第4話 全裸格闘編

 王はギルドに帰ると、討伐証明を出して「薬草採取」のクエストが終わったのも提出した。


 受付嬢も交代して、情報部扱いの人物が座っていたので動揺しない。


「え~、ゴブリンの巣討伐、討伐証明の左耳と睾丸が112匹分。エルフの隠れ里の救出、オーガの討伐数が155匹、薬草採取クエストで薬草310本、以上で間違いございませんね」


「うん、大体そのぐらい」


「ホモゴブリンの巣から救助された、冒険者や市民からも報告を受けております。何でも退治するまでも無く改心して、全員平伏して自ら討伐証明と睾丸を提出して、泣きながら助命を願い、反抗する事無く静かに立ち去ったとか」


「うん、もう被害は出さないって誓って、人里から離れて奥地に行ったよ」


「エルフの隠れ里の方は確認が取れませんでしたが、オーガの方も命乞いをして立ち去ったのでしょうか?」


「この子に聞いてみると良いよ」


 エルフの子を連れてきているので、会話は成立しないが受付で話して確認を取る。


「エスケレート、ナミレンガ、カニケルスケル」


「え、エルフだ……」


「何言ってるのかさっぱり分からねえ」


 他の街から呼び寄せた、両目をギラギラさせている抜き身のナイフみたいな冒険者でも、エルフ語は分からない。


 隠し里があったことも知らないようなのが多く、エルフが里から出て来たのを見たのも初めての物が多かった。


 手を合唱して何度も頭を下げて泣いているので、ボディランゲージで感謝しているのは分かった。


 王なので、適性クエストはいつも通り「十二魔将討伐」「魔王討伐」なので、このぐらいの簡単なクエストは容易い。


「いやあ、エルフ銅貨一枚でクエストを請け負ってね、絵物語の「銅貨一枚で請け負った依頼」の実績を解除できたよ」


「左様ですか」


 受付嬢は顔色も変えずに「付近最大のホモゴブリンの巣の駆除」のB級クエストを終了にして、新たに「エルフの里がオーガによって占拠された」解放のA級クエスト書きだして終了として、討伐証明と共に報酬を支払った。


「さあ、これが君たちが稼いだ金額だ」


 金貨にして二百枚程度、国家予算を受け取っている王には、端金だったので全額ルリナとエルフのょぅじょに与えた。


 本人は「薬草採取」のクエストの金額と、エルフの銅貨一枚を受け取った。


『いえ、私は今後の人生の全てを王に捧げるために同行しております。奴隷に金銭は必要ありません、どうかお持ちになって下さい』


『はは、駄目だよ、そんな若いのに奴隷なんて言っちゃあ。俺は「銅貨一枚で請け負った依頼」をやりたかっただけなんだ。ほら、里でも長老からも誰からも受け取らなかっただろ? 秘宝も断ったし』


『ああ、貴方様は神のようなお方、この感謝を貴方様に捧げます。まだ感謝や返礼が足りません。どうかこの体の全てをお受け取りになって下さい。叶うのならば一夜でも抱いて下さい、せめて貴方様の子を毎年産むことによって返礼とさせて頂きます』


 もうガチ泣きしていて、王の前で跪いてしまい、両手の先を反対側の肩に着ける「服従」のポーズで奴隷忠誠をしたエルフょぅじょ。


 長老からも早めに子供を産めるような秘薬も授かり、ょぅじょの体でも子供が産める。


『でも「野に咲く花」ちゃんを抱いちゃったら人間の里では捕まるんだ。まだ駄目だよ、いつか大きくなったら、俺のお嫁さんになってくれるかい?』


 人間的な名ではなく、エルフ的竜的なネーミングで「野に咲く花」みたいな名前のょぅじょは、顔を上げて笑顔になり、涙を流しながら誓った。


『はいっ、はいっ、必ず、貴方様のお役に立って、子供を産むことを誓います』



 ルリナは、この小娘?(実年齢25歳の合法ロリ)が何を言っているのか分からなかったが、悲壮な雰囲気で何かを誓い、自分が喉から出るように欲しい金貨の受け取りすら拒み、泣いて跪いて王に誓いを捧げたのは見た。


