4 おひなさまと…(2/5)

それから自己紹介をしてくれました。

「その通り!オレはポッコロ。人形担当の魔法使いさ」

人形担当?

妖精さんに出会ったことにびっくりして、少し忘れていました。

でもそう聞いて今回の目的を思い出します。

それでわたしは早速質問しました。

「毎日おひなさま達を動かしていたのは、ポッコロさんだよね?

わたし達は今日、それを確かめるために来たんだよ」

そういうと、ポッコロさんは困った顔になって、片方の手を頭にやりました。

「あちゃー。ばれてたのか。

お雛さん達、喜びすぎて、ちゃんと戻れなかったんだな」

そう全然否定しません。

その言葉に、わたしと真美ちゃんは顔を見合わせました。

それから声も揃っていいます。

「じゃあ、やっぱり……!」

ポッコロさんはうなずいて、はっきりいいました。

「そうだよ。オレが毎晩こうやって、お雛さん達が動ける魔法をかけていたのさ」

やっぱりおひなさま達自身じゃなくて、外からの力だったんだね。

そうわたしは自分の勘が当たっていたことがわかりました。

ポッコロさんはその理由を説明してくれます。

「雛人形ってほとんどしまわれていて、外に出ていられる時間が少ないだろ?

そんな湿気た生き方だけじゃなくて、外で元気に遊ばせてやっているのさ」

なるほど。おひなさま達にもそういう楽しい時間がなくちゃね。

クラスのみんなとお話したこともあって、わたしはよくよくうなずきます。

「みんなで何をしているの?」

そうたずねると、ポッコロさんは明るい顔になって答えてくれます。

「いつもは動けずに立ちっぱなしでいるだろ?

だから踊ったり走ったり、そりゃあもう元気だな」

「そうなんだあ」

おひなさま達が元気に遊んでいるのを想像してみます。

うん、とっても楽しそうです。

その様子を思い描いて、わたしは笑顔になりました。

「でもどうして、わたしの家のおひなさまが毎日動いていたんですか?」

真美ちゃんが不思議そうにたずねます。

そうだよね。おひなさまってたくさんの家にあります。

それでも毎日このおひなさまのところに来ているのは、何か理由があるんだよね。

するとポッコロさんは大きくうなずいて、おひなさま達を見ながらいいました。

「それは、ここの雛人形があんまり立派だったから…、つい通い詰めちまった。

どうせ遊ぶなら、大人数の方が楽しいなーと思ってよ」

そう聞いて、わたし達は納得しました。

ここのひな人形は、他のお家よりもずっとたくさんいるもんね。

だからなんだあ。

確かにみんなで遊ぶ方が楽しいです。

今回も心配してくれたクラスのみんなを思い出して、わたしはうなずきます。

今こうやっていることも、そんなみんなに後でお話しなくっちゃね。

妖精さんのしわざだったよっていったら、みんなもびっくりするだろうなあ。

そう考えて、わたしはちょっと楽しくなりました。

それからポッコロさんは、意外な言葉も付け加えます。

「もちろん他の家も見回ってるぜ。

1年に1回、全部の家の雛人形を動かす約束だからな」

そのお話に、わたしはびっくりしてたずねました。

「じゃあ、わたしの家にも来たの?」

するとポッコロさんはしっかりうなずきます。

「ああ。今行ってきたところだよ。

今日は芽吹町の日だからな」

芽吹町とは、わたしの住んでいる町です。

ポッコロさんは、わたしの家の場所も知っているんだね。

そう聞いて、わたしはうれしかったのと残念な気持ちがありました。

うれしいのは、わたしの家のおひなさまも元気に遊べてよかったねということ。

残念なのは、そこにわたしがいなかったことです。

動いたわたしのおひなさま達を見てみたかったなあ。

でも熱心な真美ちゃんがいたからこそ、こうやってお人形の妖精さんに会えたんだもんね。

じゃなかったら、今年もその時間は気付かないまま、寝ていたはずです。

だからそういうことがわかっただけでも良かったなって、思い直しました。

来年はぜひ会ってみたいものです。

そうわたしは、これからに期待しました。

そしてポッコロさんは、もう1つの理由を話してくれます。

「それにここの雛人形さん達、とっても明るくって幸せそうなんだよな。

中には、せっかく動けるようになっても、元気のないのがいるんだ。

せっかく出してもらっても、持ち主に見向きもされないとさびしいんだな」

そうポッコロさんもさびしそうな顔になります。

ポッコロさんは、お人形さん達のための魔法使いです。

だからおひなさま達の気持ちがよくわかるんだろうね。

お人形さんだけじゃなくて、こうやって心がある物は実は多いんです。

わたし達から見ると物だと思う物にも、心はあったりするんだよ。

そういう物達の気持ちがわかる魔法もあります。

それは難しいので、わたしのおじいちゃんがちょっと使えるくらいなんだけどね。

わたしもその気持ちを教えてもらったことがあります。

やっぱりね、みんなに大事にしてもらえると、その物達はとっても喜んでいるようです。

だからそれを知っている魔法使いのわたしも、みんなに物を大切にしてもらいたいなあって思います。

そうしたらわたし達人だけじゃなくて、本当にみんなで幸せな気持ちになれるよね。

そういうふうにつられて、わたしもまじめに思いました。

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