4 おひなさまと…(3/5)

それからポッコロさんは、さっきとは違う、うれしそうな顔になっていいます。

「…だけど、この雛人形さん達はよっぽど大事にされてるってことだ!

オレもそんなお雛さん達に会うと、うれしくってよ」

その言葉にわたしと真美ちゃんは、またおひなさまを見ます。

そういわれてみると、みんなとってもおだやかな顔をしているのに気が付きます。

真美ちゃんとお母さんの2人が、おひなさま達をとっても大事にしていることを知っているから納得です。

あれだけ大事に思ってくれている人が2人もいるんだから、本当に幸せだよね。

そして妖精さんも気に入っちゃうくらい、立派な上に心も素敵なおひなさまなんだね。

真美ちゃんはそう聞いて、とってもうれしそうでした。

そしておひなさまの真ん前に行くと、感動している様子でいいました。

「そうなんだ。みんなに、大好きってちゃんと伝わってたんだね」

そうじーんとしている真美ちゃんの様子から、本当におひなさま達を大事に思っていたのが伝わってきます。

わたしはそんな真美ちゃんを見ていて、今やっと気が付きました。

そっか。よく考えてみるとそうなんだよね。

ポッコロさんのお話によると、みんなのお家を回っているんだよね。

だったらどのおひなさまも、毎年動いた日が必ずあるということです。

でもわたしにこうやって相談しにきたのは、真美ちゃんだけでした。

他のみんなも、そしてわたしも気が付いていなかったのに。

ううん、もしかしたら、気付いた子は他にもいるのかもしれません。

でもこうやって一生懸命考えて、夜更かしまでしてがんばったのは、真美ちゃんだけなんだもんね。

その気持ちは本当にすごいよ。

だから真美ちゃんのおひなさまは、ポッコロさんが毎日来たくなるくらい幸せなんだね。

ポッコロさんもそんな真美ちゃんの様子を見て、にっこり笑いました。

そしてまた元気に杖を振り始めます。

「じゃあ説明も終わったことだし、続きを始めるか」

すると話していた間止まっていたおひなさま達が、また動き出しました。

「今日は特別。

人間のお嬢ちゃんも一緒に踊ろうぜ♪」

そのポッコロさんの言葉に、2人でうなずきます。

「すごいね。魔法使いのわたしにとっても、こういうことってあんまりないんだよ」

そうわたしは張り切って、真美ちゃんにいいます。

おひなさま達と一緒に遊べるなんて、今までのがんばりにもお釣りが出るくらい素敵なことです。

そうしておひなさま達のパーティーに、真美ちゃんとわたしも混ぜてもらうことになりました。

おひなさま達と一緒に跳んだり跳ねたりして、とっても楽しいです。

まるでトランポリンでも使っているみたいだね。

お友達と遊ぶ時だって、普通こんなには大はしゃぎしません。

でも始めてすぐに、とっても大変なことに気が付きました。

「ああっ!夜中だから、今まで一生懸命静かにしていたんだよね。

なのにこんなに音を立てていたら、絶対真美ちゃんのお母さん達に聞こえちゃうよ」

わたしは大慌てです。

いろいろお話を聞いている間に、すっかり忘れていました。

もうこれだけ騒げば、今から静かにしても遅いんだけどね。

お母さん達が、びっくりして降りてきちゃうかなあ。

そうしたら真美ちゃんのお母さんにも、こうやって動いているおひなさま達に会わせてあげることができます。

だからそれもいいのかもしれません。

子どもの頃からずっとおひなさまを大事に思っていた人だもんね。

きっとわたし達よりももっと感動するんじゃないかなあと思います。

でもやっぱり、この状況はなんだか気まずいです。

夜中にこっそり、みんなで遊んでいたっていうことがね。

お泊まりに来たのも実はこのためだったんですって、説明することになります。

そう魔法使いとしての気持ちと、わたし自身の事情で板挟みです。

困るわたしに、ポッコロさんは落ち着いて教えてくれます。

「お雛さん達を動かしてからは、もちろん音が外に聞こえないようにしてるさ。

でないと、必ずどこかで見つかっちまうよ」

そう聞いて、わたしはほっと息をつきます。

そっか、そうだよね。よく考えれば。

こういうパーティーを見たって、誰からも聞いたことないもんね。

妖精さんはいろんな力を持っているんだなあ。

わたしも状態魔法を覚えれば、そういうこともできるようになります。

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