「ギリイッ!」


 強敵の出現に怒り、奥歯を「ギリイッ!」と噛み締め、どこかの悪訳令嬢みたいな黒い顔でエルフょぅじょを見下げた。


 最近の少女漫画でも、白目剥いてグワシポーズで、マヤって驚くのは流行らないのか、周囲から全員白い目で見られるのも表現として受け付けられないのか、悪役令嬢がヒロインを見て「ギリイッ!」と歯を鳴らして、口元が大写しになるのが定番になった。


 初出は平民の聖女にも親切な令嬢でも、王子の心がヒロインに移り、婚約者候補の自分がないがしろにされた時は「ギリイッ!」になる。



『金銭を受け取ることはできません』


 まだ金貨を押し付けようとしている王に向かって、泣きながら受け取り拒否して、手で押し返したり服従の姿勢を続ける。


『じゃあ、身の回りの品とか必要な物、全部買ってあげられないから、まず支度金として金貨二枚を上げるよ。これで身の回りの物を整えて、人間世界で暮らせるように着替えて』


 野に咲く花。もボロの古着を着ていて、誰のお下がりなのかサイズもあってない服に袖を通していた。


『しかし……』


 話を遮られて、掌に金貨をねじ込まれるょぅじょ。


『え~と?「俺が王なんだから、貧しい恰好はさせられないよ、下着も服も贅沢な物を着て、防御力が高い物に着替えるんだ」』


 これも絵物語からの引用で、奴隷忠誠を誓った子供が金銭を受け取らないので、「王の臣下に相応しい身なりに整えよ」と言う内容を伝えた。


『はい、仰せのままに、身なりを整えて参ります』


 そのまま出て行こうとしたので、エルフの女の子は人間の里ではすぐに誘拐されてしまうと教え、全員で買い物に行くと伝えた。



「やあ、ルリナちゃん待たせたね、残りは受け取っておいて」


「へ?」


 金貨を見たことも無い少女は、二百枚ぐらいの金貨を渡され、これまた膝から下が産まれたての小鹿になった。


 余りの衝撃に今回はおしっこを漏らすかもしれない。


 情報部から約束されている報酬は、一月に銀貨五十枚。


 それでも喉から手が出るほど欲しかったルリナは、王に体を売ってでも、初潮で妊娠しようとも、気にせず玉の輿に乗るつもりでいた。


「こ、困ります、こんなに受け取れませんっ」


 恥という物を知っていた少女は、何もしないで受け取る訳にもいかず、エルフょぅじょと同じぐらいに収めようとした。


「君はゴブリンの洞窟にも同行して、エルフの里解放クエストにも参加したんだ。レベルも上がったし、冒険者ってのはこのぐらい儲かるもんさ」


 ょぅじょも少女も、何もしないでも全員が王に屈し、命乞いをして討伐証明を提出し、タマタマも自分で提出した魔物だらけだったので、その現場に立ち会っていただけ。


 それでも経験値は案分され「卑怯者」とか「偽物」と言われる、上位冒険者に寄生してレベルを上げただけの生き物だった。



「次は何の上級職になる? 聖騎士も行けるけど、侍大将になったら攻撃魔法が覚えられる」


「エ?」


 異次元の話をする王に向かって疑問符を浮かべるが、現在のルリナは大聖女をカンストしてしまい、次の上級職になれる状態。


 信仰心や敬虔度が低すぎるので聖騎士はオススメされず、侍大将を勧められた。


「まあ、侍大将も「通過点」だからさ、ヒットポイント稼いで、攻撃魔法も覚えるついでで良いと思うよ」


「は、はい……」


 いつの間にか治療呪文を全部覚えていたルリナは、次は侍大将の上級職に転職した。



『待たせたね、君にも人間の里で暮らせるよう、人間語を覚えて欲しいんだ』


『承りました、王のご命令のままに』


『いやいや、そんな深刻にならないでも、ここで住むんなら、覚えた方が便利ってぐらいの話さ』


『はい、きっと覚えます、貴方様と人間語で話せる日が来るまで』


 エルフょぅじょはまだ泣いていて、自分の故郷や両親が解放された感謝を忘れなかった。


 長老からも言い渡されている通り、夜伽も済ませて一日も早く王の子を授かりたいと思っていた。


