第6話 エルフ族出撃

 ルリナの家


「イヤッホ~~~~ッ! ラッキ~~~~ッ! ルンタッタ~~~ッ!」


 初出だがルリナの母親である。


 病気も治り、アホ顔して踊り狂い、ルンタッタしてスキップなどして、天井が低い平屋のバラックに住んでいたので、天井や鴨居で頭打っていた。


 娘からは生活費として情報部からの支度金の金貨一枚を手渡され、それ以降も「娘が王と同じ宿に宿泊する」と教えられ「娘の処女が高く売れる」と聞いて「性交?報酬は金貨二枚」と教えられていた。


 患っていた病気の種類も、貧しさから来る物で、大体が脚気とかビタミン不足。


 日清日露戦争当時、海軍ではとっくの昔に原因が判明していた脚気も、陸軍の医務を司っていた森鴎外が、「日本食は完全食であり、改良の余地無し」と公言し、一汁一菜とか米と梅干しだけの食事で脚気を出し、二〇三高地で戦死したより多い、二万五千人以上を脚気で殺した。


 書店から森鴎外の書籍は全部撤去して、青空文庫等でヒトラーの書籍などと同格に扱い、歴史的資料として見れる限度にしておくべきである。


 映画化映像化などもってのほか、伊豆の踊子などは文学界から持て囃されていても、発禁処分を受けても良いはず。



「ヒャッホ~~~~ッ! ルリナが高く売れた~~~~っ!」


「売れた~~~~!」


 弟の方も一緒に、弧旋舞みたいにグルグル回って踊っていた。


 娘も朝まで帰って来やがらなかったので、もし娘を売春宿に売っても、五年の年季奉公に行かせても、精々銀貨一枚になるかどうかの安っっすい娘だったのが、なんとまあ金貨二枚で売れた。


 旧東側諸国みたいに、外貨のドルを得るためなら、全員が積極的に体を売るような世界。


 今の顔とか体が良い奴だけ売れるパパ活など可愛い物で、外国人と素性を知られれば、不細工すぎるオバハンでも全員が体を売る交渉をしてくる。


 父親が早くに死んでからは、夜の仕事であろうが何だろうが、体売って生活していたルリナの母親は、「一肌脱いで」稼ぐのを恥とも思っていなかったし、貧民街の連中全員がそうしていて、弟の方の父親が誰かなど気にしていなかった。



 さらにゴブリン討伐やオーガ討伐、ゴブリンの巣の駆除、エルフの隠れ里解放の報酬なども受け取っていたのは知らなかったが、娘は現在金貨二百枚程度を所有している。


 何年でも遊んで暮らせる金額で、食事は毎日できて餓え知らず。


 冬場の薪の量を気にすることも無く、もっと金持ちがいる街中にも移住できる。


 街の連中は命が惜しいので別の街に逃げたり、生活ランクが落ちて別の街の貧民街に転がり込んだりしていたが、ルリナの母や周囲の住民は、これ幸いと泥棒に行って、放置された生活用品を盗みに行くほど貧しかった。


 これ以下の生活はスラムぐらいしかなく、取られる物は命ぐらいしか持っていない。


 ルリナは子供なのと弱者女性?なので、それほどひねていなかったが、近所の少年などはマフィアに所属していて既に殺し合っていたり、イスラム武装組織みたいな場所に身を投じていて、街や王族貴族に怒りを持っていて、何時でもシャヒード(自爆)出来るぐらいのステータス。


 パレスチナや各所の難民キャンプレベルで、食料を配給してくれる国連職員や国境なき医師団に、口汚く罵りながら投石しているレベル。



 それに、娘は大聖女をカンストしていて、三次職侍大将レベル1。毎日金貨百枚を稼いで来れるレベルの冒険者だとは知らない。


 こんな家に王を招くのは恥ずかしすぎたので、ルリナが身支度させられている近所の貴族家とまではいかなくても、空き家が増えた街中に移転するよう言われ、一家で引っ越し開始。


