやめ、ガッタガッタ震えながら十二魔将の遺品と、わずかに残った自分の身の回り品だけでも持ち帰るつもりでいる。
書物など紙製品はアイテムボックスの中ですら燃えてしまい、びん類なども焼けてひん曲がっている。
『あ~、それ十二魔将の遺品? 冒険者ギルドに証拠品として持っていくから、引き渡して貰えないかなあ?』
『はっ? はい……』
王の要求だったので、不死王も引き下がって提出した。「せめて遺族に」とは思ったが王の方が偉い。
まず一発目のブレス以降、十二魔将の遺体も燃え尽きてしまい、以後も生存者を求めて「誰かっ? 誰か~~っ!」と泣き叫んで探し続けたが、同僚のリッチも焼かれて破壊されたのか、ほうほうの体で逃げ出したのか、生存者は発見できなかったので、最後の生き残りとして王の前に行き、誇りを持って降伏してみたが、ここで命を奪われるのなら仕方がない。
『うん、行っていいよ、ここがどれだけ悲惨な目に遭わされたのか、俺の姉さんの仕業なんだと伝えて欲しい』
『はっ、承りましてございます』
不死王も強大な力を持つ、殲滅竜の姉の所業だと思い至った。
弟の方が人間の里で冒険者になり、十二魔将が生きていけない所まで追い詰めて、決闘によって命を奪われたのまでは知っていたが、まさか冒険者登録した姉が「十二魔将討伐」「魔王討伐」のクエストを受けたのまでは知らない。
やがて不死王も炎の中をトボトボと歩いて行き、グスグス泣いて失われた物の大きさを思い知りながら退出した。
猛烈な炎の中では飛行魔法も転移魔法も使えないのか、精神的ダメージが大きすぎて魔法も使えないのか、一人寂しく部下の名前を呼びながら歩いて行った。
もう「杉野は何処?」どころじゃない破滅を与えられ、不死じゃない部下は確実に死んでいる。
以後、石造りの出城であったが、可燃物や木造部分の門や櫓が燃え続け、魔族の遺体や集積物資も燃え、三日三晩燃え続けたと言われている。
嘗てこの場所は数万人が集う集積拠点で、御用商人や物資が集まる一大流通拠点があった。
それらが失われてしまい、魔族は魔の森への拠点失い、二度と恐ろしすぎる強者がいる方面へと進出してこようとはしなくなった。
魔国管理下に置かれた、この地域の人間国の者も多かったが、重要案件や侵攻拠点として使われることもなくなり、突然の徴税や岸田首相的な「よし、逆らったから増税だ!」が無くなり、王の侵攻に恐れながらも、住人は楽に暮らせるようになったと言われる。
経験値6258万を得た。82億ゴールドを得た。
『帰ろうか?』
姉の宴会芸に付き合わされ、地獄を見せられた一同。
自分達も何度も地獄を作り上げて来たが、周囲五キロ全長十キロに至る焼け野原を作成したことはない。
「はい……」
『サー、イエッサー』
ルリナもエルフの少女ょぅじょも、余りの惨状と人が焼ける匂いをたっぷり香がされ、足全体が産まれたての小鹿にされたり、目を点にして口をパクパクするだけだったが、どうにか正気に戻って帰還。
寝ている姉をそのままおんぶして連れ帰る。
『うんしょ』
『グーー、グーーー』
襟の中に寝ゲロされる恐れはあり、通常ならJKの吐瀉物などは「我々の業界ではご褒美です」になるが、弟なのでノーサンキュー。
どうにか全員エルフの里まで帰り、ギルドは閉まって営業終了していたので就寝。
魔族の物流拠点が灰になって、この世から消え失せたのを長老に報告してから寝た。
『と言う訳で、姉が十二魔将討伐のクエストを受けてたんで、ブレス吐いちゃって全部焼け野原に……』
『は、はあ……』
この時点で、これまでの失態は全部消えるぐらい称賛され、歴史に残る英雄王として銅像が立つぐらい歴史に名が残った長老。
飲み会現場
『ヒャッホーーーーッ! 魔族の奴ら死にやがったーーーーーーっ!』
『魔の森の西側の拠点が消えたーーーーーーっ!』
『ウエェ~~~~~イッ!」