 ここにエルフょぅじょと少女のハーレムが完成した、もっと人員が増える予定。



『野に咲く花ちゃんはどんな職業に転職したい?』


『エ?』


 こちらも村人レベル99までカンストした自覚が無く、身体強化でも何でもできる状態だとは思っていない。


 転職ツリーもスキルツリーも凄まじいことになって任侠転生レベル、大聖女であろうが忍者マスターであろうが、好き放題選べる。


『に、ニンジャになってみたいです』


 主君を守ったり、トラップを解除したり、宝箱の罠も解除したり、主君の役に立ちたかったょぅじょ。


『じゃあ、まず魔法が全部唱えられるよう、ビショップになってから忍者かな? 大丈夫、今日みたいに一日二日で終わるよ』


 普通人なら人生を掛けないと魔法を全部覚えるなど不可能で「賢者」と呼ばれるような存在に一日でなれると言った王。


 歩が敵陣地に入ったら、成ってと金になれる程度に思っている非常識な人物。



 大通り商店街


 買い物をして身なりを整えるように言われた二人は、仲が険悪で敵同士なのに、まるで女の子同士でキャッキャウフフしながら買い物するように、仲良くお見立て会をして、言葉も通じないのに相手の装備を選んだ。


「これ、カワイイ」


『カワイイ?』


「う~ん、この皮鎧を着替え含めて何着か、こっちは侍大将の鎧とか兜も数着、刀も予備を入れて数本」


 お大尽な買い物をして、支払いはさっき渡したのとは別に自分持ち、そうでないと「モテない」と姉から言い渡されているので、見付からないように会計を済ませておく。


 ちょっとルリナが重装備過ぎて、全身鎧に兜まで被って、脚絆に手甲まで付けて三十キロを超える超重量。


 それでも平気で歩けるような体になっていて、大小二本差しになってまさに侍大将。


 神に逢うては神を斬り、仏に逢うては仏を斬る、ぐらいの装束。


 街中にはそこまで重装備の人はいない。経済的な判断にも従い、そこまで金出せる金持ちは存在しない。



 一切値切られなかったので、武具店の主人役をヤっている情報部の一員も「あれ? 俺、武具店の店主の方が儲かってる?」と思い始めたが「業務中に発生した利益」として上司が奪い取り、自分の懐に入れようとして告発され、一人首が物理的に飛んで、手柄の争奪戦になり数人の首が役職的に飛んだ。らしい。


 情報部の最高ランクの人物が総取りして、「無かった事にする」「活動費用」「公務王家管理、使途不明金」に書き換えて逃げたらしい。



 お食事処


「え~と、パーティー結成記念だから、メニューの上から順番に全部持ってきて」


「は? はい……」


 情報部の一員がウェイトレスなので、「何言ってるだよお客さん、冗談は顔だけにしとくれよ」とも言わないで、王なので「メニュー全部」ぐらい平気なので、松方弘樹みたいな注文の仕方をしても驚かれなかった。


 言葉が分かったルリナの方も、一瞬心臓止まりそうになったが「この人の経済観念ではこうなんだ」と理解することにして、更に「この人しかいない」と思い至り、今晩は全裸で夜這いしに行ってやろうと思った。


 ょぅじょエルフの方も、宗教的?に肉は食べられない、ロハスでエコでビーガンなのだが、長老から許可も得ているので何でも食べられる。



 徐々に食べ物が並べられて行き、机の上に置き場が無くなった所で停止。


「さあ、食べようか、パ-ティー結成記念だ、ジャンジャンやってくれ」


 ルリナもょぅじょも、こんな豪華で豪勢な食事は目にしたことが無い。


 精々魔の森近くまで入って拾って来た、キノコや野草、罠にかかっていた小動物の肉を猟師から盗んで来たぐらいで、野草以外に食えるのは三日に一度。


 それも毒キノコ同然でも我慢して食べ、バックトゥザフューチャーぐらい砂が混じった茶色い井戸水飲んで、肉を盗んでいる所を猟師に見付かってブン殴られて、オマケにキックも頂戴するのが日常。


