みかんちゃんと動物達(前)
4-みかんちゃんと動物達
今朝麻緒ちゃんが元気よく教室に入ってきて、いいニュースを教えてくれました。
「みんなー。ポスの赤ちゃん、産まれたよー」
そう聞くと、みんなわくわくして麻緒ちゃんにいいました。
「よかったね!」
「ポスや赤ちゃん、元気?」
元気にいう美穂ちゃん、彩ちゃんに続いて、修くんも聞きました。
「何匹産まれたの?」
麻緒ちゃんは本当にうれしそうな顔で、まとめて答えてくれました。
「3匹だよ。ポスも子犬も元気!
ポスの子犬達とってもかわいいし、ポスも優しいの」
うわあ。とうとう産まれたんだね。
わたしもそう聞いてうれしいです。
ポスちゃんは麻緒ちゃん家にいる犬でね、もう1匹いるバルくんと結婚してるんだって。
そしてその2匹の子ども達が昨日産まれたんだよ。
赤ちゃんがポスちゃんのお腹にいる時から、麻緒ちゃんはわたし達みんなに話してくれていました。
最近はもうすぐ産まれそうって、毎日そのお話をしていたんだよ。
わたしはポスちゃん、バルくんともお友達。
前に麻緒ちゃんのお家に行った時に、仲良くなりました。
2匹ともしっかりしていて、優しいんだよ。
「ねえねえ、その子犬達を見に行ってもいい?」
柾紀くんが聞くと、麻緒ちゃんは少し考えてから誘ってくれました。
「今はポスが疲れているからだめだけど、元気になったら見に来て!
その頃は子犬達、もっとかわいくなってるよ」
その言葉にわたし達みんなでうなずきます。
「うん」
ポスちゃんの子犬達に会えるのが楽しみです。
その日学校にいる間ずっと、麻緒ちゃん家の子犬達のことを考えていました。
「バイバーイ」
「みかんちゃん、また明日ね」
放課後クラスのみんなに手を振って教室を出てから、わたしは小さなため息をつきます。
「いいなー。わたしの家にも動物がいたらいいのに」
わたしの家は動物がいないので、いるお友達がとってもうらやましいです。
そうだめなのは、家やお母さんのせいじゃないんだよ。
わたしの家は一戸建てだし、お母さんも動物が大好きです。
それはきまりで、魔法使いは動物達の自由を縛ってはいけないって、飼うことを禁止されているからです。
前に子猫を拾って家に連れていった時に、そうお母さんに教えてもらいました。
わたし達魔法使いは普通の人よりずっと長生きだからということも関係しているそうです。
魔法使いは特別な力がある分、いろいろなきまりがあるんだよ。
でもそのかわり、いろんな動物達とお話ができる力をもらっています。
種族に関係なく、みんな仲良くしていけるようにって、神様が決めたそうです。どの生き物もみんな神様の子ども達で、大事な存在だもんね。
その生き物みんなとお話ができる力のおかげで、わたしもたくさんのお友達がいます。
そんな力をくれた神様にとっても感謝しています。
でもわたしもみんなみたいに、いつも一緒にいてくれる友達がほしいなっても思ってしまうのです。でも、できないことを考えていてもしょうがないよね。
わたしは気を取り直しました。
今日は鳥さん達とお話をしながら帰ろう!
校門を出ると、わたしは早速ペンダントを外して呪文を唱えました。
「ミラクル・テイク・シー」
するとペンダントがカチューシャに変わります。
そのカチューシャを付けて、ほうきに乗りました。
これを付けていると、動物のお話が聞けるようになるんだよ。
ほうきに乗っている時は、鳥さんとよく話しています。
「こんにちはー」
わたしが声をかけると、お友達の鳥さんが来てくれたり、あいさつをしてくれます。
「あら、みかんちゃん」
「今日も元気ね」
お母さん鳥達が真っ先に声をかけてくれました。
ちなみにわたしは、今いるお母さん鳥達が赤ちゃんの時から知っています。
鳥さんって、すごく成長早いよね。
一緒に遊んでいた時もあったのに、今ではすっかり大人です。
今は5月の後半なので、ヒナちゃん達のお世話で忙しいらしいけど、楽しそう。
お母さん・お父さん鳥達と、ヒナちゃん達のことなどをいろいろと話しながら飛んでいました。
すると前から、陽気なカラスのカンさんが飛んできました。
「よっ!みかんちゃん。今日も景気がいいねえ」
カンさんは今年で3歳。
大人だけど、まだ結婚はしていないんだって。
鳥さんの中で1番元気で、時々会いにきてくれます。
そんなカンさんが、今日はお誘いに来ました。
「みかんちゃん、これからひまかい?
オレ、これから河原にプルトップ集めに行くんだけど、付き合ってくれないか?」
カンさんはカラスだけあって、光る物が大好きです。
特に缶に付いているプルトップをコレクションしていて、よく川に拾いに行っています。
わたしも時々一緒に行ってるよ。
「うん、いいよ」
わたしがそう返事をすると、カンさんはうれしそうです。
プルトップ集めはわりと早く終わるから、学校帰りでも大丈夫!
その川は帰り道ではないけれど、すぐ近くにあるんです。
「カンさん、相変わらず光る物集め好きね」
お母さん鳥がそういうと、カンさんは元気に返事をしました。
「ああ、いっぱい落ちているんだから、どんどん拾いに行かなくちゃな」
「じゃあ、行ってきまーす。また明日ね」
わたしは他の鳥さん達とさよならして、カンさんと一緒に河原に向かいました。
「あ!あった、あった」
カンさんが缶をみつけて、うれしそうにいいました。
わたしはその缶からプルトップを取って、カンさんの巾着に入れます。
カンさんが宝物をお家に持っていきやすいように、この袋はわたしがあげたんだよ。
だから桃色なのです。
家庭科の時間にお裁縫を習ったので、作ってみました。
習いたてだからあんまり上手じゃないけど、カンさんはこの巾着をとっても気に入ってくれています。
光る物集めをする時は、いつも首にさげて持ってきています。
そして缶はビニール袋に入れます。
わたしはプルトップ集めをする時に、空き缶などを拾っています。
お友達の魔法使いのタルトちゃんが、ごみを拾って町をきれいにしようと熱心なんです。
だからタルトちゃんが住んでいる隣の素雪市は、いつもきれいなんだよ。
それを見習って、わたしも機会がある時にはこうやってやっています。
前にカンさんと拾いにきたのは、3週間前くらいでした。
でもその間に、またこうやって空き缶が捨てられているんだよね。
タルトちゃんがいたら、おしおきのピコピコハンマーが出るところです。
町にごみを捨てたりする悪い人を注意する時に、タルトちゃんはいつもそうやっているんだよ。
そんなことを考えながら拾っていたら、空き缶はすぐになくなりました。
今日は全部で5本の缶をみつけたよ。
「結構いっぱいになったな」
カンさんは巾着の中を見てうれしそうです。
「みかんちゃん、付き合ってくれてありがとうな」
「コレクション増えてよかったね。また来ようね」
そう笑いあうわたしとカンさん。
みかんちゃんの魔法日和 〜平和な世界に暮らす、魔法使いの日常 香橙ぽぷり @katopopuri
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