長老や古老、若い者(数百歳)の中でも飲み介は宴会を続けて、夜明けまで飲んで騒いで痛飲した。
翌朝
「やあん、もうお嫁に行けない~~ グーーー(////)」
姉は「目が覚めたら裸で、横にいる裸の弟に頭を乗せて抱かれながら目が覚めた」と言う不届きな夢を見ていたが、昼頃まで寝た。
着衣をほどいて貰えず、そのまま宛がわれた客室のベッドに放り込まれて放置プレイ、という処置を受けていたが、自分がぶっ殺した魔族の末路なんかこれっぽっちも考えずに寝ていた。
ベッドに放り込まれてから、世話係が服を脱がせて寝巻に着替えさせたので、弟に下着姿になるまで脱がされたり、全裸にされていかがわしい行為を全部されてしまったつもりでいる。
他のメンバーも多少寝過ごしたが、エルフ隊の隊長格が朝のうちにギルドへ行って報告。
『な、何を言ってるのか分からないと思うが、私にも何が起こったのか……』
殲滅竜の姉が魔族の物流拠点に行き、必殺のブレスで十二魔将であろうが兵士であろうが、ゴーレムを作る職人やら魔石を調整したり魔力を込める職人など、一人残らず抹殺したのが伝えられた。
直径十キロに渡るペンペン草すら生えない更地ができてしまい、自分達が立っていた場所以外は焼けただれて、一部ガラス化した場所まで出現していて、モヘンジョダロか何処かみたいにラピュータの雷とかインドラの矢で破壊されたような場所だけが残った。
『焼き払う前に金目の物を略奪して行くように言われ、穀物や食料、梱包されているゴーレムなど、目についた物は全部取って来ました……』
エルフの里で消費する食糧の数十倍、数十年分の食料を十数人のエルフで所有していて、里への忠誠心から供出した。
王も「うん、全部取っておいてよ、エルフの里で使って」と言ってくれたので、13人で回収した分を全部エルフだけでガメた。
まあ、エルフのギルドは他と提携していないので大騒ぎにはならなかったが、人間国では騒ぎになった。
王都騎士団
また騎士団長に報告しなければならない案件、それも数千人単位の生木で組んだ駐屯地ではなく、石積みの歴史ある出城が消えてしまった。
それも一大物流拠点で数万人単位が住んでいて、数多くの職人や兵士がいて、出入りの業者が食料や資材を大量に搬入して、完成したゴーレムやテイムし終わった従魔などが出荷され続けていた拠点、そこに人間国の労働者として潜入したり、ダブルスパイとして潜伏していた者達からの連絡が途絶えた。
「魔の森の西側にある、魔族の物流拠点が消滅しました……」
「エ……?」
情報量は少なかったが「そんな事有り得る訳がねえだろ、希望的観測とか寝言は寝て言え」と言う訳で二度聞きした。
でも先日の報告「殲滅竜の姉が冒険者ギルドで、十二魔将討伐と魔王討伐のクエストを受けて行った」と言うのを思い出し、それなら有り得るのでは?と思い至って続きを聞いた。
「が、外部から潜入を試みていた者達の報告では、夜半に猛烈なブレスが二度発射され、何もかも全てが焼失して、潜入した者も帰って来なかったと……」
人間国のダブルスパイや内部にまで浸透した者の安否は絶望。
魔族の物流拠点が消滅すると、今後数十年はこちらに手出しできないので大勝利なのだが、余りの犠牲者の多さと、味方だけではなく敵である魔族に対してだが、どれだけ凄まじい暴力が振るわれたのか、恐ろしすぎて気分が悪くなり、騎士団長ですら眩暈がして「ビチャビチャビチャア」と嘔吐した。
「おげえっ、オロオロオロオロっ」
騎士団の被害は、団長が部屋でお好み焼き二、三枚焼いた程度で済んだ。
「犠牲者の数は最終的には十万人に達するかと…… 生存者はおりません。王家では余りに多い被害者数から、敵国であっても弔意を伝える予定だとか」
「まさに災害、殲滅竜」
騎士団長も報告している武官も悲しくなってしまい、たった一夜の戦闘でそれだけの犠牲者が出たなど考えたくも無かった。
それでも一つの可能性が思い浮かび、それ以降その思いは拭えなくなった。