 まるで「比較的豊かな平民街に住んでいますよ」みたいな振りをすることになり、ママと弟で引っ越し中。



 エルフの里


 壇上に目付きがイカれた長老が立ち、鉢巻き撒いて頭に鉄甲。居並ぶ住民をアジっていた。


『野に咲く花よりの念話が入ったっ! この里を開放してくれた王がっ、公安に捕まり逮捕拘禁されているっ! 儂らが付けてやった野に咲く花と、人間の娘を抱いたので、ょぅじょへの強姦罪だそうだっ! 皆の者っ、そのような事を許せるかっ!』


『否っ!』


『許せる訳がないっ!』


『王を救えっ!』


『恐ろしいオーガより、我らが里を救って下さった救世主っ!』



 エルフなので魔力一杯で精霊ともオトモダチ、人間が使えない精霊魔法とかもガンガン。


 これだけ士気が高ければ、城砦の壁や門など溶けるレベルで壊され、従(テイム)えている恐ろしい魔獣なんかもいらっしゃい。


 槍と剣で立ち向かってくる人間など、一瞬で蹂躙して城砦が陥落する。


 人間の中にはそんな高度な魔法を使える奴なんか存在しない。


 エルフょぅじょは戦って戦って戦って死ぬと言ったが、ホモゴブリンよりも強くて、オーガ155匹には敵わないレベル。


 人間と全面戦争になるのが嫌で戦わなかっただけで、城砦一個、人間の首全部叩き落として殺し尽くせるぐらいには強力。


 でないと人間に占領され、全員奴隷として売られてしまう。



『大丈夫(ますらお)達よっ、兵(つわもの)達よ立てっ! 今こそ恩を返す時っ! 王を冷たい牢の中に取り残してなる物かっ! 人間共の城砦を討ち果たせっ!』


『おおっ、おおっ、おおっ!』


『勝鬨を上げろ~~~っ!』


『うおおおおおおおおおっ!』


『エルフ族、出っ立~~~~~~つっ!』


『おおおおおおおっ!』


 長老も血管切れるレベルで大声を出し、住民もブチ切れて出立。



『フェフェフェ、この婆の命の使い時じゃ、オーガには勝てなんだが、我が秘術、人間共に見せてやろうぞ』


 もう孫に曾孫までいるので、残りの人生立てなくなったり歩けなくなったりする前に、命を使い果たしてでも王への返礼にするため立った老婆。


『さあ、儂らも死に時だ、王よ、お待ちください、すぐに牢獄から解放して差し上げます』


 もう目がイっちゃってる老人とか若者も、瞳孔開いちゃってる系統の、狂信者の目で出立。



 王都騎士団


「エルフ族、続々と出立しております。今までにないレベルの出陣。老婆や老人まで王を救出せんと、皆死兵となって尋常ではない雰囲気で、何と長老までが出兵。沢山の従魔を率いております」


「ああ~~~~」


 いつものように騎士団長も両手で顔を覆い、どのように城砦を守れば良いのか考えあぐねた。


 老婆老人までが出陣し、長老まで自ら出兵したとなれば、エルフは決死の覚悟で城砦を攻めて来る。


 里の防衛など考えていないので、あらゆる従魔を率いて、エルフょぅじょが言ったように全員が死兵。


 生き残ることなど考えずに突っ込んで来る。



「続いて、ゴブリン、オーガの情報ですが、言及されていた通り、エルフ族と同じく、奇声を上げて出兵を呼びかけております。命を許された大半がこちらに向かっている模様」


「左様か……」


 もし連携が取れていないエルフとゴブリンを追い返せても、最後にオーガの軍団(レギオン)がやって来る。


 剣も槍も通用せず、大型殲滅魔法を使える冒険者などおらず、宮廷魔法士がいてもエルフに討ち取られている。


 城門など肩から一発タックル喰らうだけで紙の如く破られ、外堀なんか一切役に立たず、生き残っている住民も逃げ惑い、オーガに食われて死ぬだけ。


 城塞都市メルカバはモンスターパラダイスになり、エルフ、ゴブリン、オーガの波状攻撃で必ず滅ぶ。


「王を牢から出せ……」


 騎士団の乾坤一擲の作戦が発動された。



 公安


「王よ、釈放です、出て下さい」


「え? いいんですか?」


 取調室で王をイジっていた公安の者も、最悪の事態で釈放するしかなくなった。


 イジり過ぎてブチ切れたりして、実力行使で出られると城砦脂肪だったが、外部の者が許さなかった模様。


「良かった、良かったあああっ!」


 ルリナも泣いて抱き着いているが、全部芝居。


『王よ、お導き下さい』


 全部このエルフょぅじょの仕業なのだが、公安の厳重な警戒の中からも、平然とエルフの里に念話を送り、連絡先を聞いていたオーガやゴブリンにも、どうにかして連絡を付けた人物。