 二人とも涙で料理が見えなくなるぐらい泣けて、泣きながら料理を順番に消化して行った。


 それでも終末収容所に入れられていた連中と同じく、固形物は体が受け付けなかったり、急に食べたので胃痙攣という症状で死にかけた。


 東側のロシア軍が来た所は、本当の飢餓を知っているロシア人が、スープやシチューから始めさせて生還する者が多かったが、西側の物量が豊富過ぎる所では、固形物を大量に出して食わせ、餓鬼みたいな人物が何でも詰め込んで、胃痙攣を起こして昇天したと伝えられている。


「エクスヒール」


 ガリガリに痩せていた二人は、王に救われて助かったが、ローマ人みたいに吐き戻しては飲んだり食う様な高等技術が無く、大半の食事は王が平らげた。


「ああ、もうこれぐらいでいいよ、残り作った奴はお土産に持たせてあげて、支払いは全部するから」


「はい……」


 請求する側も「どうせ税金で持っていかれるんだから、適当に三万円と書いた領収書出してくれて、皆にお土産でも渡してくれたら良い」と言われた店みたいに、金貨三枚(三百万円)ぐらいの請求をして、平然と支払って出て行った。


 これも、女性がトイレに立っている間に会計を済ませておいて、後から「幾らかかった?」と聞かれても、金額を教えたりすると「だからモテないのよ」と言われるので、どれだけ支払ったかは教えなかった。



 宿屋


 安宿で個室を与えられたルリナは、情報部から接触を受け、朝の一瞬でギアスや隷属の首輪の存在を見抜かれて、全部解除されてしまったのを報告した。


「な、何を言ってるのか分からないと思いますが、私は何も言ってないにもかかわらず、魔法契約のギアスも、隷属の首輪も全部バレてしまい、一瞬で解除されてしまいました……」


「ああ、こちらでも監視していたが、君が何も言っていないのは確認済みだ。しかし、術者は心肺停止まで追い込まれ、ギアスが逆に掛かって死んでしまった」


「ヒッ!」


 王の前で何かを起こすと、簡単に命を落としてしまう。それを思い知らされる出来事になった。


「それと、王を篭絡するための行為、今夜にでも決行して欲しい」


「はい、そのつもりです」


 冒険で貰った金貨の数、大聖女から侍大将にして貰った上に、食事代に、装備の一つでもアンダーウェア一着でも、全部自分の生涯賃金を超えていたので、もう身体を捧げて純血を奪って貰う以外に支払い方法が無いので、最初からそのつもりでいた。


「すまんな、せめて痛み止めだけでも渡して置く、これを飲めば痛みは感じないが少しぼうっとする」


「はい、頂きます」


 躊躇う事無く痛み止めを飲んだルリナは、性的に興奮してみだらになるのは教えられ無かったが、好都合なので許容した。


「では行ってきます」


 情報部の男が退出してから、今日の汗を流して体を拭き、軽い布だけを羽織って「全裸で」王の部屋に入室して行った。


「起きてますか?」


 ノックしてまだ明かりがついている部屋に入室したが、情報部の人物とやり取りしている間に、エルフょぅじょが「全裸で」入室していて、王に止められていた。


『野に咲く花ちゃん、まだ駄目だよっ、そんな幼いのにエッチなことしたら怪我しちゃうよっ』


『いいんです、傷をつけて下さい、一生消えない傷を』


 もう目付きがイカれていて「全裸で」ベッドの上を這い回って、王に処女を捧げて純血を踏み躙って貰い、一生消えない傷を自分の体に刻み付けようとしていた。



「何をしとるかーーーっ! この泥棒猫がーーーーっ!」


 一大決心をしてきたが、泥棒猫の方が上手で、宿屋にチェックインして体を拭いたら、即座に全裸で行動を起こしたと思われるょぅじょ。


 仲が良い振りなんかもかなぐり捨てて、「全裸で」戦いのゴングが鳴ってしまい、やせたかなしい姿なので、どこもプルンプルンしなかったが、ケツとフトモモぐらいはブルンブルンさせ、相手の髪の毛とか引っ掴んで「ギャーギャー」喚きながら言葉の通じないエルフと戦った。


 もっとおしとやかな感じで、ウルウル泣きながら求めて抱かれ、翌朝までスンスン泣いて過ごす予定だったが、クソエルフの行動で全部ぶち壊しになってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る