第35話 ジロウと一緒に

後日談



戦いの後、ゲイルはサスケを連れて戻って来たし、ミユキとジロウも順調に回復した。あとニニカも。


そして最後に目を覚ましたのはロイドだった。


「ロイド!目が覚めたのじゃな!」


目を覚ましたロイドにジロウが抱き着いてくる。


「おう、お前もな」


「ロイドとみんなのおかげじゃ!」


ジロウの目には涙が浮かんでいた。


「じゃあ俺たちと一緒に帰るか」


「そ、それなのじゃが。一度父上に会ってもらいたいのだ」


ジロウは言いづらそうにモジモジしだす。


「親父さんに?」


「う、うん。どうしても会いたいと」


「まあ、いいけど」


「本当か!?」


さっきまでモジモジしていたジロウが満面の笑顔になる。



*



ロイドは王の間で将軍と向かい合っていた。


「お主か。儂の娘を虜にした男は」


「父上その言い方は!」


「あんたか。自分の娘を政治の道具にしたクソ野郎は」


「ロイド!父上はヒノモト国の将軍じゃぞ!そのような言葉遣いは!」


「ひどい言われようじゃのう」


「抜けよ」


アタフタしているジロウを尻目にロイドは刀を抜く。


「儂と刀を交える気か?」


「その方が手っ取り早いだろ?あんたはそんな顔をしてる」


「ふはははは!将軍の座についてしばらく忘れておったわ。そうじゃ、儂はそういう男だった」


ノブヤスは笑いながら立ち上がり刀を抜く。


「ロイド!?父上!?」


「下がってろ」


「下がっておれ」


二人からオーラが巻き上がる。


ロイドはオドを練り、ノブヤスは魔力とオドを混ぜ合わせていく。


「俺が勝ったらジロウを自由にしろ」


「そうか、じゃあ儂が勝ったならジロウを嫁に貰え」


「はぁ?」


「父上!」


「お前を将軍にしたくなった」


「やるかよ。そんなめんどくせぇもん。俺は勇者だ」


「そうか。じゃあ勇者とサムライ、どちらが強いか試してみよう」


「俺だ」


「儂じゃ」


「父上!ロイドは病み上がりなのです!」


「戦場でそのような言い訳は通用しない!」


「どんな状況であっても必ず勝つのが俺だ!」


―雷魔法 雷神―


―二天流 白虎―


青白い雷の化身と化したノブヤスと真っ白になったロイドがぶつかり合う。


2人がぶつかり合った瞬間、辺りは光に包まれ、ジロウが目を開けた時には城の最上階は消し飛んでいた。


「ぐっ!」


ロイドはその場に膝をつく。


「ははは!これが最強の勇者か」


ノブヤスもまたその場に膝をついた。


「まだやるか?将軍」


ロイドはふらつきながらも立ち上がり再び将軍に刀を向ける


しかしノブヤスは立ち上がらない。


「お前の勝ちじゃ。ジロウは好きにせぇ」


ノブヤスは膝をついたまま刀を鞘に納める。


「あんたまだ戦えそうだけどな。まあいい。俺はジロウを連れて帰れればそれでいいんだ」


「じゃあ娘を頼んだ」


ノブヤスは笑みを浮かべながらそう言った。


「、、、次は本気でこいよ」


「ははは!手加減したつもりはない。じゃが次は本気で戦うと約束しよう」


「次は本気ってことはやっぱ手加減してたんじゃねーか」


「手加減ってわけじゃないさ。ただ、、、」


「じゃあ次までは勝負は預けておく」


「律義な男だな」


ノブヤスは嬉しそ言うに笑う。


「俺が目指す勇者は誰にも悲しい顔をさせない最強の存在なんだよ」


「、、、なるほど。なら次は死ぬ覚悟をして来い」


「お前がな」


「がははは!」


「はははは!」


「もうついていけん!」


互いに爆笑しだすノブヤスとロイドを見てジロウは考えることを辞めた。





一方そのころのヒノモト国の城下町。


ニニカの頑張りにより王都民たちの死者はゼロだった。しかしジライヤに洗脳されていたシノビたちに生き残りはいなかった。大体の者は限界まで体を酷使され、洗脳が解けると同時に死んでいった。


これによりシノビという一族は一人を除いて絶滅した。


そしてその唯一生き残ったシノビはうずくまって泣き続ける日々を過ごしていた。


「辛気臭いな。いつまでウジウジしてんだ」


そんな彼女の元にぶっきらぼうな勇者が現れる。


「あ、アニキ!あっしはだ、大丈夫で、大丈夫でやんすぅ」


サスケは俯いて隠そうとしたが、涙は止まってくれなかった。


「お前、もう行くところがね―んだろ。だったら、、、」


「アニキ?」


「、、、俺と来るか?」


幻聴でも聞こえたのかとサスケは口をあんぐりとしている。


「なんだ、そのアホ面は」


「い、いいんでやんすか?」


困惑しているサスケにゲイルはしびれを切らす。


「ちっ!来るか来ないのかどっちだ!」


「い、行くでやんす!どこまでも行くでやんす!!!」


泣きながらサスケはゲイルに抱き着く。


「暑苦しい!抱きつくな!」


「はいでやんす!はいでやんす!」


そう言いながらもサスケはゲイルから離れるはしなかった。


このぶっきらぼうな勇者と泣き虫のシノビは、『炎影』と呼ばれるコンビとなる。まあそれはもう少し先の話なのだが。





死んだと思われていた、というか死んたはずだったジライヤの元に一人の男が現れる。


もちろん魔王である。


「そのまま死ぬのは惜しいよね。せっかく闇属性の魔力持ってるんだから。死ぬぐらいなら僕のものになりなよ」


ネロはジライヤの傷を治し命じる。


「はい」


傷が治ったジライヤは起き上がりネロの前に跪く。


魔王ネロの闇魔法は闇属性の魔力を宿していれば人だろうが獣だろうがロボットだろうが全てを支配下に置ける。


そう、闇を統べる者。まさに魔王だ。





イームスに帰ったロイドたちはギリギリ間に合った夏祭りに参加していた。


「ミユキちゃん、ジロウちゃん、ミルちゃん!今日は絶対に優勝するよ!練習の成果を発揮しよう!」


「でもニニカ、私やっぱり歌は苦手で、、、」


「ニニカ!儂はバッチリじゃぞ!」


「ミユキちゃんはヘタウマだから大丈夫だよ!あとジロウちゃんは動き早すぎるからもっとリズムに合わせて!」


リーダーであるニニカがミユキとジロウに声をかける。


「ニニカちゃん!ミルは!?」


「ミルちゃんは完璧!可愛すぎる!」


ニニカはミルを問答無用で抱きしめる。


ニニカがジロウを連れ戻すときに言った通り、女性陣は4人でダンス大会に出場していた。


これこそが元々のニニカの目的。そして4人は見事に4位入賞という結果を残した。


優勝はできなかったがステージ上の彼女たちは笑顔だった。

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