第40話 ゲイル、そしてヴァンクレスト

「がるるるるる!!!」


殴り飛ばされた13号はすぐに再生して起き上がる。


「まあまあタフだな。サスケ!」


「はいでやんす!」


サスケはゲイルに向かって刀を投げる。


『おい!お前ら!このカグツチ様の扱いが雑なんだよ!』


「カグちゃん!頑張ってでやんす!」


『おい、サスケ!俺をその呼び方で呼ぶなと言っただろーが!そんでもってゲイル!お前はちゃんと俺を持ち歩けよ!』


「うーん、腰にあると邪魔くせーんだよな」


『お前今剣士にあるまじきこと言ったぞ!』


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ。始めるぞ」


『ちっ!』


ゲイルがカグツチを抜くと同時に刀身は青白い炎で覆われていく。



「グルルルル!」


13号も本能で感じ取ったのだろう。目の前の男の強さを。警戒している。



「ゲイル君!その子は―


「お前とつながりがあるんだろ?何となくは聞いてる。めんどくせぇけど殺さないどいてやるよ」


「ありがとう」


ニニカは涙を流しながら心から礼を言う。


「でも後々殺さないといけなくなるかもしれないぜ?」


「うん、その時はボクが送るよ」


「ふっ、そうか。ならいい」



―真・一の秘剣 蒼鬼火―



ゲイルの一振りで辺り一面が青白い炎に包まれる。


「ちょ、ちょっと!ゲイル君!殺さないって今言ったばっかり!」


「この程度じゃ死なねぇよ。黙ってみてろ」


「ぐがああああ!!!」


すぐに再生した13号は再びニーコに向かって飛び掛かる。


「なるほど。俺に攻撃されてもヘイトは移らねぇのか。ただの魔物とは違うな」



―真・二の秘剣 蒼炎の雨―



ゲイルの炎が再び13号を襲う。


「ぐぎゃあ!!!」


ダメージを受けるものの13号の身体は再生していく。


『おい!ゲイル!効いてねーぞ!どうすんだよ!』


「どれぐらいまでやっても死なないか測ってんだよ。今回の依頼は生け捕りだしな。で、まあ大体わかった」


『めんどくせーな!とっととやっちまおうぜ!』


「次で終わらせるさ。燃えろ、カグツチ」


『待ってたぜ!任せやがれ!』


カグツチは一気に燃え上がり、その蒼い炎は何倍にも膨れ上がる。


「がるるるる!!!」


「おい、獣娘。そんなに警戒するなよ。魔力女との約束通り殺さないどいてやるからよ。安心して燃えろ」



―五の秘剣上 炎炎狒々―

―五の秘剣下 炎炎鬼気―


「ぐぎゃあああ!!!!」



13号は凄まじい炎に焼かれて悲鳴を上げる。



「ちっ!まさか炎の勇者が現れるとは!」


監視していた研究員は作戦失敗を悟り、証拠を残さないために13号の魔石を爆破する術式を起動する。いや、しようとする。



「そこか」


『わかったのか!?』


だがその一瞬の魔力の動きを感知してゲイルは研究員の方を睨みつける。


「カグ!丸焦げにして来い!」


『命令すんじゃねぇ!だが任せろ!』


ゲイルは燃え盛るカグツチを敵に向かって投げる。


「ぎゃあああ!!!」


もちろん術式が起動する前に研究員は骨も残さず灰になった。


「戻れ、カグ!」


カグツチはゲイルの手に戻ってくる。


『だから命令すんじゃねぇ!まあ戻るけどよ』


「さて、あとはこの黒焦げ娘か」


そう言ってゲイルは虫の息の13号の前に立つ。


「早く回復させて!!!」


ニニカが13号を回復しようと駆け寄ってくるがゲイルがそれを制止する。


「待て!」


「どうして!?」


「別に回復をさせたくないわけじゃない。この獣娘を救いたいならサスケに任せろと言ってるんだ」


「え?」


「サスケ!出番だ!」


「待ってたでやんす!」


元気よくサスケが走ってくる。


「いけるか?」


「はい!仲良くなれそうでやんす!!!」



―仲良し魔法 魔獣と友達―



サスケと13号が光に包まれる。



「なにこれ。従属魔法?」


「それだったら強力だったんだがな」


「違うの?」


「魔物とか動物と友達になるとかいう変な魔法だ。それも相手が嫌だと言えば発動もしない。だがサスケの友となればあらゆる縛りから解放されて自由になる。そしてなぜか傷まできれいに治る」


「てかまだ子供なのに魔法が使えるの?」


「八岐大蛇の封印を解くためにジライヤに無理やり魔力を覚醒させられたらしいな。ジライヤは魔力を覚醒させただけで魔法属性は知らなかったみたいだが、まさか仲良しとはな。知ってたら呆れてたぜ」


「でもこの魔法は」


「ああ、使いようによっては洗脳、召喚、従属なんかよりも強力な魔法になるぞ」


サスケと13号を包んでいた光がゆっくりと収まっていく。光が収まって現れたのは手をつないだサスケと13号だった。


「サスケ、友達にはなれたのかよ」


「はい!仲良しになったでやんす!!!」


13号はサスケの顔をぺろぺろ舐めていた。


「ちなみに光の中でお前って何やってるんだ?」


「え?ただ話してるだけでやんすよ?」


「いや、でもそいつ話せないだろ」


「大丈夫でやんす!あの光の中なら言葉が分からなくてもわかるんでやんす!」


「わからなくてもわかるってわけわからんな」


「でも仲良しになったら言葉なんかなくてもお話しできるでやんす!」


「ガウガウ!」


13号はサスケに抱きつきながら吠える。


「お姉ちゃんと妹に攻撃してごめんなさいって言ってるでやんす!」


「ボクを姉と呼んでくれるんだね」


ニニカは13号を頭を優しく撫でる。


「ん?なんかお姉ちゃんに名前を付けてもらいたいらしいっすよ?」


「ボクに!?」


「そう言ってるでやんす!」


「そっか、、、じゃあ君はミーカだ!」


涙を流しながらニニカはミーカを抱きしめる。ミーカもまたニニカの頬を嬉しそうに舐める。



「じゃあロイドが戻ってくるまでここで待つとするか。サスケなんか食いもんあるか?」


「いっぱい持ってきてるでやんす!皆で食べるっすよ!」


サスケは背負っていたパンパンのリュックから食べ物を次々と取り出す。


「やけにデカいリュック持ってると思ったら中身全部食い物かよ」


ゲイルは呆れながらもその食べ物を受け取る。





「それにしてもその人工魔族はなぜ必要なんですか?」


ネロの後ろに控えているジライヤが疑問を口にする。


「人工魔族、つまり闇属性の魔力を持ったクローン人間だ。それなら俺の配下に出来る。そして大量生産できればいくらでも兵を生み出せる」


「なるほど。世界征服へと一気に近づくのですね!」


「世界征服?まあいいか。そんなところだ。とにかく一気に面白くなるだろ?」


「はい!」


「楽しそうなところ悪いが、ここは行き止まりじゃ」


そんな会話をしていたネロとジライヤの前に一人の老人が立っていた。だがその眼光凄まじく老人と一蹴できるものではなかった。


「はぁ、ヴァンクレスト先生」


「久しいな、ネロ」

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