同い年の先生

「うう……。どうしたら……!!」


 私は頭を抱え、空に向かって叫んだ。


 クロードと契約して『魔法少女』としてユメクイと戦うことを決めた私は、クロードからある『種』の入った小さな袋を渡された。

 『魔法の種』――クロードはその花を咲かせることが出来れば、私にも魔法が使えるだろうと言った。

 種なんて、土に埋めて水をやればすぐだと思っていたが甘かった。

 土に埋めて水をあげても、種からは芽すら出なかった。


「でも……なんで芽が出ないんだろう?」


 なすすべなし。

 私が一人花壇の前で蹲っていると、誰かが私に声をかけてきた。


「あの、何かお困りですか?」

「へあっ!」


 驚きのあまり尻餅をつく。


「ご、ごめんなさい! あの、大丈夫ですか?」


 ――ん?

『誰か』が、私に頭を下げる。私はその時、あることに気が付いた。


 この行動、この声――凄く、覚えがある。


「あ」

「あ」


 声の主は、やはり私に水をかけたあの女の子だった。


「貴方はあのときの……! この間は、挨拶が出来ずすいませんでした。私は、4年2組の桜庭小春さくらばこはるといいます。お花を育てるお手伝いをしていて、あの日はお花の水やりをしていて……」

「えっ?」


 私は、彼女の言葉を聞き逃さなかった。

 ――花を育てる手伝い? そんなの、今の私に一番必要な先生じゃないか!

 

「あの!」


 私は、小春ちゃんの手を掴んだ。

 小春ちゃんは私の行動に、驚いたのか目をぱちくりさせた。


「私に、花の育て方を教えてほしいの!」


☆★☆


「うーん。なんの種でしょう……?」

「それって、何か関係があるの?」


 翌日から、私は種を育てるために小春ちゃんと花壇に集まって話すようになった。


「はい。お花もお野菜も、育てるのに適切な『時期』があるんです」

「『時期』?」


 やはり小春ちゃん(前の失敗もあり、こう呼ばせてもらっている)は、落ち着いていて心優しい女の子だった。私の問いに小春ちゃんは優しく微笑んでこたえる。


「そうです。それに同じ種から育っても、水をたくさん上げるべき植物もあれば、やりすぎたら枯れてしまうものもあるんです。朝霧さんは、田植えってしたことはありますか?」 

「ちょ、ちょっとだけ……」


 正直なところ殆ど経験の無い私が人差し指と親指で僅かな隙間を作ると、小春ちゃんはくすっと静かに笑った。


「種から芽を出させて、きれいに咲かせる方法は、その種によって違うんです。だから、本当は何の種か分かると良いのですが……。でも、朝霧さんもお困りのようですし、私もできる限り協力します。種から芽を出せるよう、色んな方法で試してみましょう」


「……ありがとう!」

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