第4話 新たな能力

 どうやって寄ってる女を遠ざけるか悩む日が続いていた時、ふとスマホを見ると見たことないアイコンのアプリがインストールされていた。自分ではインストールした覚えがないアプリを消そうと操作するがなぜか消せない。設定の方に行って動作出来るか確認するが探してもそんなアプリは無くて試しにホーム画面にあるアプリを開いてみた。


「...。なんだこれ」


 いざ、アプリ開いてみると同じ学年の全員の相関図が出てきた。バイトをしている人なんかはそのバイト先の人との関係図も書き出されている。その中には両片思いや片思い、恋人関係など事細かく書いてあり、肝心の杏里紗の所には、女子からの嫉妬心や男子から好意など使えそうな情報も中にはあって肝心の俺に対する関係は幼馴染一択で、この訳の分からないアプリだが、消せないならなにか策を講じなければいけない。


 得体の知れないアプリ故に警戒はするが、実際に両片思いの奴に声を掛けて話を聞いてみるとアプリに書いてある事は正しかった。だが、友達にそのアプリの画面を見せてもホーム画面見せて何がしたいんだという。だが、もう一度確認すると俺はアプリを開いたままでおかしな話だと思った。


「なぁ。杏里紗このアプリ知ってるか?」


 友達にも見えない謎のアプリを一人見ていて罪悪感がないわけではない...でも、


「え?どれ?」


 訳の分からないアプリだからホームにそのアプリだけを表示するようにしている筈なのに杏里紗はそこにはなにもないという...という事は、このアプリはどういうわけか俺にしか見えないアプリという事が証明された。


「あー。そうか...そうだよな...うん。ありがとうな」

「うん...。どういたしまして?」


 不思議そうな顔をする可愛いやつに顔が緩みそうになるけど、そんなダサい事は出来ないと顔に力を入れ必死に無表情を装い返事する。そして、俺にか見えないアプリに心の中でほくそ笑んだ。


ーーーこのアプリを使えば、杏里紗に向く好意も悪意もすべて見えるなら俺がそれをつぶせばいい


 手始めに杏里紗に好意を抱く男の前でわざと話しかけたり、話掛けようとしたところを妨害し接点を持たせない様にし心を折った。悪意を持つ女子にはその女の事が好きな男にデマを流し追いかけまわさせ杏里紗に近づく余裕がない程に疲弊させた。


ーーー杏里紗が考えるのは俺だけでいい。ほかのやつのことを考えるなら俺だけを考える様にしてやる


 そんな陰の努力を知ってか知らずか杏里紗が俺に向ける感情は”鬱陶しい幼馴染”となっていた。言われてみれば最近は聞こえる声も表情も心底嫌そうな感じだとは気が付いていたが、本当にそう思われているとは思わなかった。

 地元の大学に進学するのだと思い準備を進める中聞いたこのない大学名が聞こえ、ネットで調べると東京にあるいろんな学部がある大学だった。ただ、地元の大学に行かない理由が分からなかったが、


「そういえば、聡君はどこの大学に行くとか決めた?」

「...いや~...まだっスね」

「もし、東京の大学に行くならルームシェアとかしない?」

「ルームシェアっすか?」

「そう!うちの子が東京で一人暮らしするって聞かなくて...聡君なら安心だし一緒に住んでくれたら防犯的にも嬉しいなぁって」

「...俺男ですよ?いいですか?」

「聡君は信用しているからいいのよ~。むしろ、杏里紗の事とよろしくね」


 どうやって東京に行ったら接点を持つか考えていたが、まさか杏里紗の母親から持ちかけられるとは思わなかった。ただ、母親公認ならもう東京の大学に行かないという選択肢はない。どうせ行くなら同じ所に進学したいが、さすがに将来の事を考え学部はちゃんと選ぶ。もし、それで被らなくても一緒に住みなら今よりもっと違う一面が見るし一石二鳥の展開で内心ウキウキしてしまうのに当の彼女は...


「お母さんから変な事言われた?」

「変な事って...。別に俺が行く大学聞かれただけだよ」

「...なんて言ったの?」

「まだ決めてないって言った」

「そうなの?」

「あぁ、大体の学部は決まってるけど、大学はまだ未定」


 俺がそういうと心底安心したように胸をなでおろす。少し気に食わないが反応を見る限り直前まで隠しておいた方がいいと思い杏里紗の母親に東京に一緒にいくかも知れない話は引っ越す時まで内緒にして欲しいとお願いした。理由は驚かせたいからと言ったら快く頷いてくれて、俺の両親と話を進め東京の住居を探してくれた。


「ねぇ、東京って物価高いよね?」

「あー?だろうな」

「私のお母さんが進めてくるところ部屋広いし、防犯設備は整ってるからいいんだけど家賃がバカ高いの...。家賃払えないって言ってるのに...」

「(そりゃそうだろうな。俺が一緒に住むし)...まぁ、心配なんだろ」


 なにも知らない杏里紗からしたら納得いかないのかも知れないが、両親も防犯設備がしっかりとした所に住んで欲しいと思っていて二人で割ればそこまで高い家賃にはならないし仕送りもどちらの両親もすると言っていたからバイトすればそこそこ生活出来る所を両両親と話し合って決めている。知らないのは杏里紗だけだった。

 そのまま大学進学の時になり、俺と杏里紗は同じ大学の学部違いで進学し、両親が望んだ様にルームシェアになったが知らされた杏里紗は心底嫌そうにしていてまた二人の距離は開いてしまった。