「もしや、勇者……?」
数万の敵を薙ぎ払い、駐屯地でも物流拠点でも悪を挫き、十二魔将であろうとも次々に倒し、魔王を打ち払う者。それは勇者の物語でしかありえない。
王家でも殲滅竜の姉と弟の勇者指定が行われるか検討されたが、余りにも怖すぎて王都に呼んだりしてご機嫌を損ねると、今度は王都が更地にされてしまうので却下された。
エルフの里
「ルリナちゃん、『野に咲く花』ちゃん、今度は何に転職する?」
「へ?」
『エ?』
二人ともついに三次職をカンスト、余りのも多い犠牲の上に立って、普通の人類や亜人では到底到達できない所まで達した。
「どれどれ?転職ツリーを見せてごらん」
「ひっ」
『ああっ』
二人共色々と調べ上げられ、脱がされたりおっぴろげられたり捲(めく)り分けられたり、とても恥ずかしい所まで全部調べ上げられた。
「そ、そんな所まで」
『恥ずかしい……』
「信仰心が足り無いから、神聖騎士は無理だなあ? 一杯経験値にしたから悪行は足りてるけど、カルマやカリスマが足りないから邪神騎士にもなれない。まあ天使貴族とか悪魔騎士とかになれるまで溜めておこうか」
「はあ……」
『分かりました』
異次元の申し出で、自分達が神の戦士の一歩手前まで来ているのが理解できない。
神聖騎士邪神騎士の時点で、天上人と呼ばれる天使形態の神人か、地獄の戦士でなければなれないジョブだが、天命を受けている二人なので更に上を狙える。
その日は飲み会明けだったのもあり、姉待ちで昼頃までぶらぶらして、遅い朝食というか昼食を取ってから一旦解散。
エルフの子達は故郷に帰って来ているので、そのまま休暇を与えたので実家に帰った。
王の子を妊娠していないか妊娠検査紙などでとっくり調べられたそうだが、当たり判定が出たら親が「イイーーヒッヒッヒッ!」と笑い出したり、里やギルドに供出していない物品や家電?製品を出して母親に喜ばれたりした。
『穀物が大量に入っているサイロが二本、瓶詰など保存食なども大量。野菜や干し果物、干し肉は外部に売るとして、魔族の金貨も数万枚、大きい魔石も大量。清潔な水が出る魔道具にコンロに冷蔵庫が各家庭に渡しても余るほど、一体どれだけの富が里に齎されたか?』
エルフの少女ょぅじょが回収して来た物品がどれだけ多いか、どれだけの富や楽な生活や文化的な生活が送れるのか、エルフの里では殲滅竜の姉様様だったが、人間の里ではまだまだ恐怖の対象。
里の便所全部ボットン便所だったが、水洗化も考慮に入れられるほど。
金貨の運用先も探されたが、魔国に持ち込むと足が付く上、人間国に持ち込めば為替が違うので価値が数倍に跳ね上がるのが分かった。
ペリーが江戸に来た時も二朱銀の価値が違い、香港に持ち込むと銀のレートが違うので値段が数倍に跳ね上がり、ペリー一人だけで数京円儲け国内の銀の流通が減り過ぎ、銀の含有率が低い二朱銀が作成されたと言われている。
この間倒産した仮装通貨のFTXなども、日本とアメリカでビットコインを入手できる金額に差があり、その差を利用して儲けてCEOが会社設立。
自分の所で扱っているFTTという通貨にすると5%利息が付くようにしていたが、利払い不能になったのか、客の金に手出ししてもっと怪しい所に投資していたのがバレてしまって脂肪。
後から「顧客のパスワードがクラッキングされて現金が流出している!」などと嘘をついて、バッグに金を詰め込んで逃げようとしたが失敗、南米の警察に逮捕されて人生まで終了した。
『イイーーヒッヒッヒッ!』
また長老古老が皮算用して笑い始めたが、姉竜が「私がカツアゲした金貨だから返せ」と言われると差し出すしかない。
『さて、これは王にお願いしておくしかない』
差出量を減らすか、無かった事にして誤魔化すしかないが、姉竜は朝に見た夢でゴキゲンだったのか、固いことは言わず義理の妹達が回収した金貨や物資まで奪おうとはしなかった。