 ある意味非常に優秀な人物なのだが、城塞都市から見ると死の天使で悪魔。



「いやあ、やっぱり娑婆はいいなあ」


 朝日を浴びて背伸びでもする。わざと狭苦しい場所で詰められ、公安の人物と膝を突き合わせる距離で置かれ、かつ丼とかも食わせて貰っていない。


 それでも挫けなかったら、フルメタみたいに濡れていてジメジメしていて、血が落ちていて拭っても取れないような牢屋の中に放り込まれていた。


 それ以前に周囲が行動してくれたので、牢屋行きや便所も無い地下牢には放り込まれなかったが、エルフが侵攻して来た。


 表に出されるとすぐに、死体みたいに青い顔をした新ギルドマスター(情報部)と、受付嬢(情報部)が待っていた。


「緊急クエストです、怒ったエルフが進軍して来ています。他にも未確認情報ですが、王が許したゴブリンとオーガも攻めて来ております。どうか街を救ってください」


「は?」


 騎士団が行った乾坤一擲の作戦ではないが、冒険者ギルドからの緊急クエスト(強制)で、「怒ったエルフとゴブリンとオーガから街を救え」のクエストが生えた。


 まあ、王が牢から出ていて、城砦の外で話し合えば解決する。



 城外


 冒険者としてクエストを請負い、エルフの長老とかオーガと話し合い。


 その間に騎士団主催のパーティー?の準部が始まっていた。


「あれ? 屋外パーティー? なんでこんな場所で?」


「王よ、お早く着替えを」


「エ?」


 暫くすると、空間転移魔法を使ったと思われる、エルフ族が城外に到着してしまった。


『王を救えっ、人間共など皆殺しだっ!』


『おおおおおおっ!』


 血走った眼付きで侵攻開始、もうブチ切れているので少々の事では覆らない。


 本気で攻めてしまい、ルリナとか殺してしまうと、逆に殲滅竜に全滅させられてしまうが、現在のルリナはレベル1とは言え侍大将。


 大聖女もカンストしているので、普通人で殺せるレベルではない。



 そこに転げるように駆けてきた騎士団の者が、エルフ語でこう言った。


『ようこそ、エルフの同胞の皆さん、王の結婚式へようこそっ!』


『は?』


『ひ?』


『ふ?』


『へ?』


『ほ?』


 ブチ切れていたエルフの連中も理解できなかったが、屋外パーティーの用意がされていて、ルリナとエルフょぅじょは着替えさせられていて、金銀財宝が付いたようなウェディングドレスを着せられていた。


 二着ともょうじょ用で、突貫工事?で制作された。情報部とか騎士団が、総力を結集して制作させた。


 目の色が変わっている騎士が、衣装屋に剣突き付けて、ハァーハァー言いながら無理矢理作らせた。


 担当者の騎士団員も、ブラック過ぎる無茶振りに死んだような顔をしていて、真っ青なまま泣いていて、エルフの侵攻にどうにか間に合わせた。



『さあ、まずは花婿、花嫁の入場です』


 式次第とか存在しないが、アドリブでどうにか場を繋ぐ。


 無理矢理引っ立てられた楽団が、結婚行進曲的な演奏を始め、譜面攫っていないのでトチったり音を外す者が出たが、気にせず式を継続。


『王の、結婚式?』


 エルフ族が城砦の壁を破壊したり、市民を虐殺したりして、関係修復が不可能になる前に、どうにか水ぶっ掛けて冷静に戻した騎士団。


 エルフの親までは用意できなかったが、ルリナの親と弟は用意できた。


「ああ、私、ついにお兄ちゃんのお嫁さんになるんだ」


 感激して泣いているが、これも芝居。


 理想通りではなかったが、金銀財宝も付けた衣装が用意されている。


『王よ、花嫁として仕えることをお許しください』


 ょぅじょもルリナの反対側で腕を組んで入場。仮設のテントとかも大急ぎで準備されていて、幕裏では大騒動で次の準備とかされていた。


 エルフの両親も参戦しているので、とりあえず花嫁側の親族も用意できた。



 過去に「いなかっぺ大将」で、小学校を卒業したばかりの風大左衛門(CV:野沢雅子)が「キクちゃんもハナちゃんも好きダス~~」と言う訳で、アメリカに修行に行く前に、キクちゃん(都会のホームステイ先のお嬢さん)とハナちゃん(田舎の方の婚約者?)、二人共と結婚式をすると言うアニメ最終回があったが、子供の仮祝言的な事なので重婚も許されたが、ここでも人間とエルフなので重婚が許された?