 そして始まった生活では、食事も部屋も別。杏里紗はほとんど自室から出てくることはなく大学でも学部が違う故に話す機会もない生活が1年、2年と続いた、ある日バイトから帰宅すると珍しく杏里紗がリビングでテレビを見ていた。


「ただいま。ん?ニュース?」

「そう。最近、不法侵入とかストーカーとか多いじゃん?それって異能力なんだって」

「異能力?」

「そうそう。なんか相手の場所がわかるんだって」

「へぇー」

「自分が標的になる可能性がないからって!やばいんだよ?恋拗らせると能力使えるようになってストーカーになるんだって、怖くない?」

「怖いなぁ〜。あ〜怖い怖い(棒)」

「うわぁー、棒読み」


 相手の居場所がわかるか...俺は考えていることが分かるからニュースでやってるやつとは能力が違う事になる。ただし、”異能力”という名前がついているのを初めて知った。恋を拗らせると使える確かに俺もその一人だしあっているとは思うが捕まった奴のような使い方はしない。相手にいかに能力だと気づかせず親密になるかが鍵だと俺は思う...悟らせてなるものか


”最近料理の腕も上がったと思うし今まで鬱陶しいと思ってたけど今の生活楽しいし感謝も込めて作ったけど食べてくれるかな?”


「ご飯食べてきた?」

「まだだけど」

「多く作り過ぎちゃって......食べる?」

「料理に自信ないから手料理は振る舞わないって言ってたのは誰だっけなぁ〜」

「今日は自信作なの!」


 内心不安なのは聞こえるから分かるが、今まで素っ気なくされていた分少しの意地悪は許してほしいが冗談と分かっていたようで少し拗ねた態度を取って対抗して来ただけだった


「まだ練習中だから美味しくなかったら残してね」

「バイト終わって腹減ってるから。それに、帰って来てご飯が出来てるのは嬉しいな」


 帰って来たばかりで手洗いうがいや荷物を部屋において来たり準備していると杏里紗が配膳を済ませ待って居た


「お待たせ。出来たよ」

「おぉ、自信ないとか言うからどれだけ酷いのが出てくるのかと思えば美味しそうじゃん」

「本当!?やっった!」


 まだ不安が拭えないようで俺が食べるまでじっとこちらを見ているが、心配なんてする必要はない。だって、手料理を食べられるだけでご褒美なのだから。でもそんな事を知らない杏里紗からしたら不安で仕方かないのかもしれない


「自信ないとか疑いたくなるくらい美味しいよ」

「やった!」

「それより、もうすぐ大学も卒業だろ?就職どうするか決めたか?」

「アパレル系に行こうと思ってたんだけど...こんなご時世で接客行くの怖いからどうしようかなって」

「異能力か...。でも、あれって独身女性しか被害者いないよな〜」

「確かに!じゃあ、相手探さなきゃかー」


 一口食べて感想を言うと安心したように笑い、その可愛い顔を綻ばせた。俺は照れた顔を隠す為話題を料理から就職先に変えたが、話は就職を通り超して結婚の話にまで派生し杏里紗の相手を探す話になった。一緒に暮らしている俺がいるのに他の男に目を向けるなんて許せなくて自分を指さしたが...


「いや、流石に身近過ぎない?」


どこか恥ずかしそうにそしてどこか気まずそうに言う彼女に


「何言ってるんだよ。こうして、何年もルームシェアしてるし性格だって小さい頃から知ってるからなんも問題ないだろ」

「いや〜、そうじゃなくて恋愛とかそういう風に見れないっていうか...」


ーーー俺は昔からそういう対象で見てる


「気恥ずかしいそれともどう接したらいいかわからないか?」


 図星をつかれた彼女は驚き目を見開く。当然だろうけど、俺には彼女の考えている事が分かるから当たり前なのだけど


「なんでわかるの?!」

「そりゃわかるだろ。お前顔に出やすいし(声も聞こえるし)」

「え...マジ」

「そ、マジ」


 純粋な彼女は本当に信じ驚き声を上げた。しかし、心の中で今の生活をつづけたまま彼氏を作り現状を変えたくないなどと甘えた考えをする杏里紗に俺以外の男を選ぶ彼女など正直見たくもない。それに、俺自身が耐えられない。


「わかった。こうしよう!」

「え.....やな予感しかしないんだけど..」

「卒業まで後、半年ある。だから、3ヶ月俺とお試しでいいから付き合って欲しい。それでも、気持ちが変わらなけれなければ俺はこの家を出て行く」


ーーーもちろん。誰にも渡す気はないが、少しは焦らせないとこいつの考えは変わりそうにないから仕方がないだろ


「出てくの?!」

「当たり前だろ。これから彼氏探すやつが他の男と同棲してるなんてアウトだろ」


”言われてみればそうかもしれない。”


 俺が言ったことで初めて気が付いたようで頭を悩ませていた。流石に今すぐに決めろなんて言ったら断られるのが関の山だろう。


「どうする?」


”この関係は心地いいから崩したくないけど...確かに相手を探すとなれば今のままというわけにはいかないし...。かといって聡と付き合うのは...”


ーーーいい感じに悩んでるな。即答されないのは分かってたから問題はない


「流石に今すぐに決めろとは言わねぇよ。あまり長くなると考えられないだろから二週間でどうだ?」

「二週間...」

「二週間後に答え聞くからその時に答えを言ってくれ」


 これは杏里紗が悩める時間でもあり、俺が待てる最大の時間でもある。もし、この期間内に彼女が決められなければ俺はそこまでだったという事...ただでは引くつもりはない。ありとあらゆるすべてを使い2週間足掻ききってやる...

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