酒で酔っていて覚えていないとも言う。
他の連中に聞いても「王におんぶして貰って帰って来た」「お姫様抱っこされてベッドまで運んでもらった」「メイド連中が靴や服を脱がせて寝巻に変えさせた」と聞いたのでゴキゲンとも言う。
最後のメイドに着替えさせてもらった、と言うのは気に入らなかったが、朝の目覚めは裸で弟と抱き合っていたことに記憶を書き換え、昼まで寝ていたので弟は立ち去っていたんだ、と言うことにしたヘンタイ姉。
『デヘヘヘヘヘヘヘ』
弟との「初めての共同作業」を済ませて、何やら笑っている姉竜。
弟の行方を聞くと、ギルドで昨日の顛末を報告していると聞かされ歩いて行った。
『見ちゃいけませんっ!』
『貴方だけでも逃げてっ!』
過去の行いが災いして、エルフの一般市民からの扱いはこの程度。
目が合ったら殺す、肩や刀の鞘が触れたら殺す、見知らぬ旅行者が歩いていたら殺す、などなど、チームを解散するまでは半グレどころじゃないグレグレ、鎌倉武士レベルのマジキチだったのでボッチ姉。
でも弟の肌のぬくもりを覚えていて、エヘエヘしてるので無傷(実在しません)。
起き抜けに下の口の方に穴が開いていないか確認したが、膜が無傷だったので「チッ!」と舌打ちしてしまった。それでも弟にセキニンを取らせる気マンマン。
夢を現実にしてしまおうと、有らぬことを人前でホザいて努力してみる。
『ええ、姉が手刀を放った時か、ブレスを吐いた時に十二魔将も誰も彼も亡くなったようで、不死者の副官が来て降伏したんです』
エルフのギルドで事情聴取されている弟を見付けて、隣に座り込んで腕を巻きつけてみるテスト。
ギルマスの個室なんかない場所なのと、他の客なんかいないので受付前のテーブルでお話中。
ここで報告しても人間のギルドと提携していないので、十二魔将討伐の報酬は出ないが、嫁達にタップリ稼がせてやったので謝礼は出る。
『ねえ~~? 今朝目が覚めた時、私裸で~、弟君の胸に抱かれてたと思うんだけど~~』
嘘である、昼過ぎに目が覚めた時にはエルフの寝巻を着ていて、ダブダブのはずが胸とケツがパッツンパッツン過ぎて、細いエルフとは体形が違い過ぎるのを思い知った。
『してないよ(キッパリ)』
ギルド職員との会話のTPOも考えず、いきなりエロ会話を始める姉をたしなめたが、弟の方は昨夜エルフ嫁と同室になるよう仕組まれ、全裸のメスが寝床に大量に来てしまい、自分で準備し終わっている同年代の少女と寝て、次の女の子も準備を始めて両手にウッハウハだったのが姉にバレると、般若の顔に変化してぶっ殺されるので自重した。
ついでにルリナまでやって来てしまい「この泥棒猫共が~~っ!」と開始してしまい「ギャオオオン、ギャオオオオオオン!」が連発されたが、泡しか出なくなった頃に仲間に入れると大人しくなった。
どっかのペットショップに入院していたロシアンブルーの猫みたいに、他の入院中のメス全員に種付けして、15匹全員を妊娠させて、翌朝満足しきった表情で点滴を受けているような顔をしていたが、姉に知られるとやっぱりぶっ殺されるので自重した。
『ね~え~、セキニン取ってよ~~、あいたっ』
五月蠅いので無言でチョップを入れて処刑したが、周囲の者は姉竜を見て固まっているのに、空気読まずに姉をシバいたのを見られ、周りの空気が凍り付いて全員の足が産まれたての小鹿になっているのには気付かなかった王。
今まで一切話通じないのが姉竜だとされていたのが、弟君の前では大人しく、猫の皮二三枚被って大人しくしているのだと観測し始められたのは最近なので、エルフの誰も知らない。
夕方には引き上げて、人間の城砦の門が閉まる前に帰ったが、姉竜は家に帰りもせず付いて来てしまい、また城砦に入場してギルドへ報告に行った。
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