ナイショの恋の話
「お、お願いしますっ! どうか秘密にしてください!」
小春ちゃんは勢いよく頭を下げた。
いつも大人しい小春ちゃんだけど、慌てると少しだけ声が高くなって大きくなる。私は、そんあ所も可愛いとこっそり思った。
「じゃあ秘密にする代わりに、詳しく教えて!」
何を隠そう、久々に友だちの『恋バナ』が聞けそうで、私はついわくわくしてしまっていた。
「ずばり、好きになったきっかけは?」
「その、図書室で……本を、取ってもらって……」
小春ちゃんは恥ずかしそうに下を向いて、目を潤ませながらこたえた。
「わー! すごい!」
まるで少女漫画の一ページみたいな出会いに、私は思わず拍手してしまった。
小春ちゃんはこんなに可愛いのだ。
漫画のヒロインにだってなれちゃう逸材だ!
でも、小春ちゃんと彼との素敵な恋の話の続きを聞きたくて目を輝かせる私を前に、小春ちゃんは自信が無さそうに、目を伏せて微笑むだけだった。
「きっと、地味な私のことなんか、覚えてないだろうと思うんですけど。……でも」
小春ちゃんは、ぎゅっと、手に力を込めた。
「本当に、本当に、嬉しかったから」
「……宝物の記憶なんだね」
小春ちゃんの表情を見て、私は葵くんと初めて出会った日のことを思い出した。
相手からしたら何でも無い出来事かも知れないけれど――恋に落ちたその日のことは、私や小春ちゃんにとっては、何にも代えがたい、大切な思い出なのだ。
「私のことはお話ししたので……次は朝霧さんも教えてください」
「え?」
「私にだけ言わせて、朝霧さんは言わないなんてなしですよ?」
口の前で手指先を合わせて、上目遣いで言われると、少し胸が苦しくなった。
こんなに可愛い子を前に、私の恋バナなんてしても良いんだろうか。
「わ、笑わない?」
「もちろん!」
「私ね、『葵くん』が好きなの」
小春ちゃんにだけ聞こえるように、小さな声で言う。
小春ちゃんの反応までには、何故か少し間があった。
「……ええ!? それってあの、5年生の!?」
「し~~!! 小春ちゃん、し~~!!!」
私は慌てて口に人差し指を当てて合図した。
「すいません。でも、意外です」
「意外??」
「はい。てっきりさっきの雰囲気だと、蔵人くんとお付き合いされているのかと思っていました」
「く、クロードと私はそんなんじゃないよ!?」
未来の魔法少女と使い魔。
私とクロードの関係は、それ以上でもそれ以下でもない。
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