第17

 カーテン越しの柔らかな陽の光と優しい鳥の音色で目を覚ます。肌触りの良い掛け布団の中で一つ伸びをして決まり文句を呟いてみる。


「知らない天井…」


 いやいや、昨夜寝る前にしっかりと目にしたベットの天蓋ですやん。心の中で1人ノリツッコミした所で上体を起こす。


「ふぁ〜よく寝た」


 さぁ、起きようと意思を固めた所で扉のノックの音と共にリトの寝起きを図ったようなタイミングでメイドが入室してくる。


「おはよう御座います。ご主人様」


「おはよう、え〜と…」


「エミリー様より部屋当番を仰せつかったメリルに御座います」


 綺麗なカーテシーと共に自己紹介を披露する。


「あ、うん。おはようメリル。よろしくね」


 ベットに腰掛けてから立ち上がりもう一度伸びをする。


「まずはお顔を」


 そう言って洗面台に促されて顔を洗う。そしてこれまた絶妙なタイミングでタオルが差し出される。


「はぁー完全に目が覚めたよ、タオルありがとう」


「それではお髪を整えさせて頂きますのでこちらへ」


 次は鏡台の前に座らせられて青銀の髪を櫛で丁寧に梳かれたのち綺麗な細工の入った金のリングで髪を後ろでに一つにまとめられる。


「今日のご予定はお決まりでしょうか?」


「うーん、特に決めてないけど午前中は森の中を見て回ろうかな?そう言えば怪我をした人達は大丈夫そう?」


「はい、まだ意識は戻りませんが取り敢えずは問題なさそうです。奥方様の方もだいぶ落ち着かれたようで一緒の部屋で看病をなさっております」


「そう?なら午後にでも顔を出そうかな?」


 などの会話をしながらも当たり前のように着せ替えられるリト。


 いやね、一般市民として育ってきたからこの待遇にこれでも内心オロオロしてるんです。着替えくらい1人で出来るよ!って言いたくなる気持ちちょっとわかる。でも流されちゃう小心者…ハハッ…


「支度が整いましたので食堂へは扉の外の別のメイドがご案内致します」


「う、うん」


 当たり前のように引き継がれて食堂に。給仕とかされた事ないし壁際にメイドが控えられて食べる朝食はなんか落ち着かない。


「リト様今日は森の散策ですか?」


 聞き慣れた声に顔をあげればエミリーがいつの間にか近くに立っていた。

ふふ、こんなエミリーでもいつの間にか安心できる存在に感じてるなんてちょっと面白い。


「うん、薬草採取からの魔法薬への錬金。これは定番だから是非ともやらないと!エミリーも行くよね?」


「ぐぬぬぬ…」


「エミリー?」


「も、申し訳ありませんが今日はメイド達の教育と他にもやる事がございますのでご一緒出来ません。なのでお一人でお願いします」


(うわーん…リト様と2人きり森の中でキャッキャ、ウフフして疲れたリト様を膝枕で癒して見つめ合う2人…そして火がついた2人は…あぁ、獣のように前から背後から…くんずほぐれず組み敷かれて…ですのに!夜中にアウリーゼ様に夢の中で叩き起こされてくれぐれもリトを甘やかさないように!とネチネチ5時間も言われてしまっては…今日できるはずだったリト様とのお腹の子はいつ会えるのでしょう…)


「できねぇよ!!」


「え?」


「心の声ダダ漏れだし!6歳で大人の女性組み伏せられる訳ないから!そもそもこの身体まだ精◯してねぇから…って、何言わせちゃってんの!?」


そうして1人で森に行く決意を決めた僕であった。



☆☆☆


私は風の精霊のメリル。

幾重のライバルを押し除けて見事にリト様のメイドに選ばれた1人です。

ひゃっほーい!

ゴ、ゴホン…

私達選ばれた50名は、それぞれ仕事を与えられる事になったのですが…

な、なんですと!

お風呂当番ですと!

リト様のご子息を拝めるのですか!

くぅ〜メイド服など脱ぎ捨てて私の胸で直に洗って差し上げたい!

まぁツルペタですけども何か?


ふぅ〜

ご存知の通りお風呂当番のクジには外れてしまいました。下世話な妄想がいけなかったのかしら?

これでもエミリー様よりはマシだと思うのですが…


でもです!ヌヒヒヒ…

奇跡です!お部屋当番に当たりました!

リト様の髪を独り占めです。

後ろからクンカクンカしてしまいます。でも、真のご褒美はこれではありません。

それは…

リト様を送り出した後の部屋…

ベットメイク前にリト様の温もりと香りが残る布団に包まれるこのひと時なのです!


あぁ〜幸せです。

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