 尚、ニャンコ先生(誰?)(CV:愛川欽也)は検疫上、アメリカに入国できないので、多分ホームステイ先で留守番。



 エルフの長老の所に飛んで行って挨拶する騎士団長とか情報部長とか、偶然いた王族もしょっ引かれて連れて来られた。


 どうにかして立食パーティーに持ち込み、目の前で机運んで来て、元は何なのか分からない白い布とか掛けて、エルフに酒のグラスと軽食の皿持たせて、戦争のふいんき(何故か変換できない、AA略)を台無しにして、結婚パーティーへと変えるよう努力する。


『なにが結婚式かっ! 王を捕らえ牢屋に入れようとするなどっ!』


『ああ、ご心配なく、俺、牢屋とか入れられてませんから。何ですか? 事情聴取? 小さな子二人連れ込んでしまったんで、セキニンを取るように言われまして……』


 山の宮殿に帰って貰い、ロリょぅじょ二人とも連れて帰ってくれば無問題(モーマンタイ)だったのだが、怒り心頭の長老とかにも軽く王から挨拶。


『何とっ! それではこの式は?』


『ええ、両親とか呼んでないんで正式じゃないですけど、まあ仮祝言的な物で』


『左様でしたか。皆の者っ! 祝いだっ!』


『おおおおおおっ!』


 ブチ切れていたエルフ住民も、決死の覚悟できていた老婆や老人も、ダイスキな結婚式で、また親族とか子供が増えるのを喜んでいた。


『やったね、たえちゃん、家族が増えるよ』



 辛気臭い歌いとか胡弓とか披露したり、何故かエルフ間でも祝賀ムード。


 そこでも黒い顔して相談する者がいた。


『長老様、人間の砦へ侵攻して頂けましたので、王は急遽釈放。ギルドの緊急クエストが発生。「続々とやって来るエルフ族、ゴブリン、オーガより街を救え」となって王が受注致しました』


 通常、花嫁側は主賓の席に座って移動しないが、もう一人花嫁がいるので「お色直し?」、「着たきり雀」とか言われないよう、エルフ側でも用意させられた衣装とか緊急搬送。


 無茶振りされた担当者が困るが、従魔を連れて帰らせ、伝国の花嫁衣装を持って来て、足元とか袖を詰めて出す。


『うむ、よくやってくれた。朝の念話からも王と結ばれた様子。其方と王が誼を結び子を成せたのならば、我ら一族の発展は約束されたような物。其方には世界樹十字勲章の内示が出ておる、心して受けよ』


『はっ、有難き幸せ。謹んでお受けします』


 殲滅竜の子なので、親の形質を強く受け取る。一応ドラゴニュート扱いだが、弱すぎるエルフの形質は無視され、強い方の父親の血を継ぐ。


 その精を受けた女なのでほぼ不老不死。ょぅじょのまま固定されてしまうので出産に困るが、卵生なので出産の苦痛は軽い。



 もう一人黒い顔した奴もお色直し?


「とりあえずエルフ族との停戦に成功した。君には今まで通り王の篭絡を担当して貰う。結ばれて結婚式まで済ませたので、我らの発展は約束されたも同然。可能な限り誼を結び、そのまま子を成して産んで欲しい。王の子は卵で生まれてくるので出産痛も少ないはずだ」


「はい、分かりました」


 芝居は黒いが、エルフょぅじょほど思考は黒くなく、情報部に操られている程度。


 こちらもほぼ不老不死で、ょぅじょのまま固定されるので出産に困るが、卵生なので苦痛は少ない。


 そうこうしている間に、ゴブリン、オーガの順に到着してしまった。

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