初採取へ
「ある日〜森の中〜熊さんに〜出会った〜♪」
あれから僕は朝食を食べ終わった後、結界の外の森へと薬草採取にやってきたわけなんだけど…
結果から言えば神眼のお陰か木の実やら薬草やらあっという間に素材が大量に集まった訳でして…
そして今、目の前には身の丈3メートルはあろうかという燃え盛るような赤毛の熊さんと対峙している所なのです。
「まぁ、出会ったと言うより探してたんだけどね」
回復薬を錬成するのに必要な材料や手順を僕の中のスキルが教えてくれるんだけど、その中に増血薬なるものを見つけまして必要な素材に熊の胆嚢とある訳ですよ。
この広い森の中を闇雲に探すのは面倒なので
ソナーをイメージして周囲を探知する魔法をイメージして放つ。そして魔物に当たり返ってきたソナーが魔物の情報を持ってくる。そんな仕組みなんだけど沢山の魔物に当たり返ってきた情報に頭が混乱するかと思いきやこの身体には要らぬ心配だったようだ。
「対峙したらもっとドキドキするかと思ったけど意外と冷静だなぁ」
前世だったら心臓が止まるかと思うくらいビビっていたと思うけどこの異世界仕様の身体のお陰か至って普通である。
「おい坊主、力はあるのに動きは無駄が多いな。さては実戦経験かないな?なーんて言われないためにも実戦はしておかないとね」
腰につけた鞘から剣を引き抜く。魔法は盗賊退治の時一度試したので今回は剣術という訳だ。
「さてやってみますか。と、と、その前に鑑定!」
レッドベアー Bランク
赤い毛皮は防具や装飾に人気
素材として爪、牙、胆嚢
肉は筋張って美味しくない
「うーん?Bランクと言われてもピンとこないけど、まいっか」
右手に剣を持ち2、3度回しながら感触を確かめて一歩踏み出すとレッドベアーが威嚇のために前脚を持ち上げて立ち上がる。次の瞬間、2歩目を踏み出したリトの体は15メートルはあったレッドベアーとの距離を飛躍して一瞬で詰める。
「隙だらけですよ」
「グボァ?」
レッドベアーが威嚇の声を上げるよりも早くリトの剣が喉を貫くと胸を蹴ってすぐさま元の位置に離脱する。
レッドベアーからすれば何が起きたかわからないだろう。それもそのはず、側から見れば青銀の光が一瞬揺らめいたようにしか見えないのだから。
ズシィーーン
何も出来ずに後ろに倒れるレッドベアー
普通のB級と呼ばれる冒険者が5人がかりでも苦戦する相手である。その赤い毛皮は剣を弾きその鋭利な爪は鎧をも引き裂く。
体の大きさの割に俊敏な動き。
しかしそんな事はリトは知らない。
「あれ?終わり?」
剣に付着した血糊を払い鞘に戻す。
「毛皮が人気みたいだから斬らずに急所を突いてみたけど…とりあえず言っとく?」
ふぅ〜と一息ついて…
「またつまらぬ物を斬ってしまった」
お約束を1人呟いて満足するリト。
またと言っといて初めての魔物討伐である。それに…リトは気付かない。木の陰からそっと見守るエミリーの存在を。
「ううっ、これを解体しないといけないけど…解体したくない」
もちろんグロいっていうのもあるんだけど正直面倒くさい。そこで一つ試してみることにする。
「収納」
とりあえずレッドベアーを収納する。
「次に解体!…おおっ、これは便利。部位ごとに解体されて収納されてるのがわかる!」
そしたら土魔法で穴を掘り要らない部位を目を背けて穴に落として土を元に戻して完了である。
「血抜きの手間も要らないし、解体中の血の匂いで魔物が寄ってくるなんて事もなくて使い勝手がいいし、魔石も簡単に取り出せてとっても楽ちん」
材料が揃いようやく回復薬作りが出来ると思うと思わず鼻歌が出てしまう。
「ふふ、ふ〜ん♪さぁてそろそろ戻ろうかな」
きた道を戻ろうと振り返る…
「うわぁ!エミリー…いつからそこに?」
「つい先ほどです。お昼が近いのでお呼びに参りました」
「え、もうそんなに経つの?楽しくて時間を忘れちゃったみたい。じゃあ一緒に戻ろ?」
高ランクの魔物が多数蔓延る深魔の森と呼ばれている場所を楽しそうに会話しながら並んで歩く見た目は美少女のリトと大人の色気を醸し出す美人なエミリー。他の人が見たら信じられない光景に見えるだろう。が、こんな危険な森の最奥まで辿り着けるような強者はこの世界では皆無である。
「しかしリト様、見事なひと突きでした。決め台詞も素敵かと…」
「うへっ!」
だいぶ前から見られていた事に恥ずかしさを覚えるリト。
(誰も居ないと思って言ったのに…)
「ですので、その見事な突きをリト様のご子息性剣エクスカウパーで私の急所にひと突き…いえ!出尽くして枯れるま「先に行くよ!」」
僕に寂しい思いをさせない為にわざとふざけてるのはわかるけど下ネタが酷すぎる…
「ハァ〜」
ため息を一つ吐いて先に屋敷に戻るリトであった。
でもね屋敷に戻った後、初討伐で手に入れた真っ赤に燃えるような魔石を綺麗なネックレスに錬成してエミリーにプレゼントした心優しいリトでもあった。
(エミリーは知らないだろうけどクリスマスだからね。日頃の気遣いに感謝を込めてメリークリスマス)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます